ブランド価値評価調査の活用事例
会社の未来を担う人材確保をにらんだブランド調査~「黒子」から表舞台に立つ企業へ~
専門的な調査・分析に基づく自社の「現在地」の把握
ブランド価値評価調査を始められた背景を教えてください。
一般的な話になりますが、BtoB企業は、認知度向上が一つの課題です。少子高齢化が社会問題になる中、我々のような製造業では、他業種以上に将来人材不足に陥るのではという強い危機感を抱いています。当社は経営方針として、サステナビリティを掲げています。また、製造業は技術の変化が大きい世界なので、常にそれに対応する必要があります。会社の利益を上げ、サステナブルな成長を遂げるためには、優秀な人材の確保が不可欠です。当社は2023年に、東京・汐留に「東京クロステックガーデン」を新設、東京本部などを移転しました。ビル名をはじめ、人々が交わり、新しい価値とモノを作る拠点であることを強く意識した場所で、これも優秀な人材を獲得するための一つの施策です。
これまで部品メーカーは黒子的な存在で、セットメーカー(完成品の製造・販売を行う組み立てメーカー)を陰で支える役割に徹していました。しかし、それでは優秀な人材はなかなか獲得できません。今の社会では、彼らにアピールするためには表に出る必要があります。どのように我々の企業認知度、イメージを上げたらいいのか――。それを考えるにはまず、当社の立ち位置を正確に把握する必要がありました。そのために、ブランド調査が効果的だと考えたのです。
ブランド調査を検討するにあたり、なぜ日経BPコンサルティングの調査を選択されたのかを教えてください。
昌保 日経BPコンサルティングはブランド調査に関して豊富な実績を持たれていることに加え、専門性が高く、信頼できる会社のため、依頼しました。レポートでは、非常に多角的で客観的な分析をしていただき、当社の現況が正確に把握できています。また、調査結果から見えた課題に対するディスカッションも有意義なものとなっています。
調査結果が示す、若い世代の認知度向上の必要性
ミネベアミツミ様の調査は、「ブランド・ジャパン」をカスタマイズして利用していただいていますが、どのような点に注視されているのでしょう。
ミネベアミツミ 広報・IR室
昌保 綱郎 氏
昌保 まずは、電子部品業界で当社がどのようなポジションにいるかを、正確に見極めたいと考えています。人材確保におけるターゲットは学生やその親世代なので、その層に、どの程度認知度があり、どういったイメージを持たれているのか把握したい。競合企業についても調査を行っていただいていますが、他社と比較することで、当社の強み・弱みをあぶり出すことができます。こうした様々な調査結果を通じて、ブランド戦略を練っています。
調査目的に対して、結果をどのように受け止めていらっしゃいますか。
昌保 年配の方やビジネスパーソンには認知度が高いものの、若い人の認知度が低いと感じます。採用につながる、学生や20代の認知度を上げる必要が、調査結果から見えています。
「相合」コンセプトを基盤とした多角的な情報発信の強化を目指して
会社のブランド力を高めるために、今後どのようなことに注力しようと考えていますか?
昌保 当社には「相合(そうごう)」という経営コンセプトがあります。相い合わせることを意味する言葉で、人、技術、事業など、あらゆるリソースを掛け合わせて新しい価値の創造を目指すものです。「相合」により社会的課題を解決し、これにより生み出される高付加価値製品、技術力を、メディアやイベントなどを通して、ステークホルダーに積極的に発信していきたいと思っています。例えば、大阪・関西万博で「からだ・こころ・きずな」をテーマとしたパビリオン「PASONA NATUREVERSE(パソナ ネーチャーバース)」に未来の眠りを体験できるコンセプトベッドを展示しています。当社のセンシング技術を活用して寝ている人のバイタル情報を測定し、良質な睡眠と快適なめざめを実現する製品で、ミネベアミツミの取り組みを、国内のみならず世界に発信できる貴重な機会となっています。
また、今年は当社として初めて、有名タレントを起用したテレビCMを制作、7月より放映しています。幅広い年代に好感度が高く誠実なイメージのある元卓球選手の石川佳純さんを起用しました。石川さんは精密なショットを武器に世界で活躍されてきた方で、当社のものづくりを支える超精密加工技術とグローバル展開という部分がうまく結びついています。CMの一番の目的は、社名を知ってもらうこと。CMを活用して、社名はもちろん、当社の製品が色々な製品に使われていることを発信していきたいです。
テレビCMについて、社内の反応はいかがでしたか?
昌保 社内の反響は非常によく、社名を訴求するコンセプトも評判でした。このようなCM作りは初めてで不安もあったのですが、石川さんと当社のイメージがぴったり合っているという声も聞こえてきました。広報としてもうれしかったです。
インターナルブランディングとしては、どのような取り組みを行われているのでしょうか?
昌保 汐留移転を機にグループ会社や事業部門間のコミュニケーションが活発になってきており、広報ではその潤滑油として社内報を充実させています。年2回、紙の社内報を発行、海外の従業員にも読んでもらえるよう英語版も作成しています。約50ぺージとボリュームがあるのですが、サイズはB5でコンパクト。持ち運びやすいよう考えてのことです。内容は、イベントや展示会などの最新情報、駐在員の現地レポート、スポーツをはじめとする部活動についてなど。一方、最近は社内ポータルサイトの活用も推進しています。紙は記録性が高いのですが、「熱」が冷めないうちに社員に伝えたいこともある。社内ポータルサイトの充実を図り、タイムリーな発信ができるようにしました。ニュースのアップデートをしやすく、テレビCM放映といった内容は、発信するとすぐに社員から反響があります。「いいね」を押してもらったり、コメントをもらったり。コミュニケーションが大きく変わりました。
人材確保を見据えたブランディングについても、今後の方向性を教えてください。
昌保 現在、学生と直接接する機会を作りリクルートにつなげようという活動をしています。学生たちが企画・設計・制作したフォーミュラスタイルの小型レーシングカーでレースを行う「学生フォーミュラ」というイベントがあるのですが、昨年からこれに協賛。モデルカーを展示し、当社の部品がどう使われているかを見せたり、学生が制作する車体に当社の部品の提供をしたり、技術を含めて、ミネベアミツミを身近に感じてもらえる機会になっています。こうしたイベントへの参加は、人材開発部とも連携しながら、これからもっと進めていきたいと思います。
力のある部品メーカーはみな、技術力や環境に配慮した活動で評価を得ています。その中でどう抜きんでるかが勝負。誰もが知る会社となるには広告宣伝は大事ですが、学生向けイベントに参加して、直接の対話を強化することも大切で、他社との差別化を図れると考えています。
ものづくりの技術を体験・体感できるショールームとして、2023年に「クロステックミュージアム」をオープンし、子どもたちとの新たな接点となっている
ミネベアミツミ株式会社
広報・IR室 係長
昌保 綱郎 氏
2016年にミネベアに中途入社。主にショールームを担当し、メンテナンスや展示内容のアップデート、広告関連業務を担当。17年にミツミと経営統合しミネベアミツミとなってからはPR関係の業務に従事。プレスリリース、メディア対応、社内広報全般を手掛ける。現在は、ブランディング業務全般を担当している。
※肩書きは記事公開時点のものです。
ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
池田 梨子
Webサイト評価調査「Webブランド調査」を担当するほか、各種ブランド調査やインタビュー、ブランドメッセージ制作などのブランディング支援に従事。周年事業デザインセンターのコンサルタントとして周年事業の各種支援も行う。
※肩書きは記事公開時点のものです。