調査データ2020年版100年企業<世界編>
世界の長寿企業ランキング、創業100年、200年の企業数で日本が1位
- 文=雨宮健人
- 2020年03月18日
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日本企業は長生き、長寿といわれる。日経BPコンサルティング・周年事業ラボでは、世界の企業の創業年数が100年以上、200年以上の企業数を国別に調査した。日本は共に企業数で世界1位となった。世界の創業100年以上の企業のうち、半数近くが日本の企業という結果だ。さらに創業200年以上の企業では、その比率は65%まで上がる。
創業100年企業の国別ランキング
創業から100年以上を経過した企業の数を国別に調査した。世界で最も100年企業が多いのは日本で3万3076社。世界の創業100年以上の企業の総数、8万66社の41.3%を占めた。2位は米国の1万9497社(24.4%)、3位にスウェーデンの1万3997社(17.5%)が続いた(図1)。さらに創業200年まで絞ると1位は変わらず日本の1340社だが、比率は2061社中65.0%まで上昇する。2位は同じく米国の239社(11.6%)、3位はドイツの201社(9.8%)、4位は英国の83社(4.0%)となった。創業100年の順位で13位(327社)だったロシアは、創業200年になると41社(2.0%)で5位と大幅に順位を上げる。
※企業特定の条件は以下の通り。企業活動ステータス=活動中。法人形態=事業所、公的機関、外国企業、宗教法人、小中高校を除く。所在地、売上高(年商100万円以上)情報が収録されている企業
※記載する創業年数は、企業および団体の設立年から業歴を算出
※公表除外国(データ信ぴょう性が疑われる国)=デンマーク、ケニア、コロンビア、南アフリカ、北マケドニア
※帝国データバンク、ビューロー・ヴァン・ダイク社のorbisの企業情報(2019年10月調査)を基に作成
長寿企業になりやすい製造業。サービス業は長生きが困難
100年企業にはどんな特徴があるだろうか。業種で分類した結果が次の通りだ(図3)。
100年企業で最も多かった業種は製造業の26.0%。これに小売業(23.5%)、卸業(22.3%)が続く。日本の企業の全体の割合と比較しても、その比率が高いのが分かる。1位の製造業は、全体より10ポイント程度高く、2位の小売業に至っては13ポイント程度高くダブルスコアに達した。3位の卸業も全体比率より高い。
4位以降は、全体比率と100年企業の比率が逆転する。建設業は全業種の21.9%を占めるが、100年企業は全体の7.4%と比率は低い。サービス業は全体の16.7%存在するが、100年企業の中では5.2%にとどまる。
また、比率のみに着目する「100年企業出現率」を見てみると、最も出現率が高かったのは、小売業の5.30%だった。2位は教育サービス業の4.24%、3位は宿泊・飲食業の3.83%だった。
さらに創業200年以上まで絞ると、出現率の順位は変わる。1位は宿泊・飲食業(0.680%)、2位は製造業(0.246%)、3位が小売業(0.173%)となる。出現率自体は数字として大きくないものの、比率的には宿泊・飲食業が他を圧倒する結果となった。
売上高500億円を超えると100年企業出現率は16.8%に
それでは売上規模で企業の長生き度合いは変わってくるだろうか。1億円未満から500億円以上の5段階に分けて、主要国で比較してみた。結果はこのようになった(図6)。
10億円以下の比率で見ると、日本が80.7%で最も多い。最も低いのが英国で32.7%だ。比率構成が近いのは日本・米国・イタリアで、1億円未満が最も高い比率となり、売上高が上がるほど比率は低下する。一方英国は、10億~100億円未満が約半数のボリュームゾーンとなる。ドイツはその中間タイプで、1億~10億円未満に40.9%が集まる。
これを出現率で算出すると、すべての国で500億円以上のゾーンが最も比率が高くなる。その中でも最も数字が高いのが日本で、出現率は16.8%に上る。2位のドイツの12.3%に4.5ポイント差をつける。日本と売上高比率のタイプの近い米国とは、9.0ポイントも差がついた。日本企業は500億を超える大企業になると、ことさらBCP対策への意識が高く、経営資源・リソースをリスク対策に割けるのも、数字が高い理由の1つと考えられる。
日本で最も創業が古い上場企業は松井建設
ここで実際に、長寿企業をリストアップしてみよう。リストは調査結果の中から上場企業を抜粋した。最も創業が古い企業は松井建設。1586年創業で2020年現在、創業434年となる。2位は創業1590年の住友金属鉱山、1600年代創業では、1602年の養命酒製造、織物卸の小津産業(1603年)、商社のユアサ商事(1666年)が続いた(図8)。
同様に、各国の創業の古い上場企業は次の通りとなった。2番目に100年企業の多い米国では、YORK WATER COMPANY(上水道業およびかんがい事業)が1816年創業で米国内1位。3番目に多いスウェーデンの1位は、1609年創業のHOLMEN(製紙業)。
4番目のドイツ内1位は、車両用部品製造のSHW。1365年創業で年数は655年を数え、世界の上場企業で最も長寿企業となっている。5番目の英国で最も創業が古いのが銀行のBARCLAYS(1690年創業)。5番目のイタリアも銀行が1位で、BANCA MONTE DEI PASCHI DI SIENAの1472年となった。
日本は長生き企業が多い
調査の結果、日本企業は長生き、長寿なのが数字の上で明らかになった。その内容をまとめると以下の通り。
●創業100年以上の企業は3万3076社で世界第1位。世界の100年企業全体に占める割合は41.3%で、2位の米国の24.4%に17ポイントの差をつけた
●創業200年になるとその傾向はさらに高まり、企業数は1340社で日本がトップ。世界の創業200年を超える企業全体に占める割合は65%。2位の米国の11.6%に53ポイントもの差となった
●100年企業出現率の最も高い業種は小売業で5.3%だが、創業200年以上になると宿泊・飲食業が0.68%でトップとなり、小売業は3位に後退する
●売上規模別に見ると、100年企業は1億円未満の層が最も多く41.7%だが、100年企業出現率で見ると1.8%。最も出現率が高いのは、500億円以上の16.8%となる
企業の形を保ちながら業務を続けられるのは、ほんの一握り、選ばれし企業だ。多くは災害や戦禍、あるいは経済の波にのみ込まれ、退場を余儀なくされてきた。経営者であれば、あるいはその企業に勤務する従業員であれば、その企業がずっと続いてほしいと願うものだ。長く続く、強い企業の明確な条件は一概には語れないが、少なくとも日本の企業は、世界の中でそれを最も体現すると調査結果は示している。
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