周年事業セミナーレポート「周年事業セミナー」(1)
「周年事業が会社を変える! 先駆者に学ぶ100年企業への道」を開催
- 文=松崎祥悟
- 2017年10月20日
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2017年10月13日(金)、日経BP社、日経BPコンサルティングの2社主催による周年事業に関するセミナー「周年事業が会社を変える! 先駆者に学ぶ100年企業への道」が、TKPガーデンシティPREMIUM神保町で開催されました。当日は約300人が来場し、西武ホールディングス後藤高志代表取締役社長による基調講演や、周年事業の先駆的企業の担当者が語る事例紹介などに熱心に耳を傾けていました。
今回はこのセミナーの様子を、周年事業の担当者に知っていただきたいノウハウとともにダイジェストで紹介します。
「朝の来ない夜はない」西武グループ再生の軌跡
代表取締役社長
後藤高志氏
「社員を鼓舞するために言い続けた『朝の来ない夜はない』という言葉は、マスコミとのコミュニケーションに大いに役立ちました。会見のたびに記者が『太陽はいまどの辺にいるのか?』と質問してくるので、西武グループの再生状況について、ビジュアルを想像できるたとえで世間に発信することができました」
はじめに西武ホールディングスの後藤高志氏が登壇し、基調講演「西武グループ再生の核心 ~何を改革し、乗り越えたのか~」について話しました。
西武ホールディングスでは、2016年に10周年史『10th Anniversary Book』を発行しました。今回の基調講演では、西武グループが2004年に起こした事件・問題からいかに再生できたのかを、当時の経営改革委員会のメンバーで、西武グループの再建を託された後藤社長自ら振り返りました。
「西武グループの再編ならびに西武ホールディングス設立から10周年を迎える節目として周年史を制作しました。過去の負の歴史も後世に残すため、第三者の視点として外部のライターに、取材・執筆してもらい、記事を掲載しました。本来はマイナスな事柄になるところですが、正確にあらわしたことが世間からは好意的に受け取られ、メディアにも取り上げていただきました」
周年事業という記念すべきタイミングでは、自社にとってマイナスな出来事は隠したくなるものです。ですが、しっかりと公開すれば信頼向上につながるといえます。
周年を機に「社会」に総合リースの仕組みを知ってもらう
この日のセミナーでは基調講演以外にも、企業の周年事業の担当者4人も登壇、周年事業の取り組み事例について講演しました。
事例講演の1社目として登壇したのが、三井住友ファイナンス&リースの五十嵐圭一氏です。「社内、社外、社会に向けて10周年で取り組んだ絵本によるブランディング」と題し、日経BP社カスタム企画部部長・中須譲二との掛け合いで、その取り組みを紹介しました。
企画部広報IR推進室業務推進役
五十嵐圭一氏
「社内外のインタビュー対象者には、楽しんで参加してもらえました」
2017年、合併10周年を迎える三井住友ファイナンス&リースでは、周年事業を「社内」「社外」だけでなく、「社会」へも打ち出すべく、さまざまな取り組みを実施しています。その1つが「会社図鑑シリーズ」の最新刊『総合リース会社図鑑』の発行です。
「『総合リース会社図鑑』を社員に配布したところ、家族に自分の仕事について知ってもらうのに役立っていると、喜んでもらえています。また、『会社図鑑』は書店にて販売もするのですが、そのことが“引き”となるようで、制作時には社員の皆に率先して協力いただけました」
周年事業においては、これまでの既存顧客以外にも、新たなファン開拓に向け「社会」という枠組みまで広げた施策の検討も必要になってきます。
多角的な情報発信を可能とするWebサイトへリニューアル
広報部課長
太田周作氏
「九州では地震や台風による被害もありましたが、ぜひ観光にいらして、復興のお手伝いをしていただければと思います」
次に登壇したのが、九州旅客鉄道の太田周作氏です。日経BP社企画マーケティング部担当部長・恵聖児からの質問を受ける形で、「~素早く・分かりやすく伝える~『多様化するお客様に誠実に応える企業サイトとは』」を説明しました。
JR九州は30周年、「上場」という機会に合わせてWebサイトのリニューアルを行いました。それまで“典型的な鉄道会社”(太田氏)のWebサイトを、上場会社としてIR情報の掲載や、グループ会社の情報を追加する必要などが出てきました。
「最終的には『企業情報やIR情報など』『九州内の生活路線利用者用』『九州内外の観光利用者用』という3つに分類した入り口を用意。お客様ごとに最適な入り口を選択できる形を採用しました。また、日経BPグループで、その後の運用を考えたツールと、そのマニュアルを用意してくれたので、今は自分たちで容易に新規ページの作成や、更新を行えています」
