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周年事業周年小ネタ書評(2)

グルメ漫画『美味しんぼ』の始まりは、周年事業!?

  • 文=平野優介
  • 2018年05月21日
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グルメ漫画『美味しんぼ』の始まりは、周年事業!?

グルメ漫画、と聞くと皆さんはどのような漫画を思い出すだろうか。現在でこそ、グルメをテーマにした漫画は多い。例えば、ドラマ化され人気を博している『孤独のグルメ』(扶桑社)は記憶に新しいだろう。

グルメ漫画の中にあって、金字塔の1つと言えるのが『美味しんぼ』(小学館)だ。1983年に連載を開始し、父と子の対立を機軸に「究極のメニュー」vs「至高のメニュー」の熾烈なバトルが印象的な本作。

この『美味しんぼ』、実は物語の鍵となる「究極のメニュー」づくりが東西新聞社の100周年事業ということをご存じだろうか。

そのきっかけはこうだ。全員で昼食をという業務命令を受け、文化部の記者全員がある料亭に集められた。発表されたのは、東西新聞社100周年事業に関する社主・大原大蔵からの「特別命令」だった。この命に際し、記者たちはある課題を与えられる。豆腐と水の産地を当てるのだ。それぞれ、水道水、料亭にある井戸水、丹沢の山奥からくんできた鉱泉水。そしてスーパーの豆腐、上野の有名な豆腐屋の豆腐、京都の有名な豆腐だ。

分かるわけがない――。

社員たちの多くがさじを投げ、あきらめていたところに正解者が2人だけ現れる。そう、ご存じ、“グータラ社員”の山岡士郎と文化部新人の栗田ゆう子だ。そして、物語は、士郎の父・海原雄山との邂逅から本格的に動き出す。士郎vs雄山、「究極」vs「至高」をめぐる熾烈な料理対決が繰り広げられる――。

*

『美味しんぼ』では、士郎とゆう子が究極のメニューづくりの中でさまざまな背景を持つ人々を巻き込んでいくことになる。

企業の場合に置き換えてみても、周年事業は多くの社員、ステークホルダーを巻き込んでいく。周年事業における担当者の動きは、おおよそ次のようになる。会長・社長といった企業上層部とのコミュニケーションや企業内外ステークホルダーとの折衝、周年事業コンセプトの社内周知、複数部署への原稿依頼・資料提供の依頼、取材・撮影日程の調整、デザイン打ち合わせ、記事内容のチェックなど広範な動きが必要になる。

これらを一手に引き受けられ、かつ、「人を動かす」ことができる適切な担当者を選ぶことはとても悩ましい。

作品中、東西新聞社がある町。第1巻の冒頭に駅名が出てくる
作品中、東西新聞社がある町。第1巻の冒頭に駅名が出てくる

『美味しんぼ』では、グータラ社員の士郎と新人のゆう子という、およそ100年の重みを担うにはほど遠い人選が行われた。だが、それは表面的なもので、本質ではこれ以上ない人選であった。東西新聞社文化部部長・谷村秀夫は、この意味で策士だった。士郎が、希代の美食家・陶芸家であり、政財界の大物が加入する美食倶楽部の主宰、海原雄山の息子であることを知っていたのだ。そして、ゆう子の文化部の色に染まっていない素直さも物語を動かしていく。

周囲を巻き込み、関わった人々の心に火をつけることのできる人材は、案外足元にいるのかもしれない。その意味では、最適な人材を見いだすには、日常のコミュニケーションでの“気づき”が重要になるだろう。些細な会話の中で社員が力を発揮する可能性のある方向性や志向性、得意、不得意を把握しておく。日々のその心がけが、周年事業成功の1つの突破口になるはずだ。

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  • 2018年05月21日
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