企業研究ご長寿企業を支えるロングセラーヒット商品のひみつ(2)
世代を越えて、ひとり歩きするロングセラー商品
- マーケティング戦略研究所 渡辺和博上席研究員
聞き手=内野侑美/文=河村裕介 - 2018年02月05日
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テクノロジーの進化や新たな消費トレンドの出現を背景に、毎年、さまざまなヒット商品が生まれては消え去っていく。しかし、なかには世代を超えて愛され続け、市場をひとり歩きしているような商品もある。今回も、日経トレンディとともに30年、売れる商品とその背後にある消費マインドについて考察を続けてきた日経BP総研 マーケティング戦略研究所の渡辺和博氏に、ロングセラー商品と、それが生んだ世代間共通思想について聞いた。
ロングセラーは、世代を超えた共通言語になる
― 日経トレンディは、毎年「ヒット商品ベスト30」を発表していますね。
渡辺:昨年の第1位は「Nintendo Switch™」でしたが、そのルーツは1983年に発売されたファミコンですから、ある種のロングセラーと考えることができます。Nintendo Switch™は、据置型のテレビモードとポータブル型の携帯モードの両方を1台で楽しめることが新機軸であり、いろいろなところでゲームを楽しみたいものの2台購入するほどの金銭的余裕はないという団塊ジュニア層のファミリーにヒットしました。任天堂のロングセラーには、ゼルダの伝説、スーパーマリオなどがありますが、これらは熟練したゲームファンを楽しませるだけのストーリー性があり、過去30年以上のファンを大切にしながら新機軸を打ち出すことで、世代を超えた共通言語となることができたのです。
老若男女に愛され続けた商品が、新しい動きを巻き起こす
― 長年愛されているゲームといえば「人生ゲーム」があります。
渡辺:人生ゲームは1968年発売なので、今年で発売から50年です。島根県出雲市には、人生ゲームを使った町おこしに取り組んでいる商店街があります。いろいろな世代の人たちが一緒に飲んでいた時に、「そういえばこの町の商店街って、人生ゲームのマス目みたいですね」という話になったのがきっかけだそうです。通常の町おこしイベントは、ステージでイベントを行うことが多いため、会場に人は来るけれど、地元の店の中までお客さんが入ることが少ないというパターンが多いのです。しかし、リアル人生ゲームでは、近隣のファミリーをターゲットに、商店街の店舗を人生ゲームのマスに見立てお店に入ってもらうことを目的にイベントを開催しています。参加者に人生ゲームのルーレットを回してもらい、行先のお店を決め、お店に入って専用通貨のやり取りをしながら、最後にいくら貯まったかを競い合い、商店街の商品券などを商品にして、また来てもらうという仕組みです。人生ゲームを使った町おこしは、2013年に出雲市の平田本町商店街で始まり、山形県、福井県、千葉県など全国に広がり始めています。これは、老若男女、みんなが長年楽しんだゲームがあったから生まれたムーブメントだと思います。
社会学の研究対象になったロングセラー
― 人生ゲームのタカラトミーは、「リカちゃん人形」でも知られています。
渡辺:初代リカちゃん人形が誕生したのは1967年です。現在のリカちゃんは4代目で、時代とともにファッションや体型を変化させてきました。その結果、ロングセラーとして生き残り、日本では「女の子のお人形遊びにはリカちゃん」と人気がひとり歩きしている一因だと思います。日本女子大学の増渕宗一名誉教授は、1987年に「リカちゃんの少女フシギ学」という本を書かれていますが、リカちゃんが愛されて来た理由について、「母親やボーイフレンドも登場し、ストーリー性がある」「可愛い」といった点をあげています。世代を超えた共通概念を生むことで、ロングセラー商品となり、社会学に貢献していることも面白いと思います。
参考: http://licca.takaratomy.co.jp/profile/history.html
第3回に続く>
(第3回に続く)
第3回では「一往復半のコミュニケーションがファンを作る」と題して、話題を巻き起こした老舗企業のWeb戦略などについて聞きます。
プロフィール
渡辺和博
1986年筑波大学大学院理工学修士課程修了。同年、日本経済新聞社入社。日経パソコン、日経ビジネス、日経トレンディなどIT分野、経営分野、コンシューマ分野の専門誌編集部を経て現職。全国の商工会議所等で地域振興や名産品開発の講演・コンサルを実施。
- 2018年02月05日
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連載「ご長寿企業を支えるロングセラーヒットのひみつ」
- (1)ヒットを牽引するのは誰か
- (2)世代を越えて、ひとり歩きするロングセラー商品
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