心に残る企業メッセージ、1位は英語のあのフレーズ

2015.08.19

ブランディング

  • setokanako.jpg

    コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント 瀬戸 香菜子

「あなたがこれまで見聞きしたことのある企業メッセージの中で、最も印象に残っているメッセージを一つ教えてください」というアンケートを実施したところ、“現役”のメッセージと肩を並べて、かつて活躍した懐かしいメッセージも上位ランキングに顔を見せました。上位に入ったメッセージを紹介し、その強さについて考えてみたいと思います。

「企業メッセージ」は企業や企業グループが自社の理念や姿勢を伝えるために発するフレーズです。コーポレート・メッセージやブランド・ステートメント、あるいは企業スローガンなどとも呼ばれます。一般に、商品の広告のためのキャッチフレーズよりも長い期間、発信し続けることが多く、最近ではブランディングにおけるツールの一つとして重視する企業が増えています。

これまで見聞きしたことのある「企業メッセージ」の中で、最も印象に残っているメッセージについて一つだけ記述してもらったところ、ランキングの上位は以下のような結果となりました

【図1】全体ランキングTOP20(n=995)
図1 全体ランキングTOP20
【調査概要】
調査期間:2015年7月1日~7月5日
調査方法:Web調査
    (日経BPコンサルティングの調査モニターを対象にしたメールマガジンにて告知)
有効回答数:995人
      性別(男性 807人、女性 188人)
      年代(29歳以下 12人、30代 104人、40代 273人、50代 370人、60歳以上 236人)

1位は「Inspire the Next」 今年で発信15年目

ランキング1位となったのは日立製作所の「Inspire the Next」でした。このメッセージには「次なる時代に息吹を与えていく」という意味が込められています(参考:日立製作所 企業情報)。日立グループのスローガンにもなっています。

一般に「英語のメッセージは定着しにくいのでは」と思われがちですが、必ずしもそうではないことをこの日立製作所のメッセージが証明しました。英語であっても、その企業らしさや個性とリンクした強いメッセージを徹底して訴求すれば、人々の記憶に残すことは可能なのです。英語で発信したことで、世界に向けて発信している姿勢を感じさせるプラス面もあります。

このメッセージは、弊社の「企業メッセージ調査」で実施している「企業名想起率ランキング(※)」においても、2007年を除き毎年TOP10にランクインしているメッセージです。

※企業名想起率 = メッセージのみを提示して発信元の企業名を自由記述で尋ねたときに、正しく記入できた率

2位は「水と生きる SUNTORY」 女性からの支持が高い

2位はサントリーホールディングスが2005年から掲げている「水と生きる SUNTORY」でした。このメッセージには次のような思いが込められています(参考:サントリーホールディングス 企業情報)。

「お客様に水と自然の恵みをお届けする企業として、地球にとって貴重な水を守り、水を育む環境を守りたい。水があらゆる生き物の渇きを癒すように、社会に潤いを与える企業でありたい。そして水のように柔軟に常に新しいテーマに挑戦していこう。」

以前「“森”と言われて思い浮かぶ意外な企業名」のコラムでも紹介しましたが、このメッセージは、もはや「水」を超え、「森」や「自然」までをも連想させるパワーを持っています。この広がりこそが記憶に残る秘訣の一つではないでしょうか。

今回の調査では男性回答者が多かったため、男性ランキング1位の「Inspire the Next」が全体の1位になりましたが、女性ランキングを見ると「水と生きる SUNTORY」が「Inspire the Next」を抑え1位になっています。

【図2-1】男性ランキングTOP10(n=807)
図2−1 男性ランキングTOP10
【図2-2】女性ランキングTOP10(n=188)
図2-2 女性ランキングTOP10

「目の付けどころがシャープでしょ。」 “引退”から5年経っても3位

このメッセージ、実はもう“引退”したメッセージです。というのも、シャープは2010年1月にスローガンの世代交代を宣言しているのです。新たに掲げたスローガンは「目指してる、未来がちがう。」です。しかしながら、新スローガンになって5年経った今でも「目の付けどころ・・・」メッセージの方が新スローガンよりも強く、さらに言えば他の多くの企業メッセージよりも強く人々の印象に残っている、ということが分かりました。

「目の付けどころ・・・」メッセージが心に残る理由は何でしょう。大きな理由は、このメッセージが人々の生活のなかに入り込みやすい要素を備えていることではないでしょうか。例えば「目の付けどころが○○でしょ。」と置き換えて使った経験、皆さんはないですか。人々の会話のなかに入り込んだフレーズは強いです。語尾の「でしょ」も会話に入り込むための要素なのかもしれません。

またもう一つ、このメッセージが発信されてきた期間の長さを理由に挙げてもいいかもしれません。シャープはこのメッセージを1990年から20年間、使用していました。

記憶に残り続けるためのエッセンスとは

伝わるメッセージを作ることはなかなか難しいことです。一流のコピーライターにお願いして、それでも必ず人の心に残り続けるメッセージになるとは限りません。

ただ作ることは難しくても、受け手としての感性を高めることはできます。特にブランドに携わる人であれば、どんなメッセージが印象に残りやすいのかセンスを磨くことは大切なことではないでしょうか。

皆さんにとって印象に残ったメッセージは何ですか? そしてなぜそのメッセージが印象に残ったのでしょうか? ――ご自身の記憶や思い出を振り返ってみると、メッセージの広報活動に役立つヒントが見つかるかもしれません。

企業メッセージ調査

瀬戸 香菜子

コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント瀬戸 香菜子

日本女子大学家政学部食物学科卒業。食べるときは「難しいことは考えず、楽しく、豪快に」をモットーに、職では食の道を選ばず、人材ビジネス会社へ営業職として入社。その後、2007年にポータルサイト運営会社のネットリサーチ事業を担当し、調査業務に従事。2013年日経BPコンサルティングに入社し、同年から「企業メッセージ調査」を担当。社団法人日本パブリックリレーションズ協会認定PRプランナー。

RELATED ARTICLE関連記事

ブランド・ジャパン

日経BPコンサルティング通信

配信リストへの登録(無料)

日経BPコンサルティングが編集・発行している月2回刊(毎月第2週、第4週)の無料メールマガジンです。企業・団体のコミュニケーション戦略に関わる方々へ向け、新規オープンしたCCL. とも連動して、当社独自の取材記事や調査データをいち早くお届けします。

メルマガ配信お申し込みフォーム

まずはご相談ください

日経BPグループの知見を備えたスペシャリストが
企業広報とマーケティングの課題を解決します。

お問い合わせはこちら