成功談から信頼の情報源へ。生成AI時代にこそ求められる、導入事例が果たす新たな役割

2025.10.07

コンテンツマーケティング

  • コンテンツ本部 ソリューション1部

企業独自の情報発信は、広報やマーケティングにおいて大きな価値を持ちます。近年はGEO(Generative Engine Optimization:生成AIエンジン最適化)への有効性も指摘されており、その代表的な存在である導入事例コンテンツが改めて注目を集めています。では、実際の購買担当者はどのように導入事例を読み、意思決定にどう生かしているのでしょうか。日経BPコンサルティングが実施した約2700人(有効回答数:2687件)の調査から、導入事例が果たす役割と、これから求められる条件が明らかになりました。読み手が本当に求める情報設計と、成果につながる作り方のヒントを紹介します。

<調査概要>
日経BPコンサルティングのアンケートシステムにて、同社モニター2687人を対象に2025年4月に調査
調査・文=日経BPコンサルティング

購買担当者の約8割が参考に。導入事例に求められる視点

導入事例は、製品やサービスの魅力を伝えるだけではありません。顧客の成功体験を第三者の声として示すことで説得力を高める、BtoBマーケティングに欠かせないコンテンツです。営業資料やWebサイト、展示会などで広く活用されています。そして、いま購買の現場では「成功談」以上の役割が求められています。

2025年4月に実施した調査(有効回答数:2687件)では、製品・サービスの購入・契約時に導入事例を「参考にしている」と答えた人が76.6%に達しました。その中でも「非常に参考にする」と回答した人は10.1%であり、導入事例が購買判断における“信頼の情報源”として確かな地位を築いていることが分かります。

「導入事例」の参考度合い(単一回答)

円グラフ:「導入事例」の参考度合いについての結果。非常に参考にする/ある程度参考にする 76.6%、どちらともいえない 17.1%、あまり参考にしない 4.1%、まったく参考にしない 0.8%、分からない 1.4%。回答数は1427件。

では、購買担当者はどこで導入事例を目にしているのでしょうか。最も多かったのは「企業の公式サイト」(61.7%)、次いで「営業担当者からの資料」(36.7%)、「展示会・セミナー」(36.5%)でした。ここでは上位3項目を抜粋していますが、その他のチャネルについては、ダウンロード資料で詳しくご紹介しています。これらの結果から、購買担当者がどの接点を重視し、信頼しているかが明確に見えてきます。

「導入事例」を見る場所(複数回答)
※一部抜粋

横棒グラフ:「導入事例」を見る場所についての結果。企業の公式サイト 61.7%、営業担当者から直接受け取る資料 36.7%、展示会・セミナー 36.5%。横軸は割合(%)。回答数は1873件。

導入事例が重視されるタイミングは「情報収集・製品探索段階」(46.1%)が最多です。ただし「比較・絞り込み段階」(34.7%)や「社内稟議・意思決定段階」(4.5%)でも活用されています。つまり、導入事例は単なる認知獲得のツールではなく、“意思決定を支える資料”としても機能しているのです。

成功談だけでは届かない、購買者が欲するリアリティー

導入事例が信頼を得るのは、読み手が「リアルな1次情報」を重視しているからです。BtoBマーケティングでは、単なる製品情報だけでなく、課題解決のストーリーが重要な役割を果たします。

調査によると、導入事例で最も参考になった情報として挙げられたのは「具体的な導入効果(業務効率化・コスト削減など)」で59.1%でした。次いで「事例企業の業種・規模・課題」が39.0%となっています。

本記事では上位2項目のみを抜粋していますが、実際には「導入後の運用方法」「導入プロセス」「失敗事例やリスク」など、購買担当者が求める多様なニーズが浮き彫りになりました。

「導入事例」で参考になった情報(複数回答)
※一部抜粋

横棒グラフ:「導入事例」で参考になった情報についての結果。具体的な導入効果(業務効率化・コスト削減などの数値)59.1%、事例で紹介されている企業の業種・規模・課題 39%。横軸は割合(%)。回答数は1337件。

注目すべきは「失敗事例やリスクにも触れてほしい」という声が44.7%にのぼったことです。成功談だけでは不十分であり、課題に直面し改善したプロセスこそが参考になります。購買担当者は自社の状況に重ね合わせ、「同じ課題をどう乗り越えられるか」をシミュレーションしているのです。

さらに「第三者視点での客観的な文章が読みやすい」(36.7%)、「製品・サービスの効果を詳しく説明してほしい」(43.9%)といった意見も寄せられました。導入事例には、企業の主張ではなく、読者の立場に寄り添った“信頼されるストーリー”が求められています。

自由回答では「動画で見せてほしい」「図解があると理解しやすい」「長すぎて読まれない」といった声も目立ちました。いまや導入事例はテキストだけで完結するものではありません。短尺動画やインフォグラフィックなど、直感的に理解できるコンテンツ制作が求められています。トップや現場担当者のリアルな声も説得力を高めており、「誰が語るか」が信頼に直結しています。

営業ツールを超え、資産となる導入事例の新しい価値

情報があふれ、誰もが類似コンテンツを容易に生成できる時代になりました。その中で導入事例に求められるのは、生成AIでは生み出せない人間ならではのリアリティーです。今回の調査でも「当事者の声」や「1次情報の信頼感」が価値として際立っています。

購買担当者はまた、自社と同じ業界・規模・地域の事例を強く求めています。よりパーソナライズされた導入事例が重要になっているのです。構成面でも「課題→試行錯誤→解決→成果→今後の展望」といったストーリー設計が高く評価されています。単発の制作物ではなく、社内外で再利用できるナレッジ資産としての活用が期待されています。

導入事例は、営業ツールにとどまらず、意思決定支援のための戦略的コンテンツへと進化しています。今後の事例づくりでは「成果数値やビジュアルによる裏付け」「失敗やリスクも含めたリアルなプロセス」「読者の立場に応じた多層的な情報設計」が不可欠となるでしょう。こうした工夫は生成AI時代の検索最適化であるGEOの観点からも有効です。

このような戦略的な事例づくりにおいて最も重要なのは、購買担当者の立場に寄り添うことです。導入事例は、読まれること自体はもちろん大切ですが、それだけを目的にしてはいけません。重要なのは意思決定の現場を支える視点で「どうすれば役立つか」を設計することなのです。

本記事では調査結果の一部をご紹介しました。購買フェーズごとの情報活用の違いや、印象に残った具体的事例の分析など、さらに詳しいデータはホワイトペーパー資料で公開しています。

 資料ダウンロード 

約2700人が答えた
“導入事例の本音”を完全公開

導入事例を「成功談」から「戦略的コンテンツ」へ。購買者の視点に基づく導入事例の最新調査を収録したホワイトペーパーを無料でダウンロードいただけます。BtoBマーケティングに役立つ、企画から成果につなげるヒントが詰まっています。

この調査はオンラインセミナー「生成AI時代。激変するBtoBマーケティング」でも紹介されました。セミナー採録記事はこちらからご覧いただけます。