独法サイト、7割が新設のアクセシビリティ基準満たさず
─新JISに向けて浮かび上がった問題点─「独立行政法人Webサイトユーザビリティ調査2010/2011」より

2010年08月17日

日経BPコンサルティング(東京都港区、高橋銀次郎社長)は、独立行政法人104サイトのユーザビリティ(使いやすさ)をランキングで示した「独立行政法人Webサイト ユーザビリティ調査2010/2011」を、8月17日(火)に発売した。総合ランキング1位となったのは原子力安全基盤機構サイトだった。

今回の調査では、近く発効すると言われているアクセシビリティに関する新JISの公開レビューに沿って先取りした審査項目を新たに加えた。文字の読みやすさを数値で判定する審査だが、この基準をクリアしたサイトは全体の32%にあたる33サイトで、残り7割近いサイトは基準に達していないことが分かった。

独立行政法人のサイトは、業務内容を国民に分かりやすく伝える役割を担っている。とりわけ行政刷新会議の「事業仕分け」を契機に、多くの国民が、今まで以上に独立行政法人に関心を寄せるようになった。サイトの役割もこれまで以上に大きなものになったといえる。本調査ではこのような独立行政法人サイト104サイトを、調査員が実際に閲覧しながら、51項目6カテゴリーの審査項目についてチェックしていった。

独立行政法人のWebサイト ユーザビリティ調査は2006年に第1回調査を発表し、今回は第3回目となる。

高齢化する社会への配慮が不足

文字の読みやすさを評価するため、新JISでは文字と背景とのコントラスト比を、達成基準(A、AA、AAA)に応じて定めることが検討されている。例えばAAでは「4.5:1以上」、より厳しいAAAでは「7:1以上」といった具合だ。今回の調査ではこれを先取りして、文字と背景とのコントラスト比が4.5:1以上あるかどうかチェックする項目を加えた。対象には画像にした文字も含めた。

結果は上でも述べたように、クリアしたサイトが33サイト(32%)で、残りの71サイト(68%)には読みにくい文字が存在した。

日本の社会は、言うまでもなく高齢化に向かっている。老視(老眼)や白内障のビジターも増えるだろう。文字のコントラスト比を高くして読みやすくすることは当たり前の配慮と考えられるようになる。今回の調査ではそうした配慮が、多くのサイトで不足していることが分かった。

文字は背景とのコントラスト比が4.5:1以上あるか
文字は背景とのコントラスト比が4.5:1以上あるか

※ グラフ内の数字はサイト数

トップ5の順位は大きく入れ替わる

ランキングに目を向けると、総合スコア順位の上位サイトは、原子力安全基盤機構(90.20点)、高齢・障害者雇用支援機構(85.96点)、日本貿易振興機構(85.76点)、中小企業基盤整備機構(85.51点)、経済産業研究所(83.97点)――の順となった。このうち3サイトは前回(※)から10位以上、順位を上げてトップ5に入ったサイトだ。

※2008年10月発行の第2回調査

総合スコア順位ベスト5
総合スコア順位ベスト5
  • 順位の変動が10位以上あったサイトには矢印を付けた
  • 総合スコアは100点満点

1位となった原子力安全基盤機構は、今回の調査で唯一、総合スコア90点台をたたき出した。サイトの使い方を説明する「利用ガイド」を新設するなど、ユーザビリティを念頭に置いたリニューアルを行い、結果、大幅なスコアアップを達成して、前回の48位から一気にトップに躍り出た。

原子力安全基盤機構のようにリニューアルを実施したことでスコアが上がったサイトは多いが、一方で大幅なリニューアルをせずにスコアを伸ばしたサイトもある。2位の高齢・障害者雇用支援機構と5位の経済産業研究所はその典型的なサイトだ。両サイトとも大きなリニューアルはしていないが、小さな改善を数多く実施している。これが総合スコアアップにつながり、順位は14位から2位、および38位から5位へと上がった。

3位の日本貿易振興機構と4位の中小企業基盤整備機構は前回もベスト5入りしたサイト。今回も高い水準を維持したが、スコアを上げたサイトに抜かれ、順位はわずかに下がった。

独立行政法人104サイトの総合スコア平均は57.66点だった。

(橋本 敏彦=日経BPコンサルティング Webコンサルティング部)

調査概要

米Forrester Research Inc.が開発したWebサイト・スコアカード(=WSSC)をベースに、日経BPコンサルティングが独立行政法人サイトに必要な項目を考慮に入れて独自の審査項目を作成した。審査対象ページは、原則としてトップページおよびトップページからリンクがあるページ。調査対象サイトは、2010年5月時点に存在する全独立行政法人104サイト。調査を2010年5月下旬~6月下旬に実施。

  • スコアの算出方法
    問題点を明確にするため、51の審査項目を6カテゴリー(診断軸)に分類。各審査項目について、問題がなければ「1」点、問題がある場合には「0」点と採点した。六つの審査カテゴリーのうち、「トップページ・ユーザビリティ」は20点、「サイト・ユーザビリティ」と「アクセシビリティ」は各25点、「インタラクティブ」「プライバシーとセキュリティ」「ブランディング」は各10点となるように重み付けを行った。総合スコアは100点満点となる。
  • カテゴリー(診断軸)について
    ・トップページ・ユーザビリティ:サイトで提供している情報や機能の提示を評価
    ・サイト・ユーザビリティ:サイト全体が使いやすい構造になっているかどうかを評価
    ・アクセシビリティ:視覚障害者を中心に誰にでもサイトが使いやすいかどうかを評価
    ・インタラクティブ:独立行政法人への問い合わせがしやすいかどうか、メールマガジンやRSSによる情報発信の有無を評価
    ・プライバシーとセキュリティ:サイト利用者が提供する個人情報について、サイト運営者の保護方針とセキュリティ対策を評価
    ・ブランディング:サイトを通じて独立行政法人の存在をアピールしているかどうかを評価
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