サバイバル分析「周年ライフサイクル」を考える
周年は「迎えた直後」が実は重要
- 文=菅原 研
- 2020年08月04日
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こんなタイトルの記事を読んでいるあなたは、周年事業を終えたばかりの担当者でしょうか。もしそうだとしたら、ステークホルダーや社内の調整、式典イベントの準備や実施、周年史やノベルティの制作など、本当にお疲れさまでした。肩の荷が下りて、やっと一息ついているところだと思います。プロジェクトチームが解散して、元の業務に戻るという方も多いでしょう。
そんなタイミングでこんなことをお伝えするのは大変心苦しいのですが、ゆっくりお休みいただく前に、もうひと仕事しておくことをおすすめします。その仕事とは、次の周年に向けた準備です。
周年事業の課題や問題は過去の「安心」が原因?
周年を迎えたばかりなら、次の周年は5年後あるいは10年後でしょうか。「そんな先のことなんて」と思うかもしれません。ですが、思い返してください。準備を進める中で、事業や製品、サービスに関する情報や資料の不足、異動や退職による当時を知るキーパーソンの不在、周年事業に関する記録の不備による手探りでの作業など、さまざまな課題や問題に直面したはずです。
こうした課題や問題の原因はそれぞれですが、その背景には共通項があります。それは、前回周年を迎えたときに得た知見がその場限りのものになってしまったという点です。周年を迎えた後に「10年に一度のイベントが終わった」と安心して、そのままプロジェクトが終了するケースは多いでしょう。周年は企業にとって一つの区切りなので、どうしても「終わった」と考えてしまいがちですが、企業が存続する限り必ず周年は訪れます。周年事業は一過性の“打ち上げ花火”のようなイベントと捉えるのではなく、「長いサイクルで回していく事業」だと捉えるべきでしょう。
小さな活動の積み重ねが次の周年事業の質を決める
「次の周年に向けた準備」といっても、大掛かりな組織やプロジェクトチームが必要なわけではありません。例えば、周年事業を進める中で不足した資料の種類を洗い出し、「定期的に収集・整理・保管するものを決める」、新事業進出や新製品発売などのターニングポイントでは「キーパーソンを取材して生の声を集めておく」などのアイデアが考えられます。「社員アンケートの実施と同時に周年事業に対する反応を併せて調査する」のもよいでしょう。定期的に社内報や広報誌を発行しているのであれば、「周年事業のための資料的価値」という視点で連載企画を検討するのも有効です。こうした小さな活動を積み重ねるだけで、多くの課題が解消されます。
こうした準備のメリットは、担当者の作業負荷軽減だけではありません。次の周年事業の準備が本格化した際に、コンセプト立案やプロジェクトメンバーの人選、予算割り当て、各種企画の指針、社内意思決定についての判断材料ともなるでしょう。さらに、収集、保管した資料から企業が大切にする理念や伝えていくべきDNAが見えてくるといった、企業経営にとってのメリットも期待できます。
周年事業を総括し、担当者が得た知見も含めたレポートとして残すことも大切です。ここで注意すべき点は、「成果」だけではなく「過程」も記録しておくことです。実現したものの記録は残り続けますが、「検討したけれど実現しなかったもの」「発生した問題をいかに解決したか」の記録が残ることは多くありません。ですが、次に周年事業を担当する人にとって、これらの過程は、回り道を回避する“生きた記録”として有益です。
きっと前回の周年事業を担当した方も、あなたが直面した課題や問題を経験したはずです。そして、あなたが得た知見を残さなければ、次の担当者は同じ課題や問題に直面するでしょう。そんな負のサイクルを断ち切り、周年事業の質、さらには企業価値の向上につなげるチャンスを、周年を迎えたばかりのあなたは手にしています。ぜひ、そのチャンスを最大限に生かしてください。
- 2020年08月04日
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