周年事業周年小ネタ書評(7)
『組織開発の探究』と周年事業の鉄板フロー
- 文=菅野和利
- 2019年04月23日
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労働力人口が減少する中、多様な人材の活用が叫ばれている。子育て中の人、介護中の人、障がいを持つ人、LGBT(性的マイノリティ)の人、外国籍の人……。さまざまな人材を労働市場に取り込もうとする動きが大きくなっている。
多様性の確保は労働力不足を補うだけではない。多様な価値観からイノベーションが生まれ、時代の変化を先取りした製品・サービスを提供できるチャンスが増える。
『組織開発の探究』(ダイヤモンド社)では、この多様性重視の時代にこそ組織開発が必要な理由が述べられている。「多様性とは、いわば『遠心力』のようなもの」であり、「単純に、多様な人を集めただけでは、なかなかチームとしてまとまりません」と断じる。
多様といえば言葉はよいが、いわばバラバラな社員である。考え方も文化も違う社員をまとまるためには何が必要か。「『遠心力』の働く組織では、それに対して抗う力、すなわち『求心力』が必要になります」。遠心力が働きがちな現代の組織において、求心力を生むための方法論となるのが組織開発だ。
組織開発の“鉄板”ステップは周年プロジェクトに似る
理想的な組織では、各メンバーが自発的にコミュニケーションを取って的確に動き、共通の目標をかなえていく。組織開発は、「あの手この手を使って組織としてworkさせる意図的な働きかけ」である。組織開発の具体的なステップを通じて、社員に「求心力」を取り戻す試みといえる。
組織開発にはさまざまな手法があるが、“鉄板”ともいえる3つの共通ステップがあるという。「ステップ1:見える化」「ステップ2:ガチ対話」「ステップ3:未来づくり」だ。見える化で課題を可視化し、ガチ対話で腹をくくって話し合う。そして未来づくりで1つの合意を得る。課題が明確になっていなければ、腹を割って話しようがないし、本気で話さなければ合意は得られない。これらのステップはどれも省けない。
見える化、対話、未来づくり――この3ステップは、周年事業の4つのフローに実によく似ている。周年プロジェクトの“鉄板”フローは「しらべる」「きめる」「つくる」「つたえる」の4つ。まず「しらべる」で見える化を行う。「きめる」では対話や議論で針路を定める。「つくる」では方針に沿ったコンテンツをつくる。未来を見据えたコンテンツをつくるのがポイントだ。「つたえる」ではステークホルダーに効果的に届ける。
プロジェクトに成功した後の変化も似ている。組織開発に成功すると、社員は変化する。自分事として仕事の成果や組織の在り方を考えるようになる。これは、周年事業にもそのまま当てはまる。周年事業に成功すると、社員は変化する。自分事として仕事の成果や組織の在り方を考えるようになる。
組織開発も周年事業も、組織を強くするための登山ルートの一つといえる。どのルートを登っても、理想の組織に到達すれば、見える頂上は同じなのかもしれない。社員は自発的に動き、コミュニケーションも良好で、成果も上がる。頂上で見える景色は等しく素晴らしいに違いない。
本書の特徴は組織開発の源流の紹介だ。哲学者デューイやフッサール、フロイトなど、彼らの思想がどのように受け継がれて組織開発となったのか解説している。さて、写真は誰でしょうか。デューイ? フッサール? フロイト?本書の中で顔写真を掲載(ネットの画像検索でも出てくる)。
- 2019年04月23日
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