周年事業ラボ>周年事業>常識をくつがえす社史・周年史とは?

周年事業企業ブランディングのための社史・周年史の教科書(3)

常識をくつがえす社史・周年史とは?

  • 文=大塚 葉(日経BP社カスタム事業本部)
  • 2017年07月28日
  • Clipボタン
常識をくつがえす社史・周年史とは?

前回では、社史・周年史が企業のブランディング、リクルーティング、マーケティングに役立つ戦略的なツールになる、というお話をしました。今回は戦略的な社史・周年史をつくるために、これまでの発想を変えた新しいコンテンツをご紹介していきます。

これまでに見たことのない社史・周年史のコンテンツ、常識をくつがえすようなコンテンツにはどんなものがあるのでしょうか。5つの例を見ていきましょう。

常識をくつがえす!(1) 過去だけでなく未来を語る

社史・周年史の制作

単なる記念に終わらない戦略的な社史・周年史とは?

日経BPコンサルティングの制作する社史・周年史は単なる企業の歴史紹介ではありません。貴社の未来を描くための戦略的なご提案をします。

>>社史・周年史制作のご案内

「御社の『未来年表』をつくりませんか?」。ある企業の50周年史を制作する際に、こんな提案をしました。社史・周年史に年表を入れるのはふつうですが、たいていは「過去の年表」です。しかし社史・周年史を企業の未来予想図と考えるなら、未来の年表があってもいいはずです。同社のトップは、この周年史で過去50年を振り返りつつ「今後50年の成長戦略を描いていきたい」と考えていました。そこで、これからの50年を予測した「未来年表」を提案したのです。

実際にその年になったとき、年表の内容が実現しているかどうかは分かりません。しかし重要なのは「企業の未来のあるべき姿」をトップと社員が一緒に議論し、イメージすることなのです。「何年か先にこの年表を見ながら、皆さんで『答え合わせ』をしてはどうでしょう」と提案したところ、「面白いですね」ということで制作に踏み切りました。

常識をくつがえす!(2) 社員が楽しみながらつくる

「社史・周年史の担当を任されて、困った」「資料を集めるのが面倒だ」という声がよく聞こえてきます。社史・周年史を企業の記録と考えれば、コツコツと資料を集めて地道に制作する必要があります。もちろんそれも、とても重要です。しかし、社史・周年史制作の目的をインナーブランディングと考えるなら、参加するメンバーができるだけ楽しみながらつくることもポイントの1つです。

あるBtoB企業では、周年を迎えたときにトップが「なるべく、うちの会社らしくない周年史をつくってほしい」と担当者に話しました。この結果、年表を双六にしたりまんが仕立てにしたりする、などのアイデアが現場からたくさん出てきました。またあるITソリューション会社では、周年事業として、Webサイトを利用した「会社クイズ大会」を開催。同社の歴史や経営者のメッセージ、1カ月後の売上予想などを出題し、正解者はWeb上で発表し特典を与えるなど、社員皆が楽しみながら企業の歴史や理念を知る機会をつくることに成功しました。

社史・周年史のコンテンツを決めるために社内で交流会を行ったり、その様子を社史・周年史に掲載してもよいでしょう。社史・周年史の制作過程を、社内コミュニケーションの活性化に役立てることができるのです。

常識をくつがえす!(3) 「社長をあとまわし」にする

「最初のページに、社員の皆さんの笑顔の写真を入れましょう」。創業70周年を迎えるある企業にこう提案したとき、担当者は最初「うーん」と考え込みました。冒頭のページには、会長や社長のメッセージを掲載するのが常套手段です。しかしこの企業は、男女を問わず営業員が非常に元気で、どの支店に行っても明るく感じがよかったのが印象的でした。彼ら・彼女たちの笑顔こそがこの会社の「強み」ではないかと感じて、この提案をしたのです。

のちに担当者から上長のOKが出たと連絡があり、この企画を実現できました。社長のメッセージを掲載したのは、20ページ目。明らかに「社長はあとまわし」にした企画でしたが、結果的には社員の明るい笑顔が誌面の冒頭を飾り、発行後も各方面から好評とのことでした。「後半での登場」を受容した社長も、懐が深かったと感じています。

