データ連携ツール、導入済み/導入検討中は5割に迫る

― 日経BPコンサルティング調べ 「データ連携に関するアンケート調査」 ―

2021年9月1日

株式会社日経BPコンサルティング(東京都港区)は、「データ連携に関するアンケート調査」の結果をまとめた。本調査は、2014年から毎年実施しており第8回目。今回、データ連携ツールの導入率は22.5%だった。導入検討中まで含めると47.4%で過去最高となり、5割に迫る勢いである。

新規事業創出、社内業務の高効率化のために、デジタル技術で企業変革を促すDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進する動きが、ますます加速している。このDXを実現するためには、ビッグデータ、IoT(Internet of Things)、AI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といったデジタル技術の活用が欠かせなくなってきている。こうしたデジタル技術の利活用が進展するに伴い、企業内に分散しているデータやプロセスを相互に連携させて分析・活用したいというニーズが徐々に高まってきており、EAI(Enterprise Application Integration)をはじめとしたデータ連携ツールに注目が集まっている。

EAIとは、企業内の複数のシステムを連携させ、データやプロセスを統合させること、あるいは、そのためのミドルウエアの総称である。データベースや個別の業務アプリケーションがそれぞれ採用しているデータ形式を変換して、相互に受け渡しが行えるようにする役割を持つ。

データ連携ツールを活用すれば、連携ソフトを手作りでゼロから開発するのに比べて時間とコストを圧縮できるため、ニーズが高まっている。“DXを裏で支えるプラットフォーム”としてデータ連携ツールが不可欠になってきている。

そこで今回も従来と同様に、企業内の複数のデータやプロセスを統合させる製品の利用実態や導入計画とその選定のポイント、および期待度、満足度などについて、企業・団体の情報システム部門の構築・運用に携わる方々を主対象にして調査した。

導入済み/導入検討中は47.4%で過去最高に

今回の調査では、データ連携ツールの導入率は22.5%(前回24.9%)だった(図1)。過去7回実施した調査では、「導入済み」は16.5%(2014年)、20.4%(2015年)、21.3%(2016年)と3年連続で増加し、2017年は19.8%で1.5ポイント減となったが、2018年は22.7%、2019年は22.3%となり22%台で推移した。2020年は2ポイント以上増加し24.9%だった。2018年以降、20%台前半で推移している。

なお、「1年以内の導入を検討中」「3年以内の導入を検討中」「時期は未定だが導入を検討中」を合わせた導入検討中は24.9%だった。導入済みと導入検討中を合わせた「導入済み/導入検討中」は合計で47.4%となり、過去最高を記録した。データ連携ツールの導入意欲は確実に高まっている。

図1 EAIをはじめとしたデータ連携ツールの導入状況
 

※グラフの構成比(%)の合計が、四捨五入により100.0%とならない場合があります(以下同様)

図1 EAIをはじめとしたデータ連携ツールの導入状況 クリックで拡大

1000人以上では3分の1以上が導入済みで、検討中まで含めると6割超

企業規模別で見ると、企業規模が大きいほどデータ連携ツールの導入が進んでいる(図2)。この傾向は過去7回の調査と同様である。

従業員数1000人以上の大企業では、導入済みが35.6%(前回37.7%)で、導入検討中までを含めると62.1% (前回55.4%)で6割を超えた。大企業ほどデータが分散し、かつ、ビッグデータ、IoT、AI、RPAの進展に伴いデータ形式の種類とデータ量が増えていると推測されるため、データ連携ツールが従来以上に求められているとみてよいだろう。この傾向は従来以上に顕著である。

一方、300人以上1000人未満の中堅企業の導入済みは23.8%(前回26.5%)で、300人未満の中小企業の導入済みは6.7%(前回8.2%)だった。

図2 企業規模別のデータ連携ツール導入状況
図1 2030年までに実現される技術・サービス クリックで拡大

製造業で高い導入率、公共系は依然として導入進まず

業種別に見ると、製造業の導入が最も進んでいる(図3)。導入済みは、製造業のうちの原材料系が31.4%(前回38.6%)で最も高く、電気・機械系が30.4%(前回31.3%)と高かった。次いで流通業21.6%(前回23.1%)、建設・土木20.0%(前回20.0%)、サービス業・その他18.9%(前回23.4%)、金融・保険・不動産6.7%(前回20.0%)となっている。

