日経BPコンサルティング、「オフィスでの文書活用に関するアンケート」結果を発表

2010年07月30日

日経BPコンサルティング(東京都港区)は有職者を対象に、オフィスの電子化(ペーパーレス化)の実態や、文書の作成、編集、修正過程の実態や課題などを把握する目的のアンケートを実施した。

電子化に取り組む主な目的は、紙文書管理によって発生する手間やコストの削減である。一方、文書を複数人で作成・編集するシーンでは、情報のやりとりに紙や電子ファイル、電子メールなど様々な手法を用いながら、様々な課題を抱えていることがわかった。

電子化に取り組む企業が多い中、その組織としての取り組み姿勢、進み具合ともにばらつきがあり、その一因としてスタッフの意識やITスキルの差があるようだ。

オフィスの文書管理における課題

図表1 文書管理における課題
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文書管理における主な課題は、紙での管理が「保管スペース確保などのコストがかかる」、「資源の無駄が多い」「探すために時間がかかる」などで、回答者の半数以上が挙げている(図1)。これらの課題は今後、文書の電子化が進むにつれて徐々に解決されていくと考えられる。

一方、電子ファイルでの管理に関しては「誰がいつ手を加えたのかわかりづらい」「最終版のファイルがわかりづらい」「ソフトウエアの種類やバージョンによってファイルを開けないケースがある」を4割弱が挙げており、複数人で電子ファイルを扱う際には運用上の工夫が必要となる(図1)。

複数人での文書作成や編集の実態

図表2 複数メンバーが連携して作成する文書の内容
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複数人で連携して作成する文書として、「報告書」「会議、打合せ資料」「プレゼンテーション資料」「企画書、提案書」「スケジュール表」が上位に挙がった(図2)。「特になし」との回答は18%にとどまり、全体の8割以上が他のメンバーと連携して文書作成や編集を行っている。

特に、過半数の方が関わっている「報告書」について、複数人でのやりとりの実態を図3、図4に示す。相手の数は「2~4人」が中心だが、5人以上と連携している人も2割弱いる。このように複数人で文書の内容追加、修正依頼のやり取りをする方法は「メールの文面で伝える(59%)」「ファイルに直接書く(48%)」「口頭で伝える(45%)」「紙に直接記入する(36%)」などが3割を超える。具体的な意見を見ると「手書きやデータ編集など人によって方法が違うと、どれが最終正しいのかわからなくなる(商社・卸売業・小売業、30代)」「誰がいつどこを修正したかわかりにくい(サービス業、40代)」「変更履歴の管理が難しい(情報処理サービス/ソフトウエア・ベンダー、30代)」などの課題を抱えていることが明らかになった。

図表3 「報告書」の作成に関与している相手の数
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図表4 「報告書」の内容追加・修正依頼のやりとり方法
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オフィスでの電子化の実態

回答者の約6割がオフィスの電子化のために何らかの取り組みをしていると回答。しかし、会社として運用ルールを設定しているのは24%にとどまる。会社としては推奨レベルであったり、運用ルールが部署やグループという小単位に限定されていたりするのが現状で、全社的な徹底はまだ進んでいないようだ(図5)。

電子化の主な目的は「文書の印刷、複写、送付にかかる手間やコストの削減」が突出し、電子化に取り組んでいる人の4割が挙げている。続く「文書の管理スペース(書庫や書棚)のコスト削減」も含め、紙という形態のために発生する手間やコストの削減を意識する傾向が強い。文書を電子化することで「情報共有の効率化」や「文書の検索、参照、作成、修正などの効率化」という効果も重要と考えられるが、この点を主目的ととらえる人はまだ少ない(図6)。

図表5 電子化への取り組み姿勢
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図表6 電子化の主な目的
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また、電子化に取り組んでいる人にその進み度合いを尋ねた結果、「進んでいる(進んでいる+まあ進んでいる)」は52%、「進んでいない(進んでいない+あまり進んでいない)」は47%とほぼ半々になった(図7)。紙でないと支障があるとの意見も多いが、意識の浸透、ITスキルレベルの向上に時間がかかるため、電子化の進度が遅れている面もあるだろう(図8)。

「紙で出力しないとコメントやアンダーライン等ができない(建設・土木業、40代)」「紙でないと見ない上司がいる(情報処理サービス/ソフトウエア・ベンダー、40代)」「決裁がいまだ印鑑(官公庁/医療機関/教育機関、50代)」などの意見から、慣れた紙文書でのフローをなかなか変えられない実情がうかがえる。また「電子データの場合、改ざんの恐れがある(食品・化学・鉄鋼・金属製造業、30代)」「電子ファイルそのものの数が増え、見たいファイルを探しにくい(電気機械・電子部品製造業、20代)」などの意見が寄せられ、電子ファイルでの管理を効率的に進めるために検討の余地があるようだ。

図表7 電子化の進行度合い
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図表8 文書の電子化が進んでいない理由
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調査概要

本調査は、日経BPコンサルティングの「調査モニター」、日経BP社のWebサイト「日経ビジネスONLINE」会員、「アソシエ オンライン」会員のうち有職者を対象に実施した。手法はインターネット調査。調査期間は2010年4月16日~25日で、有効回収数は4,687。