マイナンバー制度への対応が遅れ、2015年末に未完了の事態も
「マイナンバー実態調査2015」の全体報告書を5月に発行

2015年04月21日

株式会社日経BPコンサルティング(東京都港区)は、「企業・組織におけるマイナンバー対応に関する実態調査」を実施した。この調査の結果、マイナンバー制度への対応が遅れ、対応作業が2015年末に完了しない恐れがあることが明らかとなった。

調査は日経コンピュータと共同で、2015年3月下旬に実施。企業や公的機関における経営系部門や、情報システム部門、総務・人事・経理部門などマイナンバー対応の取り組みが想定される部門の所属者からの1058件の有効回答を集計した。調査結果の詳細は「マイナンバー実態調査2015」として、日経BPコンサルティングから5月18日に発行する。※報告書(有償)の抄録版(無償)のダウンロードはこちらから(2015年6月30日まで)。

マイナンバー制度は、2013年5月に制定された「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に基づき、2016年1月に個人番号の利用が開始される。この制度の開始に合わせて対応するには、企業等は2015年末までにシステムの整備を完了させ、チェックできる段取りが必要だ。こうした状況のもと、マイナンバー制度に関する周知・啓発活動が本格化した、2015年末まで残り9カ月の時点で、企業等の取り組み実態を調査したものである。

マイナンバー制度対応作業を「実施している」は17%にとどまる

マイナンバー制度への対応に向けた企業等の作業(準備作業を含む)は遅れている。対応作業の「実施状況」は、「実施している」(実施層)が16.8%、「実施していないが、予定はある」が21.2%で、これらを合計した「実施・実施予定層」は38.0%にとどまる(図1)。

これに「実施していないが、対応を要する法制度であれば今後対応するはずだ」(20.4%)まで加えた「実施・実施予定・実施想定層」は58.4%となり、ようやく過半数になる。一方、「実施していないし、予定もない」が8.4%あるのは、マイナンバー制度の趣旨が十分には浸透していないことを示している。

なお、「実施状況が分からない層」を除外して構成比を見ると、「実施層」は25.2%、「実施・実施予定層」は56.9%、「実施・実施予定・実施想定層」は87.4%である。企業等での2016年1月のマイナンバーの運用開始までの残り期間が限られ、対応作業には一定の工数や費用を要することを考えれば、対応の遅れが懸念される。

図1 マイナンバー制度への対応作業(準備作業を含む)の実施状況
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対応作業の実施は官公庁と金融が先行

マイナンバー制度対応作業の「実施層」の比率を業種別(7分類)に見ると、政府/官公庁/団体が28.2%と最も高く、金融業の25.4%がこれに続く。IT関連業の20.0%を含めた3業種が2割台である(図2)。

実施率が2割台の3業種は、従業員等のマイナンバーを収集・管理する通常業務のほかに、公共系業種では行政手続きを効率化すること、金融機関は顧客からマイナンバーを収集し管理すること、IT関連業では情報システム更改などを事業として行うこと、など特別な役割をもつ。このことが、実施率が高い背景にあると考えられる。

先行する3業種に対して、建設・不動産業(11.0%)、および「その他の業種(製造、流通、金融、IT、建設・不動産、官公庁系以外)」(13.0%)での実施率は、1割台前半と低い。流通業(14.9%)と製造業(16.6%)での実施率も1割台半ばで高いとは言えない。

図2 マイナンバー制度への対応作業(準備作業を含む)の業種別の実施状況
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2015年末に社内規定、従業員教育、情報システム改変の遅れが想定

マイナンバー対応が求められる2015年末時点で、対応が遅れた場合に想定される事態を、マイナンバーの実施・実施予定・実施想定層に複数回答で尋ねたところ、全10項目のうち、「社内規定・マニュアルが対応していない」が42.9%、そして「従業員の教育・啓発が不十分である」が40.9%で、この2項目が4割台と高かった(図3)。

