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サバイバル分析続く企業の“ブランディング” (4)

ブランド担当者の心得5カ条

  • 文=吉田健一/構成=松崎祥悟
  • 2017年10月06日
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ブランド担当者の心得5カ条

続く企業が実践する“ブランディング”について紹介するこの連載。
第3回では、会社内でブランドが育ちにくい理由について取り上げました。
第4回は、ブランド担当者に身につけていただきたい5つの心得について、一つひとつの解説とともに紹介します。

ブランド担当者に共通する五つのキーワード

企業のブランド担当者は、強いブランドをつくっていかなくてはなりません。あえて断言しますが、強いブランドは必ずつくることができます。

私はこれまで、100人以上のブランド担当者にお会いしてきました。その結果、強いブランドをもつ企業のブランド担当者には、共通認識のようなものがあることに気付きました。私なりにキーワードを整理すると、それは次の五つです。

  • 1 体験と共感
  • 2 自分ごと化とファンづくり
  • 3 タイミング
  • 4 情熱と覚悟
  • 5 換言力

この五つを、ブランド担当者が身につけるべき心得5カ条として、一つひとつ解説していくことにします。これからブランドマネージャーを目指される方には、先輩方の長年の経験から編み出されたノウハウとして、ぜひ念頭におき実践を心がけていただきたいと思います。そして、自分自身があなたの会社の「ブランドの顔」であることを、いつも心に留めておいてください。

其ノ一、体験と共感を大切にせよ

消費者に確実にブランド感を伝えるためには、接してもらって、体験してもらわなくてはなりません。一般的に、消費者の行動モデルと呼ばれるものは「AIDMA(※1)」や「AISAS(※2)」など、提唱する研究機関や企業・団体ごとに様々ありますが、必ずAttention(注目、認知)から始まります。それは、どんなに時代が移り変わっても同じです。最近、特に重要視されているのがブランドとの接点や体験の場としてのウェブサイト運営で、これはブランドづくりにも直結します。

※1 AIDMA(アイドマ)…米国のサミュエル・ローランド・ホールがその著書の中で提唱した「消費行動」のこと。5段階に分けた消費行動の頭文字をとってAIDMAとされる。
Attention(注意)→Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動、購入)。
※2 AISAS(アイサス)…日本の広告会社電通により提唱された、ネットでの購買行動のプロセスモデル。
Attention(注意)→Interest(関心)→Search(検索)→Action(行動、購入)→Share(評価をネット上で共有しあう)。

ブランドマネージャーは、ブランドにかかわるすべての人とうまくコミュニケーションをとり、ブランドづくりの作業に巻き込んで、情報を与えていくことが重要になります。そのためには、当然自分自身も新しいツールに興味をもち、まずは使ってみるなど、積極的な心がけが必要になるでしょう。また、全体的なブランド戦略を考える会議には、経営企画部門だけではなく、ウェブ担当者や販促部隊が出席する必要があるのも言うまでもありません。

其ノ二、自分ごと化とファンづくりに注力せよ

昨今のマーケティング関連のワードで重要なものに、「自分ごと化」があります。情報過多の現代において、消費者は本当に自分に合った情報しか受け取らなくなりました。企業の側でも、商品の宣伝をするときに機能的な部分を強調するのではなく、「この商品を使ったら、あなたの生活はこんな風になるでしょう、こんなに豊かになりますよ」と、ストーリー仕立てで情緒に訴えるものが増えてきています。

ここでは、「主語の置き換え」がポイントです。「企業が」できることを伝えるのではなく、「消費者自らが」どう利益を享受するのかというように、主体と客体を入れ替えるのです。消費者に、「これは他人事ではなく、自分に関係しているのだ。自分がこれを使ったら新しい生活、よりよい生活に変わっていくのだ」と思わせることが重要です。

消費者が何を欲しているのか、消費者はどうありたいと思っているのかという風に、主語を「受け手側」に変えて物事を発想していかないと、消費者にとっての自分ごと化は成り立たないのです。

