サバイバル分析社会の破壊的変化を成長のチャンスに(1)
あなたの会社は大丈夫? 「3つの破壊的変化」
- 聞き手=内野侑美/文=河村裕介
- 2018年04月23日
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持続的な成長に向けて、外部環境の変化からリスクと機会を洗い出し、長期ビジョンを描く企業が増えている。変化への対応の遅れはリスクとなるが、一方で成長につなげればチャンスとなる。では、社会では今、どのような変化が起きているのか。日経BP総合研究所副所長、社会インフラ ラボ所長の安達功氏に、「3つの破壊的変化」について聞いた。
人口動態のインパクトがもたらすもの
―日本の社会の変化として、少子高齢化がよく取り上げられます。
安達:日本の人口は1995年から2015年をピークに、折り返すように逆転していきます。1950年の人口は8000万人、高齢者は少なく、生産年齢人口と若年人口が多くを占めていました。その後は、人口が増える中で、商品を出せば売れるという時代が続きました。しかし、1995年には生産年齢人口比率がピークアウトし、さらに2050年には人口が1億人を割り込みます。生産年齢人口は産業を牽引し、総人口は消費を牽引するものですが、こういった経済をドライブする要素が減少していくのです。さらには人口の構造も変化します。前回の東京オリンピックが開催された1964年、高齢者は5.7%でしたが、次の東京オリンピックの2020年には約5倍の29.1%に増えます。また、グローバル人口が増える中で日本の人口が減少することから、世界に占める日本の力も低下します。1960年は世界人口30億人の3%を占めていましたが、労働人口がピークアウトした1995年には2%、2050年には世界人口98億人の1%以下になります。振り返ってみると、1995年から2015年の失われた20年間に、企業経営に破壊的変化をもたらす人口動態の変化が起きていたことがわかります。
デジタルの破壊力がプレーヤーを変えてしまう
―AI革命、IoT革命といった言葉もよく目にします。
安達:コンピューターの処理能力は、18カ月で倍増するというムーアの法則を超える勢いで向上し、この10年で1000倍になっています。コンピューターに猫の画像を見せ続けると、猫を判別できるようになることは、従来から論理的には可能であるとされていました。しかし、コンピューターの処理能力が追いついていなかったため、実際に試せなかったのです。処理能力が1000倍になったことで前提条件が変わり、AIなどが現実味を帯びてきました。こういった破壊的技術が登場すると、産業におけるプレーヤーも大きく様変わりします。石器を作る技術は製鉄技術に、また、馬車を作っていた人たちは自動車を作る人たちに取って代わられました。デジタル技術による破壊的変化は、産業分野において新たなプレーヤーを生み出す可能性があります。
エネルギー革命は権力の集中も終わらせる
―持続可能な社会の実現に向けて、太陽光発電など自然エネルギーの導入も拡大しています。
安達:現在、中国やヨーロッパの日照時間の長い地域では、一番安い化石エネルギーである石炭よりも安いコストで自然エネルギーを作れるようになっています。これまで自然エネルギーは、天候に左右されるため安定供給ができないことが欠点とされてきましたが、リチウムイオン電池などの発達により、蓄電しておくことも、さらにはスマートグリッドを使って融通することも可能になってきました。自然エネルギーは、装置を設置すればランニングコストがかからないのも特徴であり、装置の減価償却以降は計算上のエネルギーコストはゼロになる。
今までの社会は、中央集権型でコントロールされていました。それは、情報とエネルギーを握る者が、権力を持つことができたためです。しかしデジタル革命やエネルギー革命により情報の共有化やエネルギーの分散化が進むと、中央集権型の管理は難しくなります。人口動態、情報、エネルギーの世界の変化は、社会の構造そのものを変化させており、私たちが体験したことのない社会が訪れようとしているのです。
第2回は、社会構造の変化が、産業にどのような変化を起こすのかについて聞きます。
- 2018年04月23日
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連載「社会の破壊的変化を成長のチャンスに」
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