連載:変革するデータ活用 第5回

経済性だけではない。倫理性の確立を、データ活用の前提に ―― MyData Japan 2019

  • デジタル本部コンサルティング部 石井 健介

経済性だけではない。倫理性の確立を、データ活用の前提に
2019年5月15日(水)、MyData Japan2019が都内で開催された。令和時代を迎えて国内初のマイデータイベントには、産官学から約500名が参加。データ活用に対する関心、期待の高さが伺えた。冒頭のセッションでは、オープン・ナレッジファウンデーション・ジャパン代表理事を務める庄司昌彦氏が「MyData Japan」の一般社団法人化を宣言。マイデータの概念整理と、パーソナルデータ活用における「倫理性と経済性の両立」について、力強く発表した※。 構成:デジタル本部コンサルティング部 石井健介

※:本稿は、2019年5月15日に開催された「MyData Japan2019」の講演レポートです。


私のデータは、誰のもの?

庄司昌彦氏

庄司昌彦(しょうじ・まさひこ)氏。
武蔵大学社会学部教授、国際大学GLOCOM主幹研究員、Open Knowledge Japan 代表理事、インターネットユーザー協会(MIAU)理事、内閣官房オープンデータ伝道師、総務省地域情報化アドバイザー、情報通信学会研究企画委員長。情報社会学、地域社会、オープンガバメント、データ活用等に関心

近年、パーソナルデータやマイデータなど、「個人」にまつわるデータへの社会的関心、価値が高まっています。パーソナルデータは、当然ながら、「私」にとっての資源であり、同時に、「社会的」な資源です。私と社会の交錯は、個人の「遺伝子」や「位置情報」を例に考えると分かりやすいでしょう。たとえば、私個人の遺伝子は過去から途切れることなく受け継がれ、未来へと紡がれていくもの。そう考えると、自分の遺伝子データは自分のモノでありながら、同時にこの社会の共有資産でもあると考えられます。

そして私は、マイデータは「私にとってオープン」であるべきだと考えています。ここでいう「オープン」とは、私のデータは私が自由に共有・使用・提供・加工できるという意味を込めています。つまり単純に私のデータを私が閲覧できる、という意味には留まりません。私が自由に使えるはずなのです。

私のデータが「私にとってオープン」であることはなぜ必要なのでしょうか。それは、開かれたデータであるほど、融合も活用もしやすく、データの価値を高められるからです。つまり、共創しやすい。反対に、クローズドなデータとは、「いかなる目的でも、自由に使用・編集・共有できないデータ」ですね。データに条件や制限がついてしまうと、共創は生まれにくく、データの価値を引き上げにくい。

このオープンであるべきという考えは、パーソナルデータを社会のためだけではなく、私のために使用するときにも、ぜひ根底に据えてください。

「オープンなほど掛け合わせし易い=活用しやすく価値を高めることができる」

自分が関知しないデータ活用を認めない

いまのパーソナルデータ活用は、APIエコノミーだったりプラットフォーム型だったりします。一方、マイデータは、個人を起点にして、個人を真ん中に据える、という考え方です。自分が関知しないところで、自分のデータが活用されたり連携されたりすることなく、自分がそのデータ連携、活用に(積極的に)関与していく。企業ではなく、個人がデータのコネクション・ポイントでありコントロール・ポイントであるわけです。

マイデータはそのビジョンとして「個人が自分自身のデータの主導権を握るべき」であり、そのためのアプローチとして「パーソナルデータに基づくサービスを企業が開発するための新たな機会を切り開きながら、デジタルな人権の強化」を目指しています。つまり、豊かなデジタル社会を築くためには、個人の利益と経済的利益が相反しない、という考えに基づきます。

たとえば、倫理的に調達されたフェアトレード・コーヒーのように、倫理的なパーソナルデータが利益を生むビジネスモデルの一部になり得ることを明確に示す必要があります。

その点、日本は欧州とも米国とも、またアジア諸国とも大きく異なる環境にあります。GAFAをはじめとするITサービスへの受容性が非常に高く、中国との地理的・経済的・政治的な近接、さらに欧州の考え方に近い個人起点のデータ保護など、ユニークな立ち位置にあり、かつ喫緊の課題に直面しているとみるべきです。

MyData Model

ドラえもんを、社会はどう受容するのか

情報銀行では、これをいかにビジネスとして育てていくのかが大事です。マネタイズを考えると、利用者がお金を支払ってでも使いたくなるサービスを生み出す必要があると私は考えています。

すこし視点を変えて、ドラえもんを例に考えてみましょう。ドラえもんは周囲の人を観察したり、のび太くんのマイデータを常に取得していたりするわけですよね。何のためにどの情報を使うかといった同意を、どうやって取得しているのでしょうか。また、AI搭載ロボットともいえるドラえもんは、のび太くんのために働いているように見えますが、じつは元をたどると、子孫のセワシくんが先祖であるのび太くんの人生を変えるために手配したものです。つまり一義的には、セワシくんのために働いている。

我々は、ヒトの代わりに何かをしてくれるロボットが活躍する社会を望んでいます。そんなロボットがいればお金を支払ってでもぜひ使いたい。しかし、これを実現するためには、パーソナルデータの観点をはじめ、様々な課題があります。

ドラえもんのようなAI搭載ロボットが自然なかたちで社会に馴染んでいくためには、彼らが、誰のために、何のために存在しているのかを社会的に合意し、どんな情報を何のために活用しているのかということの同意を、限りなく自然に取得するようにデザインしていかなければなりません。

そのためには、技術的な側面だけではなく、制度的、法律的、倫理的に成熟した対応が我々の社会にも必要になってきます。MyData Japanは、そうした社会づくりに貢献する団体でありたいと考えています。

MyData Japanの発足。次のステージへ

最後に、MyData Japanの一般社団法人化について、ご案内いたします。おかげさまで、2016年に始まったカンファレンスも今回で3回目を迎えることができました。この活動を力強く推進し、また「私のデータ」のあり方を継続的に考えるためにも、このほどMyData Japanは一般社団法人となり、理事長には崎村夏彦さん(NRI)が就かれる予定です。

こうしたカンファレンスの開催のほか、会議、イベントの開催、出版、広報等を通じた啓発活動事業や、パーソナルデータに関する政策、法令、自主規制、規格等の提言事業、個人中心のアプローチによるパーソナルデータ利活用サービスの創出支援事業などを礎に活動してまいります。

今後も、日本だけではなく、グローバルでパーソナルデータに関する取組みを推進し、個人、社会の意思決定、行動を支援していきたいと考えています。

※:肩書は取材当時

デジタル本部コンサルティング部
石井 健介(いしい・けんすけ)

シニア通販誌で編集・商品開発を担当後、金融、住宅建築、化粧品など複数業界で編集、マーケティング支援に従事。リアルとデジタルを分断することなくコミュニケーショプランを企画・実行。2016年8月、日経BPコンサルティング入社

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