広報メディア制作のお悩み解決!~デジタルコンテンツ編~

オウンドメディア活性化のヒントを探る

2024.03.11

コンテンツマーケティング

  • コンテンツ本部 ソリューション2部

日経BPコンサルティングが国内主要企業・団体を対象に行った「広報部門の活動と広報誌(デジタル媒体含む)に関する調査」によると、紙の広報誌からデジタルに移行したいと考える人の割合は43.1%。その一方で、広報誌をデジタル化すると、紙媒体より閲読率が下がるのではないかと懸念する回答が50.7%にのぼりました。広報誌のデジタル媒体化=オウンドメディアとしての発信において、何から始めればいいのか分からない、やってはみたけれど、うまくいかないという課題を持っている企業も多いようです。どんな課題解決の方法があるのでしょうか。日経BPコンサルティングで企業のデジタルコンテンツに携わるメンバー3人に、それぞれのプロジェクトが抱える課題に対し、どのように応えたのかを聞きました。
 

※記事内の企業名は仮名です。


Case1:A社(金融機関)の場合
経営理念に基づく事業活動を物語性のある記事にまとめ、コーポレートサイトで発信

A社(金融機関)のコーポレートサイトの運用とコンテンツづくりを担当して4年目になります。2020年にA社からコーポレートサイトをリニューアルしたいという相談が入りました。我々はサイト内にBtoB マーケティングの強化施策を盛り込んだ上で、記事コンテンツの発信によってコーポレートコミュニケーションを強化するアイデアを提案し、制作が始まりました。リニューアルを進めていく過程で、A社の中期経営計画の刷新があったため、記事コンテンツでは中期経営計画で目指すゴールとSDGs経営に根差した日頃の事業活動をストーリーで物語るという提案をしました。

A社が課題に感じていたのは、グループ内で事業の再編を図り、ビジネス領域が拡大していたにもかかわらず、その取り組みをうまく訴求しきれていない点でした。そこで、企業広報の一環で、中期経営計画で掲げた事業内容を記事(読み物)にして、コーポレートサイトで広く訴求できるように提案したわけです。個人の経験や感情に焦点を当てて理解を深めるナラティブ・アプローチを用い、SDGs経営を体現する現場社員を軸にした物語性の高い取材記事にして、読み応えのある記事づくりを行っています。

記事制作を始めた当初は、記事のネタ集めは主に担当する広報部門の仕事でした。しかし近頃は、事業部門や全国各地の営業部門から広報部門に「こんなことがあるからコーポレートサイトで取り上げてほしい」と情報が集まってきます。社内で双方向の流れができて好循環となり、インターナルコミュニケーションにも役立っています。記事に取り上げられることは社員のモチベーション向上にもつながり、全国の支店の営業担当者にも記事をドアノックツールとして活用してもらえるようになりました。もちろん、編集・制作を担当する我々からも、A社との日頃のコミュニケーションから企画を提案したり、社会情勢やビジネストレンドと照らしながらアイデアを提案したりしています。

記事づくりにおいて「QCD(Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期))」の3要素はどれも重要ですが、この媒体では特に「Q」の部分に重きを置いています。1本の記事を公開するまでに3カ月程度、時間をかけて制作しています。なかでもテーマ選定に時間をかけ、クライアントへの提案までにそのテーマを徹底的に調べ上げます。この準備をしっかりしておくことでスムーズな進行を支え、最終的に品質向上につながります。記事に出演いただいたA社のパートナー企業様や得意先様からも好評で、サイトで公開した記事の「抜刷り」を制作して配布したり、記事掲載をきっかけに新たな出会いが生まれたりしています。短期的な数値とは異なる部分でも、目に見える形でA社の事業活動やブランドリフトに貢献できていることを、大変うれしく思っています。

■ポイント

  • 中期経営計画に掲げた事業内容を読み応えのある記事にして、広く訴求
  • 個人の経験や感情に焦点を当てて読者の理解を深める
  • Quality(品質)に重きを置き、テーマ選定に注力

Case2:B社(食品系企業)の場合
BtoC向けコンテンツを充実させて、コーポレートサイトで新たなファンを獲得

7年ほど前からB社(食品系企業)の商品紹介を主軸にした、コーポレートサイトのコンテンツづくりを担当しています。当初は、お取引先を対象にしたカタログ的な商品紹介や、サービスガイドなどBtoB向けのコンテンツ制作がメインでしたが、現在は、有名店や世界各国の料理・スイーツの紹介など、BtoC向けのコンテンツが増えています。企画を立てて取材・撮影を行い、編集記事を制作していくという部分では、紙の制作物もデジタルコンテンツも、さほど違いを感じません。逆に違いを感じるのは、動画で動きや音声をつけて目を引く仕掛けを入れられること。デジタルコンテンツの面白さのひとつと言えます。

