先人たちの思いを受け継ぎ未来を描く

全員参加で制作した三好不動産の70周年誌

2022.11.11

周年事業

  • コンテンツ本部 ソリューション2部 鷹野 美紀

三好不動産は、福岡市に本社を置く不動産企業だ。福岡市とその近郊において、賃貸管理、賃貸・売買仲介、資産運用のコンサルティング業務などを行う。近年は首都圏への進出も果たし、全国の不動産会社へのコンサルティングも行っている。同社が70周年記念事業の一つとして、周年史の制作を日経BPコンサルティングに依頼をしたのは2020年春のことだった。「お客様も従業員も“家族”」という企業風土をベースに未来に意識を向けた周年史『all for family 感謝をつないで そして未来へ 1951-2021 三好不動産70周年史』はどのように誕生したのか。文=鷹野美紀


画像:三好不動産の70周年誌 表紙

三好不動産の70周年誌 表紙

企業文化の理解から制作をスタート

周年史制作は、キーパーソンヒアリングからスタートした。社長、副社長、取締役など、その企業の経営層に、自社の歴史や強み、将来像について個別に取材をするものだ。三好不動産では、中堅層にもインタビューを行い、会社に抱いているイメージや会社と自身の未来像について語ってもらった。これらが直接誌面に登場することはない。しかし、周年事業を成功に導くには必要な工程となる。「社長や副社長などのスケジュール調整に苦労をした。にもかかわらず、周年史の誌面には掲載されないと聞き、最初は戸惑いを感じた」と、70周年記念プロジェクト 社史・広告宣伝分科会の松田直樹氏は、苦笑いしながら当時を振り返る。

日経BPコンサルティングでは、ヒアリングを含め様々な資料を基に「外部から見た」企業像を構築したうえで制作に取り掛かる。企業に脈々と流れる歴史的背景に基づいた文化、目に見えない空気感を知ることは、周年誌制作にあたって欠かせないプロセスとなる。キーパーソンヒアリングを行って得た経営層の“言葉”を整理して分類すれば、具体的で一貫性のあるブランドコンセプトを持つ成果物に仕上げられる。三好不動産において、最も多く登場したキーワードは「家族」だった。同分科会のメンバーの一人で、広報課のシニアマネージャーを務める齊藤寛氏は、これまで多くの媒体に関わってきた中で、この手法は目からウロコだったと話す。「どういう企業なのかを土壌から理解してから制作に入るというプロセスに感心させられた。これなら、当社ならではの味を出せると確信し、依頼して良かったと安心できた」(齊藤氏)。

ひと工夫を施した表紙の画像
ひと工夫を施した表紙の画像

ひと工夫を施した表紙。70の「0」の部分を開けて、次ページの見開きのイラストが見えるようにしている

先人への感謝とともに企業文化を振り返ったレジェンド座談会

キーパーソンヒアリングとその後の編集会議を経て確定した周年誌の方向性は、

  • 「家族」というキーワードを意識しつつ、過去、現在、未来の3つのパートに分ける
  • 「過去」パートでは、会社の歴史と、先人たちの苦労、顧客や社員への感謝の思いを残す
  • 「現在」を伝えるために、全部門の仕事内容のほか、450人に及ぶ社員の顔写真を掲載する
  • 歴史、企業文化を基に未来志向のコラムを作成する

だった。

そもそも同社は、創業からの約60年を振り返った書籍『変革の歴史を礎に 超・不動産宣告』を2009年に発刊している。創業者である三好茂一氏とその一族によって三好不動産が成長し、全国規模の不動産企業へと成長するまでを記したファミリーストーリーだ。しかし、松田氏は「入社時に配られたものの、実は読んだことがなかった」という。327ページにも及ぶ長編は、若手社員にとっては気軽に読めるものではなかったのだ。

そこで今回制作する70周年史においては、歴史はコンパクトにまとめ、その代わりに三好不動産に25年以上勤めるレジェンドたちが、年表からは伝わらない三好不動産の歴史、家族のような絆を語り合う座談会形式のコラムを設けた。バブル崩壊やリーマン・ショックのほか、グループ企業の統合を経て再スタートを切った2007年を振り返りつつ、かつての社長のリアルな言葉がけや、同社の目に見えない企業文化、魅力を伝えたかったからだ。

