145周年事業として周年絵本『タイヘイ図鑑』を発行

タイヘイグループ全体の理解を深めるツールに

2025.06.27

周年事業

  • 市本 祐喜子

    ブランド本部 ブランドクリエイティブ部 兼 大学ブランド・デザインセンター市本 祐喜子

創業145周年を迎えたタイヘイ株式会社。食品事業、印刷事業、金融事業など多角的な事業を展開する同社が、周年記念誌として選んだのは“絵本”だった。周年を契機に、従業員一人ひとりがグループ全体への理解を深めるツールを制作するという目的の達成には、周年仕様の絵本が最も適していると判断した。従業員とその家族に分かりやすく伝わる周年絵本が生まれた背景とその効果について、取締役であり総務部長の河野利之氏と、広報を担当する田原結香氏と松本まゆ氏に話を聞いた。聞き手=市本 祐喜子 文=脇山 誠司 写真=井上 裕康

「145周年の節目に、グループ全体を可視化する」

145周年という節目に、どのような目的で『タイヘイ図鑑』を選ばれたのでしょうか?

河野 2025年に145周年を迎えるにあたり、「タイヘイグループの全体像が従業員に伝わるような、事業内容への理解が深まるツールを制作したい」という想いがありました。新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年に迎えた140周年の節目は十分に祝うことができなかったこともあり、145周年では従業員同士のつながりや、事業内容への理解が深まるような施策をしたいというのが最初の動機です。

タイヘイグループは、食品事業、印刷事業、金融事業と多角的に事業を展開しています。それゆえ他の事業部門の業務内容や、グループの全体像が見えにくく、「グループ全体の中で、自分が所属する部門の立ち位置が分かりにくい」といった意見もありました。そうした課題を視覚的に面白く解決するツールとして、周年仕様の絵本『タイヘイ図鑑』のアイデアが浮かびました。

タイヘイ株式会社 取締役 総務部 部長
河野 利之 氏

「絵本作家によるイラストと図解で視覚的に理解する」

実際には、どのような企画内容・誌面構成で制作が進んだのでしょうか?

田原 『タイヘイ図鑑』は32ページの誌面構成で、各事業部門の特徴や商品・サービスを紹介しつつ、それらがどのように地域社会や生活者と密接につながっているのかという観点で分かりやすく描いています。イラストと図解による解説に加え、文章も平易な表現を心掛けました。全体の構成についても会社全体のつながりを意識できるように工夫しています。

最も象徴的なコンテンツは、グループ会社を架空の島で表現した「タイヘイグループ」というページです。80数社におよぶグループ会社の広がりや、その関係性を一望できるようにしたことによって、従業員から「グループの全体像を理解することができた」とたいへん好評でした。

タイヘイの商品やサービスが社会のあらゆる場面で活用されていることがひと目で分かる絵を実現

『タイヘイ図鑑』を配布した後の社内の反響はいかがでしたか?

田原 従業員向けのアンケート結果では、9割以上の従業員が「分かりやすかった」と回答してくれました。特に多かったのは、「他の事業部に興味をもった」「自分が所属する事業部の立ち位置が分かった」「グループ全体への理解が深まった」という声です。また、家庭に持ち帰った従業員からは「家族が見て、会社の仕事を理解してくれた」「子どもが手に取りやすい絵の雰囲気がとても良いと思いました」という感想も寄せられ、従業員と家族とのつながりにも貢献できたのではないかと思います。

タイヘイ株式会社 総務部 広報課
田原 結香 氏(右)、松本 まゆ 氏(左)

「社外評価にも貢献、小学校や図書館への寄贈も検討」

社外に向けての活用方法なども教えてください。

河野 『タイヘイ図鑑』は従業員向けに配布しただけでなく、顧客や取引先にも積極的に展開しました。当社と新たに関わる方や、タイヘイグループ全体の事業内容にまだ馴染みのない方にとっては、「この1冊でグループ全体の事業内容や、貴社の特徴がとても分かりやすく理解できる」と評価されました。

これまで伝わりづらかった現場の雰囲気や働く人々の姿がイラストを通じて視覚的に理解できるので、「イラストの細部の描写が素晴らしくて、見ているだけで楽しい」といった感想もいただいています。単なる会社紹介ではなく、読者に向けて食の大切さを伝え、それを支える企業姿勢も伝わる点が、当社への信頼感につながっているのだと思います。

今後は、リクルーティングに活用するほか、地域の子どもたちに知ってもらうため、小学校や公共図書館への寄贈も検討しています。子どもたちが食を楽しく学べる教材としても機能すると嬉しいです。周年絵本でありながら、世代や立場を越えて会社の価値を伝えるツールとして、さまざまな活用方法を考えています。

『タイヘイ図鑑』の制作を通じて、得られた学びや変化はありましたか?

松本 今回の制作過程を通じて、自社の理解が一気に深まったことです。取材活動のために各事業部の製造工場をまわり、現場のスタッフと対話する中で、当社にはこれほど多様な人材や現場が存在しているのかとたいへん驚きました。

これまでも広報誌の取材や制作に携わってきましたが、今回改めて読者に伝えるためには、まず自分が理解することが大切さだと実感しました。『タイヘイ図鑑』の発行後に、社内から「食育や社会勉強にもなるとても良い本」「他社にはない特別な取り組み」「メディアに取り上げてほしい」といった声が届くたび、リアルな誌面を心掛けてきて本当に良かったと感じています。今回の経験は、今後の広報活動においても大きな財産になると思います。

タイヘイの145周年は、情報を一方向に届けるのではなく、「社会と企業」「企業と従業員」「従業員と家族」を双方向でつなぐツールへと進化した。周年の価値を社内外に広げる新たなカタチを提示することができたといえる。

タイヘイ株式会社

食品、印刷、物流、金融サービスなど、多岐にわたる事業を展開。「食と健康」「暮らしと事業」の両面から、人々の生活を支えるインフラ的存在として、社会課題の解決と豊かな未来の実現に貢献している。1880年の創業以来、時代のニーズに応じて進化を重ね、全国に広がるグループネットワークを生かしたサービスを展開。

創立: 1880年

本社: 千葉県匝瑳市八日市場イ2614

事業内容: 食品製造・販売、印刷・情報処理、物流、金融ほか

従業員数: 2,650名(2024年12月現在)

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市本 祐喜子

ブランド本部 ブランドクリエイティブ部 兼 大学ブランド・デザインセンター
市本いちもと 祐喜子ゆきこ

2000年に日経BP企画(現・日経BPコンサルティング)に入社して以来、大学および企業関連の広報誌、書籍・絵本、社史・周年誌などの企画提案、編集制作に携わる。主な実績は、会社図鑑シリーズ「証券会社図鑑」「航空会社図鑑」「通信会社図鑑」、西武ホールディングス社史「Seibu Holdings 10th Anniversary Book」など。

※肩書きは記事公開時点のものです。