担当した当初にBtoB向けコンテンツのアクセス解析を行うと、PV数が伸びていないことが分かりました。その解決策として、雑誌づくりのノウハウを取り入れて、料理にまつわる記事や有名店の取材など、読者からの反響が期待できるBtoC向けコンテンツの企画を提案したところ、これが採用されました。BtoC向けコンテンツは初期段階では様子見だったのですが、公開するごとに順調にPV数が増えていったため、クライアント側でコーポレートサイトの活用方針を定めることができました。

コンテンツ制作では、人気店などの料理取材には、動画やシズル感を得意とするフォトグラファーを採用したり、イラストやマンガを採用したり、視覚的にも読者から興味、関心を持ってもらえるように工夫しています。雑誌づくりでは「特集」「連載」「コラム」などの全体構成を意識するので、その考え方を取り入れて、サイト上、どのコーナーで何を伝えていくのかを定義付けて、コンテンツにメリハリをつけるようにしています。

また、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSで著名人がB社の商品や関連する料理を紹介すると、B社のコーポレートサイトを見にきてくれる人が増えます。このため、クライアント側で管理しているX(旧Twitter)の公式アカウントを利用して、誰かが情報をアップするとリツイート機能で反応を返し、情報がより多くの人の目に触れるようにしています。

「食品ロス」をテーマにした記事を公開したときには、小学生が夏休みの自由研究に利用したようでPV数が前月の約2倍になりました。読者の反響が数値で見えることで、評価や読者から求められていることがダイレクトに分かる点に面白さを感じます。それをスピーディーに次の企画につなげていけることが、デジタルコンテンツならではだと思います。

■ポイント

  • アクセス解析結果を根拠にBtoB向けからBtoC向けのコンテンツにシフト
  • 雑誌づくりの考え方を取り入れ、コンテンツにメリハリをつける
  • 読者が求めていることをダイレクトに把握し、企画に反映

Case3:団体C(企業グループ)の場合
複数の企業が加盟する団体の広報サイトで、すべての企業の記事をまんべんなく取り上げ、一つの団体として広報する

企業グループ(団体C)のウェブサイトの運用とコンテンツづくりに携わっています。複数の企業が集まり、グループとして広報活動を行うことを目的に、一つのウェブサイトで情報を発信しているため、各企業の記事を均一に取り扱うことが求められます。印刷物の場合、誌面に限りがあるのですべての企業の記事を掲載することが難しいのですが、ウェブサイトでは、情報をタイムリーに発信していけます。

団体Cは加盟する企業をまんべんなく広報したい方針ですが、企業の数が複数あり、各企業の広報の方針や取り組みが異なるため、一体感を出しにくいという課題がありました。そこで、同一テーマに沿った各社の最新の取り組みを紹介する記事コンテンツを連載して、グループの一体感を醸成することを提案しました。記事制作では、SDGsはグループの理念と通じるものがあり、各社熱心に取り組んでいることから、そのことを伝えるために、各社のSDGsに関する取り組みをすべてリサーチして、テーマの選定や記事構成を提案、コンテンツづくりを進めています。年間で英語版を含めて約90のコンテンツを更新・公開しています。

団体Cの月次のアクセス解析を見ると、ほぼ半数が海外からのアクセス。理念の浸透やグループの一体感がグローバルに伝わっていると感じています。デジタルコンテンツの特性を理解して、その特性を大いに生かして情報発信していくことが、これからのコーポレートコミュニケーションに求められるのだと思います。

印刷物は必ず読者の手元に届くという良さがありますし、デジタルコンテンツは、情報を発信する側が想定していない読者に対しても、間口を広げて届けられるメリットがあります。ターゲットを設定して情報発信することは大切ですが、意外な読者層からの反響を得られることもあり、新規ユーザーの開拓につながる可能性も秘めています。

■ポイント

  • 加盟する複数企業による同一テーマの取り組みを紹介し、グループの一体感を醸成
  • グローバルを意識した記事作成でグループの理念を広く伝える
  • デジタルコンテンツは想定していない読者にも間口を広げられる

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