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周年事業企業ブランディングのための社史・周年史の教科書(1)

こんな社史・周年史は読まれない!?

  • 文=大塚 葉(日経BP社カスタム事業本部)
  • 2017年07月28日
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こんな社史・周年史は読まれない!?

「社史・周年史なんて、つくるのが面倒だ」「つくっても、ほとんど読んでもらえない」——。そう思っている人も、多いのではないでしょうか。しかし社史や周年史は、ときには会社を大きく変貌させることもできるのです。この連載では、企業ブランディングに役立つ社史・周年史のつくりかたを紹介していきます。

最初にお話ししたいのは、「社史・周年史は、あなたの会社を劇的に変えることができる」ということです。「そんなことができるのだろうか?」と思われたかもしれません。そこでまずは、社史・周年史に関する担当者の悩みと課題を整理してみましょう。

1)「社史・周年史の担当に任命されてしまったが、どこから手をつけていいか分からない」→つくる前の悩み
2)「社史・周年史をつくってみたものの、結局誰にも読まれていない」→つくった後の悩み

これらの課題の解決方法は、実はたった1つなのです。それは企業の、社史・周年史に対する考え方を変えることです。

社史・周年史のトレンドが変わってきた

社史・周年史の制作
単なる記念に終わらない戦略的な社史・周年史とは?

日経BPコンサルティングの制作する社史・周年史は単なる企業の歴史紹介ではありません。貴社の未来を描くための戦略的なご提案をします。

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これは、創業70周年を迎えるある企業の話です。

「前回つくった40周年史が、まったく読まれていなくて。今回70周年史をつくることになったのですが、どうしたらいいか悩んでいます」

 前回の周年史を見ると、かっちりした箱に入っていて、中の本は大判で布張り。重たくて持ち上げるのもやっとです。箱から出して中を開くと、並んでいるのは文字ばかり。冒頭から相談役、会長、社長のメッセージが延々と続きます。

「ちなみにこれ、全部お読みになりましたか」と担当者に聞くと、「いいえ……。社内でも読んだ人はほとんどいないと思います」という答え。「実は、この社史が発行されたことさえ知らない社員がいたんです」

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。

こういった社史・周年史は、1980〜90年代に制作されたものに多い仕様です。特に戦後創業した企業にとっては、激動の時期を駆け抜けてきた歴史を忠実に記録に残し、保管することが第一目的でした。多くの人に読んでもらうことを想定していなかったので、ある意味「読みづらい」のはしかたないことだったのです。

しかしこの数年で、社史・周年史のトレンドが大きく変わってきました。例えば、次のような声が上がってきています。
「布張りでケース入りなど、つくりが立派な社史は取り出したり開いたりしづらく、読みにくい」
「企業の歴史や沿革の記載が中心で文字ばかりの周年史は、面白みがなく読む気がしない」
「創業者の話や経営者のメッセージが中心になっている周年史は、若い社員が読んでもピンとこず、興味を持てない」

 これからの社史・周年史はもっと多くの人に読まれるものにしたい、と考える企業が増えているのです。

 多くの人に読んでもらい、共感してもらえる社史・周年史をつくれば、社員のモチベーションが上がったり、取引先の信頼を獲得したり、商品やサービスの販促に役立ったりするはずです。社史・周年史は、企業の真の姿を描き出すもの。「その会社らしさ」を訴求できれば、社史・周年史は企業ブランディングに役立ち、企業を強くする戦略的ツールになるはずです。

 こうした社史・周年史をつくるには、今までとは違った観点が必要になります。企業の過去だけでなく、未来が見えるような社史・周年史が望まれています。これまでの常識をくつがえすようなコンテンツがあってもいいかもしれません。

社史・周年史制作は企業の経営戦略である

 社史・周年史に関する発想を変え、これまで「企業の歴史の記録」だった社史・周年史を、「企業の経営戦略」に生かすつくりにしていきましょう。そのためには、どうすればいいのでしょうか? 社史・周年史を戦略的につくるには、制作の目的と読者ターゲットをきちんと決めることが大事です。

 よく企業の経営者が「創業の頃の理念が、今の社員と共有できていないと思う」と口にします。「創業の精神を全社で共有したい」「社員のモチベーションを向上させたい」「社員教育に役立てたい」——。こんなときに、社史・周年史が役立ちます。企業の社員を主な読者と考え、「インナーブランディング」を発行の目的にするのです。

 一方、「会社の方針を取引先にきちんと伝えたい」「取引先に日頃の感謝の意を表したい」という場合は、ステークホルダーが読者になります。この場合の発行目的は、「アウターブランディング」です。

 さらに「自社のことをもっと知ってもらいたい」「採用活動に役立てたい」というように、読者が学生やビジネスパーソンになる場合もあります。この場合、発行の目的は「リクルーティング」といえます。もちろん、社史・周年史を読んだ消費者がその企業の商品・サービスを購入・利用するようになることを目指すことも可能です。

 企業の未来が見える社史・周年史をつくれば、企業のブランディング、リクルーティング、マーケティングに役立てることができる戦略的なツールになるのです。

 この連載では、社史・周年史の制作事例を交えながら、これからの時代の社史・周年史について考えていきます。次回は、企業のブランディングに生かす社史・周年史のつくりかたを紹介します。

プロフィール

大塚 葉

日経BP社 カスタム企画部 担当部長
雙葉高校、早稲田大学法学部卒。技術評論社でPC入門誌「パソコン倶楽部」、日本初の女性向けPC誌「パソコンスタイルブックforWomen」を編集長として創刊。日経BP社では「日経PCビギナーズ」編集長、発行人を務める。「日経ビジネス」「日経WOMAN」「日経ビジネスアソシエ」のWebサイトのプロデューサーとして、深澤真紀氏、白河桃子氏などのヒット連載を企画。初心者向けIT、働く女性、仕事術についての執筆・講演多数。著書に『やりたい仕事で豊かに暮らす法』(WAVE出版)、『ミリオネーゼのコミュニケーション術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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