サバイバル分析変革を迫られる企業(1)
100年続く企業、それには“100回変われる企業への変革”が必要に
- 文=里見 渉
- 2019年10月07日
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「最も強いものでも、最も賢いものでもない。唯一、生き残ることができるのは“変化できるもの”である」——。進化論を提唱したイギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンの名言とされている。
デジタル化の急速な進展と、そのデジタルを駆使したサービスで既存のビジネスやサービスを根底から変えてしまう新興企業の台頭、そしてその先にある不透明な未来。企業には近未来の変化を予測する先見性と、急激に変わるマーケットに対応できる柔軟性が求められている。それは、100年企業も例外ではない。この先も企業を存続させていくためには、100回変われる柔軟性を備えた企業への変革が必要とされる時代だ。
日本の人口は8年連続で減少、人材確保がますます困難に
このような状況の中で、ほぼ全ての企業が取り組まなければならない課題がある。従業員の雇用の問題だ。少子高齢化による人口減少により、日本の生産年齢人口(中核の労働力となる年齢の人口)は大きく減少する。2019年4月に総務省が発表した人口推計によると、日本の人口は8年連続で減少し、生産年齢人口は過去最低を更新した。つまり、中核の労働力となる人材の確保がますます厳しくなるということだ。
※(出典) 総務省「情報通信白書 平成30年版」 図表0-1-1-1「我が国の人口及び人口構成の推移」を基に、周年事業ラボで図表を作成。データの出典は2017年まで:総務省「国勢調査」「人口推計(各年10月1日現在)」、2018年以降:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年4月)」(出生中位・死亡中位推計)
さらに、それは日本国内に限られた問題ではない。世界中の企業が日本人を含む優秀な人材を狙っているため、これまでの採用や人事の在り方を見直す必要がある。いかにして優秀な人材を引きつけ、獲得し、育成して企業成長につなげるかが企業経営の重要なテーマとなっている。
すでに先進的な企業はそれを実行している。これまでの新卒一括採用を見直して通年採用に切り替えたり、評価・報酬制度を見直したり、企業が主体的・能動的に人材獲得を行うダイレクトリクルーティングを導入したりなど様々な施策を講じている。
人事・採用改革を進める企業の人事担当者約600人が集結
先日、人材採用・育成について先進的な取り組みを行う企業と、現在もしくはこれからその改革を進めようとする企業が一堂に会するイベント「HR SUCCESS SUMMIT 2019」が東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで開催され、企業の人事担当者約600人が集まった。主催は各種の人事・採用サービスを展開するビズリーチで、人事・採用課題をテーマにした先進企業の講演やパネルディスカッション、さらには人事・採用にテクノロジーを活用したHRテック(ヒューマンリソース×テクノロジー)で変革を推進した企業6社を「HR SUCCESS SUMMIT アワード」に選出し、その受賞企業によるプレゼンテーションなどが行われた。
今回、HR SUCCESS SUMMIT アワードに選ばれた企業は、電気機器製造大手の日本電産、総合商社の丸紅、M&A仲介会社の日本M&Aセンター、エレクトロニクスベンチャーのアンカー・ジャパン、食品宅配のオイシックス・ラ・大地、オンライン会議システムのベルフェイスの6社で、データ活用による採用マーケティングや、ダイレクトリクルーティングを推進した成功事例などが紹介された。
過渡期はチャンス、人事担当が主役になれる時代に
注目すべきは、ベンチャーから大手企業まで、企業規模や業種業態にかかわらず一斉に人事・採用改革を進めていることだ。しかも、トップダウンではなくボトムアップによる改革が多く見受けられる。
例えば、独自のデータベースを直接検索してスカウトするダイレクトリクルーティング。同サービスを活用すれば、自社で獲得したいと思う即戦力人材に主体的にアプローチすることができる。また、従業員や部署の情報を一元管理して機動力を高めたり、煩雑な人事業務を自動化するサービスを導入して作業負荷を軽減し、その分を戦略的人事に振り向けたりできる。このようなHRテックの活用を、ボトムアップで推進する企業が増えている。
かつての企業の人事部は、採用、労務管理、給与支払いなどの書類作成や手続きといった事務的な作業が主な業務だった。しかし、現在はHRテックの活用により、戦略的な人事・採用、評価、教育、人材配置・活用まで、その領域は大きく広がっている。そして、HRテックで人材採用・管理を極めれば、経営の参謀役としてその地位を向上させることができる。人事担当が主役になれる時代といえるだろう。
先日の「HR SUCCESS SUMMIT 2019」に集まった企業の人事担当者約600人は、講演者となってその改革を伝える側も、それらの先進事例を参考にしてこれから改革を進める受講者側も、人材難を背景とした過渡期をチャンスと捉え、生き生きと改革を進めている様子がうかがえた。先進企業は競合他社であろうと同じ人事担当者に自社の成功事例を惜しみなく伝え、受講者側はそれを隅々まで吸収しようという意欲が感じられた。
100回変われる柔軟な企業への変革。HRテックによる採用・人事の改革は、その第一歩となりえるだろう。よーいドンで始まった人事・採用改革は、すでにスタートダッシュで差がつき始めている。グローバルレベルの人材獲得競争に乗り遅れないよう、自社の人事・採用について改めて考えてみてはどうだろうか。
- 2019年10月07日
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