BtoC調査を例にとると、ブランドイメージの測定に用いている15のイメージ項目は、フレンドリー、コンビニエント、アウトスタンディング、および、イノベーティブの4因子に集約され、さらにそれらがブランド総合力を構成する。各因子の表すイメージはいずれも重要であり、どの因子においてもスコアが向上すれば、ブランド総合力の上昇に結びつく。こうした高いほどよいというのは、ブランドイメージの量的側面を表している。総合力ランキングがその代表である。
総合力ランキングは興味・関心の中心であり、ブランドにとってはまた達成すべき目標の指標であるため、まず目がいくのは量的側面である。しかし、総合力スコアの変化は、それがどのような因子バランスで構成されているかという、いわば質的側面と深い関わりがあることがわかっている。Googleを例に見てみよう。2007年以降ほぼトップクラスの総合力ランク」を維持し続けている同ブランドは、2002年は591位、2003年は604位と高くなかった。日本では、情報検索サイトとしてはYAHOO!が先行したという経緯があったためである。普及が軌道に乗り始めた、この当時のGoogleの総合力には、イノベーティブの成分が突出して多くを占めていた。
一般に、新しいブランドは、それがもっているイノベーティブ・イメージのインパクトにより、まず消費者に認知され受け入れられる。その後、製品やサービスが利用され、人々の生活に浸透するにしたがって、他の因子イメージを獲得していく。どのイメージを多く身につけていくかは、バンドエイドならコンビニエント、バカラならアウトスタンディングというように、製品カテゴリーによる。このように多種類のイメージを抱かれることによってブランド力は安定する。
その一方で、この変化が進みすぎ、イノベーティブの成分が小さくなりすぎると、ブランドは活力を失うようである。イノベーティブは、人々の心には響く力が強い半面、減衰しやすいイメージでもあるためだ。しかしながら、ブランド力をさらに成長させるためには、イノベーティブ・イメージを再び強め、ブースターとして作用させる必要がある。これはかなり困難な課題で、達成したブランドは多いとは言えない。Googleの場合には、検索エンジンにとどまらず、グーグルアース、グーグルマップ、ストリートビュー等、革新的なサービスを相次いで投入することにより、他のイメージよりも早いペースで再びイノベーティブ・イメージを高め、ブランド力の飛躍につなげた典型例である。
片平秀貴前ブランジャパン委員長が指摘するように(「パワー・ブランドの本質」ダイヤモンド社など)、「耐えざるイノベーションによって、人々に常に感動を与え続けること」がブランドづくりの基本であるようだ。
連載:ブランドづくり、5つのヒント
〜ブランド・ジャパン企画委員会からの提言〜
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桑原 武夫 氏
ブランド・ジャパン企画委員 慶應義塾大学 総合政策学部 教授プロフェット社副会長、カリフォルニア大学バークレー校 名誉教授
コロンビア大学ビジネススクール客員研究員を務める。ポストモダンマーケティングの旗手、モリス・B・ホルブルック教授と共同研究を行う。著書に『ポストモダン手法による消費者心理の解読』(共著、日本経済新聞社、1999年)などがある。