若手社員の「ビジネス・クリエイティビティ」の重要性が浮き彫りに。~クリエイティビティは、もはやクリエイターだけのものではない~ ~課題は「創造力」、「伝達力」、「視覚化力」~
「企業で必要なスキルと大学教育に関する調査」

2012年08月21日

株式会社日経BPコンサルティング(東京都港区)はこのほど、「企業で必要なスキルと大学教育に関する調査」を実施し、その結果をまとめた。

調査した若手社会人のスキル22項目に対する評価を見ると、「課題設定力」や「創造力」、「伝達力」、「視覚化力」などの不足が目立ち、若手社会人には「ビジネス・クリエイティビティ」が求められていることが浮き彫りになった。クリエイティビティは従来、デザイナーやプログラマーなどの一部の職種だけに求められる資質だととらえられる傾向があった。しかし、本調査を通じて、クリエイティビティは「日々の仕事に必要とされる」ものであり、若手社会人にも欠かせないスキルであることが、明らかとなった。また「複数のメンバーで協働してまとめ、わかりやすく表現し、関係者にうまく伝える『アウトプット力』が今後のビジネスで重要になる」ことに強い支持が集まった。

この調査は、企業の人事担当者ではなく、企業で実務に携わる人々を対象とした。具体的には、最近1年間で仕事に関する指導・助言をした経験のある40歳代管理職と、指導・助言を受けた経験のある20歳代若手社員に、対象者を絞り込んで実施した点に特徴がある。

なお、本調査結果については、「次代を担う人材育成のための大学教育」をテーマとした「2012 Adobe Education Forum」(2012年9月12日(水)午後開催)で、より詳しく解説する予定。

「日々の仕事にクリエイティビティが必要」が8割

この調査では、「日々の仕事にクリエイティビティ(創造性)が必要だ」ということへの賛否を、現時点および以前の考えとして、4段階で尋ねたところ、40歳代、20歳代ともに8割前後が支持した(図1)。

また、「今後のビジネスでは『アウトプット力』が重要になる」ことへの賛否を6段階で尋ねたところ、40歳代、20歳代ともに96%が支持した。「非常にそう思う」が約3割を占め、高い比率を示したことも特徴である。なお、調査対象者には、「考えや物事を複数のメンバーで協働してまとめ、わかりやすく表現し、関係者にうまく伝えること」を「アウトプット力」と呼ぶという定義を提示している(図2)。

図1 「日々の仕事にクリエイティビティ(創造性)が必要だ」ということへの賛否
図1
図2 「今後のビジネスでは『アウトプット力』が重要になる」ことへの賛否

※ この調査では、「考えや物事を複数のメンバーで協働してまとめ、わかりやすく表現し、関係者にうまく伝えること」を「アウトプット力」と定義した。

図2

では、このアウトプット力はどの時点までに身につけるべきか。4年制大学を卒業して就職することを前提として、最も近いと思う時期を選んでもらった結果を示したのが図3である。

図3 「アウトプット力」を身につけるべき時期
図3

20歳代一般社員の7割(69.5%)が大学卒業までにアウトプット力を身につけなければならないと感じている。一方で、同様に感じている40歳代管理職は5割に満たず(48%)、アウトプット力を入社1~5年目に身につければよいと感じている(45.4%)。いずれの年代の場合でも、高校卒業後、大学入学、卒業を経て、入社5年目までの時期に、アウトプット力を身につける必要性があるという認識が7割を超えているという点で、40歳代管理職と20歳代一般社員の認識は共通している。

若手社会人には「ビジネス・クリエイティビティ」に関連するスキルが不足

若手社会人のスキルに対する20歳代一般社員の自己評価、および40歳代の管理職から見た若手社会人に対する評価(主に部下への評価)を見ると、「ビジネス・クリエイティビティ」に関連するスキルの不足が目立った(図4)。

この「ビジネス・クリエイティビティ」に関連するスキルとは、
(1)「自ら課題を設定する(課題設定力)」
(2)「ものごとを国際的な視点や視野で見る(グローバル視点)」
(3)「自ら行動を起こす(能動性)」
(4)「既成概念にとらわれない発想をする(創造力)」
(5)「伝えたいことを、きちんと伝えられる(伝達力)」
(6)「考えやアイデアをデータや図表で表現する(視覚化力)」
――といった項目のことである。この表現は、アンケート調査で調査対象者に提示したスキルの定義である。こうしたスキルを発揮して仕事で成果を上げることが求められているが、現在の若手社会人には不足していることが明らかになった。この調査結果を踏まえ、これらの6つのスキル項目で総称される力を「ビジネス・クリエイティビティ」と呼称することにした。

不足しているスキルとして40歳代管理職と20歳代一般社員に共通するのは「創造力」、「伝達力」、「視覚化力」である。全体の平均スコアが58.3ポイントであるのに対して、これらの3項目はいずれもスコアが50~56ポイントにとどまる。

一方、40歳代管理職の20歳代一般社員に対する評価が20歳代と比べて低いのは「課題設定力」や「能動性」で、20歳代一般社員の自己評価が40歳代管理職の評価と比べて低いのは「グローバル視点」や「外国語会話力」、「外国語読み書き力」である。40歳代管理職は、豊富な実務経験に基づき、若手社会人に足りないスキルを、より客観的な視点で見ていることがうかがえる。これに対して、20歳代一般社員は時流に敏感に反応しているとも言えよう。これは、「トレンド感性」や「先進性」といったスキルの評価で、20歳代は過少に自己評価している傾向とも符号する。

図4 若手社会人のスキルに対する評価。棒グラフの棒が短く、スコアが低いものが、
若手社会人に不足しているスキルであり、逆にスコアが高いものは充足度が高い。
図4クリックで拡大

<スキルのスコアの算出方法について>
若手社会人の22のスキル項目のそれぞれについて、回答者には「非常に足りない」、「足りない」、「やや足りない」、「足りている(十分である)」の4段階のいずれかにチェックしてもらった。4段階のそれぞれのスコアを0、33.3、66.7、100ポイントとみなし、各段階の回答数をかけ、全体の回答数で割って、スコアを算出した。

調査概要

  • 調査名称:企業で必要なスキルと大学教育に関する調査
  • 調査対象:20歳代一般社員(入社1~5年目)、および40歳代管理職(入社11年目以上)。いずれも大学卒で、従業員300人以上の企業・団体に勤務する人を有効票とした。20歳代は「最近1年間で仕事に関して指導・助言を受けた人」を、40歳代は「最近1年間で仕事に関して、勤務先や取引先の若手社会人に指導・助言をした人」を、有効票とした。
  • 調査目的:若手社会人に求められるスキルについて、若手社会人と40歳代管理職の認識の共通点と相違点を明らかにする。
  • 調査期間:2012年7月
  • 調査方法:Webアンケート調査
  • 回収数:有効回答数は1087人。内訳は、20歳代一般社員468人、40歳代管理職619人。
  • 調査依頼主:アドビ システムズ株式会社

日経BPコンサルティング:日経BP社全額出資の「調査・コンサルティング」「企画・編集」「制作」など、コンサルティング、コンテンツ関連のマーケティング・ソリューション提供企業。(平成12年4月4日設立。資本金9000万円)

このリリースに関するお問い合わせ

日経BPコンサルティング ビジネスコンサルティング部 担当:村中

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