最近では、このように「社員を主役」にした提案を多くしています。インナーブランディングという意味では、企業の未来を支えていく社員たちの「今」を切り取って見せることも大事です。社員に関係する記事を掲載すると、その家族や友人も楽しみながら読めるという効果も期待できます。

常識をくつがえす!(4) 企業にとって「不都合な事実」も書く

「弊社のあの事件を、隠さずに書いていただけますか」。ある企業の担当者からこの言葉を聞いて、驚くとともに感動したことがあります。

上場廃止、民事・刑事事件、様々な係争での敗訴──。企業にとって「あまり書きたくない負の歴史」はあるものです。これまでの社史・周年史では、こうしたことをできるだけ伏せて記録する傾向もありました。しかしすでに公表されていることなら、事実をきちんと記事にしてまとめることが、その企業の未来にとって必要な場合もあります。

冒頭の企業のトップは、「弊社にとって不名誉な事件だったが、周年を機に社員やステークホルダーともしっかり共有し、未来に向かいたい」と語りました。社史・周年史で企業にとっての「不都合な事実」をあえて掲載するのも、企業の成長戦略になるのです。

企業の歴史や沿革は、創業者や社員がいちばんよく知っています。しかし前述のように企業の真の姿を描き出すには、第三者の視点で客観的に分析することも必要です。それが、読者であるステークホルダーの納得感や信頼感を得ることにつながります。業界に詳しい有識者へのインタビュー記事、専門のジャーナリストによる取材記事などを入れるとよいでしょう。有識者やジャーナリストに関しては、外部のプロがネットワークを持っているので依頼してみましょう。

常識をくつがえす!(5) 1冊ずつ違う内容でつくる

会社からもらった社史・周年史に、自分宛てのメッセージが入っていたらどうでしょう?社史・周年史は、同じものを何千部、何万部と制作し配布するのが一般的です。しかし、社員一人ひとりに合わせたコンテンツが掲載された社史・周年史が配られたら──。もらったほうも嬉しいし、大事に取っておきたい気持ちになるでしょう。

少部数なら、「1冊ずつ違う仕様」の社史・周年史を制作することができるのです。「バリアブル印刷」という手法を使うと、1冊ずつ異なる内容を印刷することができます。東京医科歯科大学では、約300人の学生の名前を一人ひとり印刷し、配布しました。「社長から社員一人ひとりにメッセージを伝える」誌面をつくることもでき、インナーブランディングには非常に有効です。

1冊ずつではありませんが、あるコンサルティング会社で制作した50年史では表紙の色を赤、オレンジ、緑など6種類印刷しました。社員にランダムに配布し、「なぜ隣の人と違う色なのか」と話題になることを期待したそうです。このように、社史・周年史を「大切に取っておきたい」「何度も読みたい」と思わせるつくり方をすることも重要です。

これまでの社史・周年史の常識をくつがえす、5つの方法をご紹介しました。次回はさらに5つをお話ししていきます。

プロフィール

大塚 葉

日経BP社 カスタム企画部 担当部長
雙葉高校、早稲田大学法学部卒。技術評論社でPC入門誌「パソコン倶楽部」、日本初の女性向けPC誌「パソコンスタイルブックforWomen」を編集長として創刊。日経BP社では「日経PCビギナーズ」編集長、発行人を務める。「日経ビジネス」「日経WOMAN」「日経ビジネスアソシエ」のWebサイトのプロデューサーとして、深澤真紀氏、白河桃子氏などのヒット連載を企画。初心者向けIT、働く女性、仕事術についての執筆・講演多数。著書に『やりたい仕事で豊かに暮らす法』(WAVE出版)、『ミリオネーゼのコミュニケーション術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

  •  
  • 2017年07月28日
  • Clipボタン

情報を受け取る

本サイトのコラム更新情報や調査データや分析結果を受け取ることができます。登録は無料です。
  • ・関連セミナー情報
  • ・企業研究・サバイバル分析報告
  • ・調査データ
  • 周年事業関連情報
  • など、豊富な関連情報をメールでお届けします。

情報を受け取るkeyboard_arrow_right

周年事業ラボ>周年事業>常識をくつがえす社史・周年史とは?