これに次いで、「情報システムの改変が完了していない」、「関連する帳票(法定の調書など)とその要対応箇所を特定できていない」の2項目が上位に並ぶ。

2015年3月時点で対応作業の実施率が低いことを踏まえると、政府や業界団体、関連事業者による働きかけが強化されず、このままのペースで進捗した場合、2015年末時点で、こうした事態に陥る企業・団体が続出する恐れがある。

図3 2015年末時点でマイナンバー対応が遅れると想定される事態
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人事・給与システムの改変、マイナンバー用システムの導入が必要

マイナンバーの実施・実施予定・実施想定層が、対応する必要があると考えている情報システム(複数回答)の筆頭は「人事・給与システムの改変」で71.4%、2位は「会計・経理システムの改変」で41.4%、3位は「マイナンバー保管システムの導入」で28.3%ある(図4)。4~8位の5項目はいずれも2割台前半でほぼ同じ水準にある。

調査した13項目は、「人事・給与」「会計・経理」などの「業務システムの改変」と、「保管」「収集」などの「マイナンバー用システムの導入」、それ以外の3つに大別できる。「業務システムの改変」に関する5項目を合わせると74.6%になり、「人事・給与システムの改変」がその大半を占めている。

これに対して、「マイナンバー用システム導入」に関する6項目を合わせると43.5%になる。この中で最も高い「マイナンバー保管システムの導入」(28.3%)をはじめ、2割台前半に「マイナンバー収集システムの導入」、「マイナンバーにアクセスする権限を管理するシステムの改変・導入」、「マイナンバーを記載する法定書類の出力システムの導入」「マイナンバーにアクセスした記録(ログ)を照会するシステムの導入」の4項目がある。マイナンバー用システムは、特筆して高いものがない代わりに、多様な情報システムが幅広く想定されていると言える。

「業務システム」と「マイナンバー用システム」の分類に入らないのが「セキュリティシステムの改変」(17.2%)である。「マイナンバーを組織として故意に漏えいしたり盗用したりした場合に、企業にも厳しい罰則がある」が、このことの認知度は、マイナンバーの実施・実施予定・実施想定層でも47.6%にとどまる。「セキュリティシステムの改変」に関する必要性の認識が2割弱にとどまっているのは、マイナンバーを取り扱うシステムのセキュリティの必要性について十分に認知されていないことも背景にある。

図4 マイナンバー制度に対応するために、改変・導入する必要がある情報システム
図4 マイナンバー制度に対応するために、改変・導入する必要がある情報システム クリックで拡大

調査概要

  • 調査名称:
    企業・組織におけるマイナンバー対応に関する実態調査
  • 調査目的:
    日本の企業・組織におけるマイナンバー対応の実態を明らかにする
  • 調査対象:
    企業の経営系部門、情報システム部門、総務・経理・人事などマイナンバー対応の取り組みが想定される部門の所属者
    (日経BPコンサルティングの調査モニター)
  • 調査方法:
    Webアンケート調査
  • 有効回収数:
    1058件
  • 調査日程:
    2015年3月25日(水)~3月28日(土)
  • 調査主体:
    日経BPコンサルティング、日経BP社日経コンピュータ編集部
    回答者属性:
    勤務先の業種:製造業30.2%、流通業9.5%、金融業6.3%、建設・不動産業8.6%、IT関連(通信・SI等)13.2%、その他25.4%、政府/官公庁/団体6.7%
    従業員数規模:1~99人26.7%、100~999人32.5%、1000~4999人17.7%、5000人以上21.6%、不明1.4%。
    所属部門:経営系部門26.3%、情報システム部門31.1%、総務・法務・経理・人事31.9%、その他10.8%。
    ■株式会社日経BPコンサルティングについて
    日経BP社全額出資の「調査・コンサルティング」「企画・編集」「制作」など、コンサルティング、コンテンツ関連のマーケティング・ソリューション提供企業。(2002年3月1日設立。資本金9000万円)

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