導入済み/導入検討中で見た場合でも、製造業のうちの原材料系が74.5%(前回65.8%)で最も高い。製造業での導入が進んでいるという傾向は昨年までと変わらない。むしろ、導入意欲がますます高まっている。

導入率が最も低いのは昨年と同様に公共系(官公庁・自治体・教育機関・病院等)で、導入済みが4.5%(前回3.0%)に留まる。ただし、「時期は未定だが導入を検討中」が36.4%で全産業の中で最も高い比率であり、将来的な導入可能性はある。

図3 業種別のデータ連携ツール導入状況
図3 業種別のデータ連携ツール導入状況 クリックで拡大

重視したのは「安定的に稼働すること」「接続先が多様(アダプタの種類の多さ)」

導入済み企業、導入検討中企業に対して、製品を選定する際の重視項目についても尋ねた。選択肢として、「総合的な満足度」のほか、12の具体的な項目を提示して複数選択してもらった(図4)。

その結果、導入済み企業が最も重視したのは「安定的に稼働すること」で46.4%(前回38.1%)だった。次いで、「接続先が多様(アダプタの種類の多さ)」が42.9%(前回46.0%)で、順位は入れ替わったが上位2項目は前回と同じ。3番目は「サポートの品質(対応が早い、適切な回答、技術情報が充実)」が29.8%で、前回の6番目から上昇した。前回3番目の「導入が容易(開発スキルや労力のハードルが低い、Webブラウザでも開発できるなど)」は25.0%で6番目だった。

一方、導入検討中企業が最も重視するのは「GUIが分かり易い。使用感が良い」で45.2%(前回47.2%)だった。他の項目よりも圧倒的に高い比率である。検討中企業が次に重視するのは、導入済み企業でトップに挙がった「安定的に稼働すること」で39.8%(前回59.6%)だった。

図4 EAIをはじめとしたデータ連携ツール選定の重視ポイント(複数選択式)
導入済み企業には「重視したポイント」、導入検討中企業には「重視するポイント」を尋ねた。導入済み企業の「重視したポイント」の比率が高い順に並べた。
図4 EAIをはじめとしたデータ連携ツール選定の重視ポイント(複数選択式)導入済み企業には「重視したポイント」、導入検討中企業には「重視するポイント」を尋ねた。導入済み企業の「重視したポイント」の比率が高い順に並べた。 クリックで拡大

「DataSpider Servista」が8年連続で総合満足度1位に

今回も、主要なデータ連携ツール(製品)について、導入前の期待度、導入後の満足度についても尋ねた。重視項目で取り上げた「総合的な満足度」と12の具体的な項目の計13項目ついて、各ツールの「導入済み」企業を対象にして、5段階で評価してもらい、100点満点でスコア化した。

その結果、総合満足度は8年連続でセゾン情報システムズの「DataSpider Servista」が最も高かった。また、データ連携ツールの導入済み企業のうち同製品を導入していると回答したのは36.9%で、全製品の中で最も高い比率だった。

■「データ連携に関するアンケート調査」調査概要
  • 調査名:

    データ連携に関するアンケート調査

  • 調査対象:

    大企業、中堅・中小企業、および公共系組織(官公庁・自治体・教育機関・病院等)で、社内(または所属組織)向けの情報システムの構築・運用に携わる方々(IT関連製品の選定・導入に関わる方々が中心)

  • 有効回答数:

    373件

  • 調査期間:

    2021年7月14日~7月29日

  • 調査方法:

    インターネット調査

  • 関連リンク:

    前回の結果(2020年9月2日 ニュースリリース)
    https://consult.nikkeibp.co.jp/info/news/2020/0902wb/

日経BPコンサルティング:日経BP全額出資の「調査・コンサルティング」「企画・編集」「制作」など、コンサルティング、コンテンツ関連のマーケティング・ソリューション提供企業。(2002年3月1日設立。資本金9000万円)

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