周年事業でWebサイトをリニューアルするケースもあります。そのときには一回限りのものとせず、継続して更新することも考えなければなりません。
企業の「姿勢・想い」を明文化しながらリブランディングを実現
経営企画室コーポレートブランド担当マネジャー
中島みどり氏
「日本国内だけでなく、グローバルにも早くから進出。米国では良き企業市民として、ウィスコンシン州にて“経営の現地化”をし、共存共栄を図っています」
事例講演の3社目には2017年に100周年を迎えたキッコーマンの中島みどり氏を迎え、「大切な人とつむぐ、100年の歴史の作り方」というタイトルのもと、日経BPコンサルティングブランドコミュニケーション部長・吉田健一と対談しました。
吉田部長から「周年事業は打ち上げ花火としてそのとき限りで終わらせるのではなく、過去を振り返り、未来を考え“リブランディング”するタイミングだ」という話がありました。
それを実践し、100年という長い間、世間に親しみを持たれ、愛用される企業として存続してきたのがキッコーマンです。キッコーマンでは企業の想いを定義すること、明文化することを大切にしています。若手社員を主体とし、企業のステートメントとして形にし、代々、企業が大切にしなければならない根っこを継承してきました。
「100周年記念事業として、社員に向けた『エッセー、作文コンテスト』や『動画コンテスト』を実施しました。社員の3~4人に1人の割合で参加してもらえました。今回の作品を通して、あらためてキッコーマンの根っこについて考えるきっかけになったのではないかと考えています。周年事業はそれで終わりではなく、長く歴史を紡いでいくためのスタートとして捉えています」
周年のタイミングは企業の価値を見つめ直し、リブランディングするきっかけとなります。
遠い過去を見る人は、はるかな先を見ることができる
企業文化部長
田中俊宏氏
「周年史のコンテンツは読まれることを心がけ、サイドストーリーやトピックスを収集しています。今はデジタル化などにより社内だけでは解決できないことが出てきています。そこはさまざまなネットワークを持つ外部に頼り対応しています」
事例講演の最後に登壇したのが、1872年創業で5年後に150周年を迎える資生堂の田中俊宏氏。講演のインタビュアーには日経BPコンサルティングカスタムメディア本部第二編集部長の雨宮健人が立ち、「資生堂企業文化の継承~150周年に向けて~」というテーマで話し合われました。
まず田中氏が説明したのは、所属する企業文化部について。1990年に発足し、資生堂が培ってきた企業文化を蓄積する一方、外部より新しい価値を社内に取り込むことも機能とする部署です。過去を振り返ることで、未来を見通すという考えがその根底にあります。そのような資生堂が生き残ってきた背景には、伝統を守る「資生堂スタイル」と革新性を求める「反資生堂スタイル」のぶつかり合いが常に起きてきたことを理由の1つとして挙げています。
「今でいうダイバーシティが根付いていました。広告でも資生堂らしくないものに挑戦し続け、通常考えつく方向とは反対へ向かう動きを誘発するのを良しとする風土があります。それを醸成するために25年、30年のタームで新しい社史を発行してきました。すでに150周年に向けて動き出していますが、『変化』ではなく、『進化』するためのきっかけにする目的を持っています」
これからより長く企業を持続していくためにも、周年事業を上手に活用することが得策です。過去を振り返ることで企業文化を確認し、これからの指針とできるようになるのです。そのためには、周年事業を戦略的な事業と捉えなければなりません。
周年事業は「未来のために」
日経BP社 カスタム企画部担当部長 大塚葉(左)
上述の講演だけでなく、セミナーでは、「企業の未来を設計する戦略的周年事業とは」と題し、日経BP総研所長の望月洋介と、日経BP社カスタム企画部担当部長の大塚葉から、日経BPグループによる周年事業に関する制作事例の紹介や、どのように周年事業を進めればよいかという知見が披露されました。
セミナー終了後には懇親会も実施。日経BPグループの周年事業ソリューションの展示やミニセッションも交えながら、参加者の交流の場として活用されました。
会場には、パソコン上で簡単な選択肢を選び、周年事業の活用度を見える化する「周年事業施策診断」も設置され、当日の各講演と併せ、それぞれの企業が新しい気づきや課題感を得た有意義なイベントとなりました。
- 2017年10月20日
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