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周年事業80周年を機に100周年への布石を打つ

“自分の会社に惚れ直す”富士工業グループ80周年史

  • 文=鷹野美紀
  • 2022年08月08日
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“自分の会社に惚れ直す”富士工業グループ80周年史

中小企業白書2011によると、起業してから「10年後には約3割の企業が、20年後には約5割の企業が撤退」している。周年事業を行うことは、いわば、熾烈な生存競争を生き残ってきたことの証しだ。その一方で、会社の歴史が長くなると、「創業者の想いや会社の理念は従業員に伝わっているのか」「従業員たちは自社の強み、本当の魅力を理解できているのか」「未来への展望は社内に浸透しているのか」といった悩みを抱く経営層もいるだろう。周年事業は、会社の軌跡をたどり、一体感の向上に生かすまたとないチャンスだ。2021年に80周年を迎えた、レンジフードのリーディングカンパニーである富士ホールディングス(以下、富士工業グループ)は、周年史の制作を通じてまさにこれらを体現させた。周年誌の制作を担当した同社コミュニケーションデザイン部の佐藤美夕紀氏と、総務部の佐藤仁美氏に話を聞いた。

自社の歩みや魅力を再発見できる周年史を

―富士工業グループはレンジフード(家庭用キッチンの換気扇)の生産において国内シェア第1位を誇る、リーディングカンパニーですね。どのような課題を抱えていたのでしょうか。

当社は、レコードの原料であるマイカ粉(雲母粉)の製造からスタートし、テレビ用メタルキャビネット、家庭用厨房機器へと変遷をたどり、レンジフードの専業メーカーに成長。1994年からは新たな市場を求めて海外にも進出しました。ここ数年は、独自技術を応用して、業務用レンジフードや空気清浄機の分野にも進出し、事業拡大を推し進めています。ただ、成長するにつれ、会社が歩んできた苦難の歴史に対する理解が薄れ、業務や部門が多岐にわたるようになって、かつてのアットホームな雰囲気が徐々に失われていくのではと危惧していました。

―80周年事業は、まさにそんなタイミングに重なったのですね。

2019年に周年事業をスタートさせました。その一環として制作する周年史を通して、社員たちに会社の歴史や文化を伝えたいと考えたのです。しかし、歴史だけを盛り込んだ周年史では、配布された時は読んでも、書棚にしまったら二度と読み返されなくなってしまう。日々の業務で悩んだ時など、折に触れ何度も読み返したいと思える周年史を作りたいというのが私たちの考えでした。

2018年、富士工業は「空気を変え、環境を変え、明日を豊かに変えていく」というビジョンのコーポレートブランド「FUJIOH」を策定し、社内外に快適な環境づくりを追求する企業であることを宣言した

―いくつかの制作会社に企画の提案を打診されたそうですが、日経BPコンサルティングを選ばれた理由は何でしょうか?

御社から提案された“自分の会社に惚れ直す”というテーマと、それにひもづいた具体的な企画案から、出来上がりをイメージできたからです。特に“自分の会社に惚れ直す”は、まさに私たちが求めていたコンセプトでした。歴史のパートでは会社の歩みを振り返りつつ、現在の当社とその魅力を俯瞰的に見つめ直すパートや、未来に向けたメッセージを発信できるパートなどがあったことが選定のポイントとなりました。

―80年の歴史を、4人の社長の在任期間で区切り、年表を含む22ページにまとめました。周年史発行後に実施なさった社内アンケートでは、「印象に残ったページ」として第1位だったとか。

はい。実は20年前に60周年を迎えた際、読み物風の周年史を制作したのですが、分厚く、文字が多くて、気軽に読めるタイプのものではありませんでした。80周年史では、これをベースに、会社としてターニングポイントとなった出来事にフォーカスしてコンパクトにまとめられたので、とても読みやすい内容となりました。「自分が入社する前の会社を垣間見ることができた」「レンジフードの生産をするようになった以前の取り組みや、先輩たちの努力を改めて知ることができた」といった声も上がり、周年事業担当者としてうれしく思っています。

80年の歴史を4人の社長の任期ごとに区切り、それぞれを「草創期」「成長期」「海外進出期」、そして現在の「飛躍期」に分けて紹介

従業員参加型のコラムで、これまでを振り返り、未来につなぐ

―従業員の方々にもご協力いただいたコラムもありました。反響はいかがでしたか?

経営理念に「全員参加の手づくり感動経営!」を掲げている当社は、日ごろからアットホームな会社だなと感じていました。しかし今回、全従業員を対象に「忘れられない感動エピソード」を応募し、その一部を掲載しては?と御社から提案され、実施してみたところ、思いのほかたくさん集まったことに驚きました。東日本大震災の時に前社長から声をかけていただいた時のエピソードや、失敗をしたときに上司がかばってくれた思い出話などもあり、改めてすてきなエピソードにあふれる良い会社だなと、私たち自身も“自分の会社に惚れ直す”ことができました。紹介しきれなかったエピソードは、社内報でも掲載しています。

もう一つの社員参加型企画は、「FUJIOHの次の20年を考える」です。若手から中堅の社員の一部を集め、未来の自分たちと会社について、理想を語り合うワークショップを行い、その様子をレポートしました。普段関わることがないメンバーと会社の未来について考えるような機会はこれまでありませんでしたが、活発な意見交換ができ、それぞれ異なる想いを伝える場となったのは、周年事業ならではだったと感じています。

―他にも、従業員アンケートで好評だったコラムはありますか?

当社の現在を支える革新的なコア技術の開発ストーリーをまとめた「オイルスマッシャー誕生のものがたり」は、社内アンケートでも好評で、取材に立ち会った私自身もとても印象に残るコラムとなりました。開発から改良、生産、販売に至るまでの、まさに血のにじむような努力と、実現に向けて託したバトンリレーをまとめた開発秘話で、計13人の従業員を取材いただきました。当社の従業員は技術職が多く、寡黙な人が多いのですが、丁寧な下調べをしたうえでインタビューしてもらったおかげで、私も知らなかった話を聞き出し、記事にしてくれました。このコラムは、当社に脈々と受け継がれてきたDNAそのもので、大きな財産になったと感じています。

―80周年史は貴社においてどのような存在となりましたか?

当社は1973年にレンジフード第1号を完成させて以来、「レンジフードの富士工業」でした。しかし、数年前から業務用レンジフードのほか、空気清浄機などにも事業を拡大し、これからは「空気環境を変えるFUJIOH」としてスタートを切りました。100周年に向けて、今後の20年は大きな転換点となるでしょう。そのタイミングで、過去を振り返りつつ、自社の魅力を再発見し、未来を考える周年史を制作できたのは大変喜ばしいことです。ここを再出発点として、新しい物語を生みだせるのではと楽しみです。

富士ホールディングス株式会社 コミュニケーションデザイン部 佐藤美夕紀氏(写真左)。白河事業所 総務部 佐藤仁美氏(右)。相模原本社と白河事業所で密に連携を取り80周年史を完成させた

富士ホールディングス株式会社

厨房用電気製品メーカー。国内におけるレンジフードシェアNo.1を誇る。OEMとして販売するほか、自社ブランド「FUJIOH」で一般家庭用・業務用の換気扇、換気扇用レンジフード部材などの生産・販売を行っている。1941年、株式会社日本マイカ工業所として創立。47年、商号を富士工業株式会社に変更。2009年、富士ホールディングス株式会社設立。

創立:1941年12月
本社:神奈川県相模原市中央区淵野辺2-1-9
事業内容:厨房用電気製品の生産、販売
従業員数:886人

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