周年事業企業ブランディングのための社史・周年史の教科書(2)
戦略的な社史・周年史が企業の未来を変える
- 文=大塚 葉(日経BP社カスタム事業本部)
- 2017年07月28日
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前回では、「社史・周年史に関する発想を変えよう」という話をしました。これまで「企業の歴史の記録だった社史・周年史」を、「企業の未来が見える社史・周年史」に変えるのです。こうした社史・周年史をつくれば、ブランディング、リクルーティング、マーケティングなどに役立つ戦略的なツールになります。
今回は、社史・周年史を企業の戦略的ツールにする方法を見ていきます。まずは、社員に企業の価値や目指す姿などをしっかりと理解し共有してもらう、インナーブランディング。社史・周年史の制作は、このインナーブランディングに最も適しているのです。
インナーブランディングは「社員を巻き込む」
単なる記念に終わらない戦略的な社史・周年史とは?
日経BPコンサルティングの制作する社史・周年史は単なる企業の歴史紹介ではありません。貴社の未来を描くための戦略的なご提案をします。
社史・周年史を上手に活用すれば、「創業の頃の思いを社員と共有する」「企業理念を浸透させる」「DNAを継承する」「社員のモチベーションを上げる」「会社への帰属意識を高める」などが実現できます。これを実現するキーワードは、「社員を巻き込む」こと。具体的な企画を見ていきましょう。
①経営者と社員が一緒に話す
経営者が企業理念や創業の思いを伝えるときは、一人で話すのではなく「社長と若手社員の座談会」などを開催し、記事にしましょう。社員はトップの生の声を聞くことができ、参加することで会社の未来を「自分事」と考えられるようになります。トップも現場を知る、いい機会になるでしょう。
②社員の参加を促す施策を考える
「周年だったことを知らなかった」という社員が出ないよう、社史・周年史の制作は社員参加型のプロジェクトにすべきです。周年への思い、会社に望むことなどについて社内アンケートを行うのも一つの方法です。
③誌面に社員を登場させる
例えば企業の各支社や支店での社員の集合写真を撮影し、掲載するのも効果があります。撮影時も社史・周年史ができてからも、社員にとって大事な思い出になるでしょう。
アウターブランディングは「企業の魅力を伝える」
取引先や消費者など、顧客に対して企業価値を知ってもらうのがアウターブランディングです。これまで社史・周年史は、一部の関係者にしか配布しない場合がほとんどでしたが、このトレンドに変化が起きています。社史・周年史によって「取引先に日頃の感謝の気持ちを表したい」「ステークホルダーに会社の方針を伝えたい」「消費者に商品やサービスをもっと知ってほしい」といったことが実現できるようになります。このためには、誌面で「企業の魅力を伝える」工夫が必要です。具体的な企画として次のようなものが考えられます。
①感謝の意を伝え、関係を強化する
日ごろお世話になっている取引先には、社史・周年史の企画段階から連携することが大事です。事前に企画を伝えてメッセージをもらったり、取材をして記事を掲載したりすることも検討しましょう。
②企業のビジョンと未来を見せる
取引先と今後も信頼関係を保っていくために、経営者のビジョンや未来の展望をしっかり伝える必要があります。過去だけでなく、未来を語るコンテンツを入れましょう。
③見栄えも大事にする
多くのステークホルダーの目に触れるということもあり、誌面デザインも工夫しましょう。
リクルーティングは「広く世間に訴求する」
神奈川県立川崎図書館は、企業の社史・周年史を約1万8000点収蔵する全国でも有数の図書館です。ここには、企業の社史・周年史担当者のほかに、多くの学生も訪れます。就職先を考える際、その企業の歴史や文化を研究するためでしょう。つまり企業にとって社史・周年史は、学生にアピールするための強力なツールになりうるのです。すでに、社史・周年史を採用活動に役立てている企業も増えています。リクルーティングに活用するために「広く世間に訴求する」ことを工夫しましょう。
①業務内容を分かりやすく伝える
企業によっては業務内容が分かりづらい、認知度が低い、という課題を抱えているところもあるでしょう。こうした場合に、社史・周年史を利用して学生に業務内容を分かりやすく伝える方法があります。後述しますが、こうした社史・周年史は、書籍などの形で市販するのも効果が期待できます。
②社員の姿を見せる
その企業に入社するとどんなキャリアを描けるかを学生たちに伝えるため、様々な年代、部署の社員のインタビュー記事などを掲載するのもよいでしょう。
③広い世代に読めるものにする
企業の業務内容を、学生の親や教育関係者に伝えたい場合もあります。また小学生、中学生といった若い世代に向けて企業の認知度を上げたい場合もあるでしょう。こうしたニーズにも、社史・周年史を活用できます。
社史・周年史の制作は企業を強くする大きなチャンス
社史・周年史はもはや「歴史の記録」ではなく、「戦略的ツール」になりうるということがお分かりいただけたかと思います。これからの企業ブランディングに活用しない手はありません。
社史・周年史というと、以前は「社史編さん室」のような部署でコツコツと地道に制作する、というイメージがありました。どちらかというと地味な作業で、花形の業務ではないと考えられていたかもしれません。しかしこれからの社史・周年史に求められているのは、企業の未来を描き出すことです。社史・周年史の制作と発行は、企業を強くする大きなチャンスなのです。社史・周年史の制作に携わることで、その企業の歴史や創業者の思い、経営者のメッセージなどを改めて確認することができます。
制作にあたっては、各部署から写真などの資料を提供してもらったり、取材の依頼をしたりするなど、様々な部署との連携が必要になります。社内のネットワークを広げる、いいきっかけにもなります。社史・周年誌制作は周年事業の一環として行われることも多いので、会社の節目のタイミングで制作に参加することは、自社を知りともに成長するための千載一遇の機会なのです。
そして、社史・周年史を企業の戦略ツールにするためには、これまでにない発想が必要です。「社史・周年史は過去の記録ではなく、企業の未来予想図」という考え方で、企画・制作にあたるべきなのです。次回はこうした発想のもとに、これまでの社史・周年史の制作では取り入れられていなかった新しい考え方や企画を紹介します。
プロフィール
大塚 葉
日経BP社 カスタム企画部 担当部長
雙葉高校、早稲田大学法学部卒。技術評論社でPC入門誌「パソコン倶楽部」、日本初の女性向けPC誌「パソコンスタイルブックforWomen」を編集長として創刊。日経BP社では「日経PCビギナーズ」編集長、発行人を務める。「日経ビジネス」「日経WOMAN」「日経ビジネスアソシエ」のWebサイトのプロデューサーとして、深澤真紀氏、白河桃子氏などのヒット連載を企画。初心者向けIT、働く女性、仕事術についての執筆・講演多数。著書に『やりたい仕事で豊かに暮らす法』(WAVE出版)、『ミリオネーゼのコミュニケーション術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
- 2017年07月28日
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連載「企業ブランディングのための社史・周年史の教科書」
- (1)こんな社史・周年史は読まれない!?
- (2)戦略的な社史・周年史が企業の未来を変える
- (3)常識をくつがえす社史・周年史とは?(前編)
- (4)常識をくつがえす社史・周年史とは?(後編)
- (5)制作パートナーを探して編集体制を整える
- (6)発行目的にしたがい、ページ数やデザインを決める
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