座談会に同席した分科会の若手メンバーたちは一様に、「当時の苦労を改めて聞き、大変さを知ることができて良かった」と口をそろえた。「苦難の時代に勤めていた方が退職する前に、当時の話をきちんと聞いて、社史に残しておきたかった。それをかなえられたのがうれしい」。振り返った齊藤氏の表情は満ち足りていた。

冊子の見開き画像

入社25~30年の“レジェンド”に集まっていただき、年表には表れない影の苦労や、当時から脈々と受け継がれている三好イズムについて語ってもらった

コロナ禍でもあえて全社員を動員し、深まった絆

周年史の制作において、分科会のメンバーが最も苦労したのが「現在」のパートだった。各部門の業務内容の紹介に加えて、約450人の社員の顔写真と、「2051年に迎える100周年の時、三好不動産はどうなっている?」という問いかけに対する回答をまとめた。全員参加の28ページに及ぶパートだ。撮影は福岡と東京、横浜において、計5日間に分けて実施した。新型コロナウイルスの感染拡大のあおりを受けて延期はあったものの、タイトスケジュールの中、決行した。

「全社員に“ジブンゴト”として社史に関わってもらいたいと思った」と語る松田氏の思惑通り、周年史ができあがり、各自の手元に届いた時、多くの社員が自分のページを開き、喜びの声を上げたという。「コロナ禍で社員同士ですら顔を合わせる機会が減っていた。そういうタイミングでの撮影だったため、久しぶりに仲間に会えてうれしそうな顔が見られた。苦労は多かったが達成感があった」と、林田直樹氏も絆の深まりを感じたという。

冊子の見開き画像

各部門の業務内容を紹介し、そこに所属する人たちの顔写真とコメントを掲載

70年の歴史を経て、そして未来へ

そもそも三好修代表取締役社長が日経BPコンサルティングに周年史の制作を依頼した理由の一つが、「未来年表の作成」というメニューがあることだった。各業界の動向を30年先まで知ったうえで、自社の未来像を描くというもの。三好不動産においては、全社員の中から年齢や部署を越えて選ばれた約30人のメンバーが集い、5グループに分かれて7時間にわたるディスカッションを行った。こうして出来上がったのが、三好不動産の未来年表だ。

冊子の見開き画像

30人のメンバーで語り合い、つくり上げた三好不動産の未来をイラスト化して掲載

「全管理物件がスマートホームになる」「海外フランチャイズを展開」「家事代行ロボット付きの物件の賃貸を始める」といった、近い将来に実現する可能性が高いことをベースに、「100周年を迎える時には未来型スーパーシティ『MIYOCity』を完成させる」といった壮大なプランが描かれている。参加者は「参加できてよかった」「未来を描けて楽しかった」という声があがったという。三好社長が自らディスカッションの場を訪れ、社員たちが活発に議論を交わす様子をうれしそうに見学するひとこまもあった。今後は、この未来年表に触発された社員たちが新しい時代の三好不動産を築いていくことだろう。

周年史の制作を終えて、振り返りのために分科会のメンバーにインタビューを行った。日ごろの業務に加えてこれまでに経験のない難題を課され、苦しい日もあったという。しかし「感謝をつないで、そして未来へ」という、過去をベースにした未来志向の周年史を制作するぶれない軸があったから前に進めた。「これまでにない達成感を得られた。胸を張って誇れる周年史ができあがった」と語る彼らの表情は明るかった。

三好不動産の皆さんの写真

周年史の制作に関わった三好不動産の皆さん。
前列がリーダーの松田直樹氏。後列左から、三好悟氏、齊藤寛氏、林田直樹氏

株式会社 三好不動産

福岡市に本社を置く不動産企業。福岡市を中心に、賃貸管理、賃貸仲介、テナント仲介、売買仲介などの不動産事業を展開するほか、資産運用のコンサルティング業務なども行う。2016年には東京にも進出を果たしている。

創立: 1951年7月3日

本社: 福岡県中央区今川一丁目1-1

事業内容: 賃貸不動産管理業、不動産の売買・賃貸およびその仲介業、宅地の造成・分譲および建売業、不動産有効利用コンサルタントおよび経営企画など

従業員数: 480人