其ノ三、何よりタイミングが肝要と心得よ

タイミングを逸しないことは重要です。

創業何周年記念、経営者の交代など、企業には自社のビジョンを社会に示さなくてはならない場面が、必ず数年に1度の頻度でやってきます。その機会を逃さずにビジョンを見せることが大事です。それには、タイミングを逆算してブランド戦略を立てることが必要になります。

このタイミングには様々ありますが、特に周年のタイミングでリブランディングを考える企業が少なくありません。そもそも一般的な周年事業では、周年史の制作やイベントなどを通じて、「自社の過去を振り返り、未来を創造する」ことが多いかと思います。つまり、周年事業そのものを、「ビジョンを考え、リスタートする」良き機会と考え、翌年以降「気持ちよく船出する」きっかけと捉えているのです。この行為がまさにリブランディングなのです。

「気持ちよく船出する」とは、現状の経営者や従業員の自社に対する思いを調べ、共有し、自社に対する関心を高める。そして、その想いや魅力を社内外に浸透させたいという意識になってもらうことです。会社の魅力を人に話す、働きがいを持ってもらう、これらを通じて現場の意識・行動変容を推し進めます。

そのために、周年事業の担当部署は、リブランディングの一環で、従業員向けの調査などを通して現状を調べたり、自社の魅力を伝えやすいようなツールや施設を作ったりしています。そして、企業の未来像を定期的に調整・チューニングし、企業の長い歴史・伝統へとつなげているのです。このことを実践するにあたり、事前に長期計画を立てることは当たり前で、数年後に自社の歴史にどのような記念日が生まれるのかを意識しなくてはなりません。

其ノ四、情熱と覚悟をもて

当然といえば当然のような話ですが、ブランドマネージャーは自社ブランドの一番のファンでなければなりません。そうでなければ、ファンを育てることなどできません。ブランドを取り巻く様々なステークホルダーとの交渉は、非常にエネルギーを使います。担当者は情熱と覚悟をもってその業務にあたれる人でなくては務まらないのです。四六時中、ブランドのことを考え、ブランドを育て、チェックする。自社のブランドが空気のように、自分にとって一番身近な存在であるくらいが望ましいといえるでしょう。

ブランドマネージャーに任命された人は、ブランドに対して情熱があり、コミュニケーションをいやがらず、交渉を厭わない性格だから自分に任命されたのだと自負してください。同時に、ある程度の権限が与えられなくては仕事は進みません。当然ながら他部門の仕事と兼任することは無理なので、ぜひ専任してください。

其ノ五、換言力を磨き、コミュニケーションの達人になれ

私は企業のブランドづくりの現場を垣間見て、常日頃考えるのですが、ブランドマネージャーにとって一番必要な資質は、「換言力」ではないかと思います。換言力とは文字通り、言い換える能力です。「ブランド」はカタカナ言葉であるがゆえにアレルギー反応を示す人も少なからずいることを自覚しなくてはなりません。それでも、自社のブランドを最前線で担う従業員には、ブランドづくりのための考え方や戦略を理解して、実践してもらわなくてはならない。そうしたときに、それぞれの立場の人に伝わるように言い換える必要が出てくるのです。

話す相手の知識量や専門性などに応じて、同じ意味でも相応な言葉を選ぶ。そのためには、相手がその事柄をどの程度理解しているかを、最初の1~2分の会話の中で判断する必要があります。出会って最初の数分で、相手の知識度合いを即座に判断し、その人に合わせた言葉を選べる力、それが、換言力です。

ブランドづくりがうまくいっている企業は、ブランドマネージャーが様々な部署の人とうまくコミュニケーションを取っています。おそらく自然と換言力を身につけているはずです。

ブランドには形がないために、それを捉えることは非常に困難です。そうした捉えどころのないブランドを可視化することを目的に、日経BPコンサルティングでは企業のブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」を毎年実施しています。次回は、この「ブランド・ジャパン」について詳しく解説することにします。

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  • 2017年10月06日
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