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調査データ2017年版100年企業<上場編>

95年以上の老舗上場企業、2019年まで数のピーク

  • 文=熊谷勇一
  • 2017年07月28日
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95年以上の老舗上場企業、2019年まで数のピーク

多くの周年事業を手掛けてきた企業は当然、長寿企業だ。この長寿企業が国内にどれだけあり、その顔ぶれはどのようなものなのか。今回は上場企業を対象に、100年を1つの目安と考え、2017年時点で95年以上存続している企業をリストにした。

100年企業 業種トップ5

最も多かったのが「化学」で、26社あった。日本の化学産業は肥料の生産から始まったとされ、戦後の1955年に通商産業省が「石油化学工業の育成対策」を打ち出し、急速な成長を遂げた。日本の基幹産業の1つにも挙げられる。その中で最も古いのが、1898年設立で建設用(建築・土木構造物)塗料、自動車補修用塗料の製造・販売を基幹とする日本ペイントホールディングスである。1881年に東京・三田で創業し、1920年に経営の中心を大阪に移している。塗料では世界5位であり、国内で9社、海外で63社のグループ企業を持つ、まさに世界的企業だ。

2番目に多かったのが「銀行業」である。1872年に制定された国立銀行条例によって全国に銀行が誕生したことが理由として大きいだろう。国立銀行条例は米国の銀行を手本とし、渋沢栄一らの起案によって制定された。その後の改正と、殖産興業の進展に伴う企業設立の機運の高まり、そして授産(仕事を与える)政策によって士族が銀行設立で職を得ようとしたこともあり、全国的に銀行設立ブームが起こって153もの銀行が誕生した。調査対象で最も古い1873年設立の第四(だいし)銀行は新潟市を拠点とする地銀で、県内の貸し出しシェアはトップ。2018年4月に北越銀行(長岡市)と合併して第四北越フィナンシャルグループを設立する予定である。

3番目は、第二次世界大戦前の産業の中心的位置を占めていた、「繊維製品」である。18世紀末に英国で始まった産業革命で機械を利用した大量生産工業に発展し、資本主義の世界的な進展を促した。日本の繊維工業は 20世紀に入ってから興り、中でも製糸業は重要な産業となった。第一次世界大戦を契機として紡績業も飛躍的な成長を遂げ、繊維製品は日本の輸出の50%を超えた。しかし第二次世界大戦後は構造不況に陥り、早くから経営の合理化や多角化が進んだ。特に医薬、食品、電子、バイオ、不動産など広い分野で業績を上げている。調査対象で最も古いのは、1888年に岡山県倉敷市で倉敷紡績所として設立されたクラボウ(正式社名は倉敷紡績)である。1889年に設立された本社工場の建物が現在、大原美術館や倉敷美観地区に隣接するホテル・倉敷アイビースクエア(同社のグループ企業でもある)として残っているのはあまりにも有名。現在では、本業の繊維・化成品事業のほか、環境メカトロニクス事業、上記のホテル業を含む食品・サービス事業、そして不動産事業を手掛ける。特に不動産事業は堅調だという。

なぜ今年から再来年にかけて「100年企業」が多いのか

近年、100周年を迎える企業が増えていて、メッセージや記念ロゴマークを目にする機会も多いのではないだろうか。ある年に設立された企業の数と、それらのうち現存している数との間に比例の関係があるという前提に立てば、本調査で歴史の流れと近年100周年を迎える企業が増えていることの関係性を、定量的に裏付けられた。

調査対象の最古である第四銀行の1873年からたどっていくと、「100年企業」の数が初めて2桁を超えるのは1896年の14社で、その後また数は減っていく。大きく増えるのは1917年の28社で、1916年の7社の実に4倍である。さらに翌1918年は30社と調査対象期間で最多となり、1919年25社、1920年22社の後は1921年5社、1922年7社と急速に減る。今年100周年を迎える企業は当然1917年に設立された。つまり今年から再来年にかけて、日本は「100年企業」のピークを迎えているのである。

【設立年ごとの100年企業の社数】

設立年ごとの100年企業の社数

1910年代後半は、大正時代の真ん中である。1914年に第一次世界大戦が勃発し、日本は大戦景気に見舞われ、特に繊維業、造船業、製鉄業、化学工業がその恩恵を受けた。しかし1918年に終戦を迎えると、過剰な設備投資などの反動による不景気が起きた。100年企業の数は、この歴史の流れに沿っているといえよう。

20世紀に入ってからは1901年を除いて、現在に続く上場企業が毎年設立されている。ただ、かつては名門企業と呼ばれながら、不正会計と巨額損失が発覚するような企業例を出すまでもなく、長く存続していくには不断で健全な努力をしていかなければならない。いいものを作っていればいい、数字が挙がっていればいい、それだけでは今後存続していけないのは言うまでもない。

期待が高まる1920年組

周年事業の観点からすると、期待させるのは1920年設立組である。2020年、つまり東京オリンピック・パラリンピック開催年に100周年を迎えるのは前述の通り22社。そのうちTOTOとキッコーマンは同大会のオフィシャルパートナーだ。世界的関心事と自社の100周年をどうからめてブランドを高めていくのか、期待がかかる。

オフィシャルパートナーの中には1921年設立で開催時に99周年を迎えている三菱電機、非上場なので本調査には含めていないが、1919年創立で101周年を迎えているヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングスがある。またオリンピックワールドワイドパートナーとなっているパナソニックは、会社設立は1935年だが、創業は1918年であり、2020年には創業102周年を迎えていることになる。

同大会に関係なく、2020年に設立100周年を迎える企業で注目なのは、松竹である。劇場の売店の経営から始まり、1895年に劇場経営に進出。現在では映画などの映像事業、歌舞伎興行や俳優・タレントの斡旋などの演劇事業、そして不動産事業などを手掛ける。2020年には同大会開催や100周年ということで同社にとって重要な年であることは間違いなく、市川海老蔵の十三代目團十郎襲名が行われるのではとの憶測も出ているほどだ。江戸・東京で大いに発展・定着した歌舞伎の興行を重要な事業とする企業が、東京が世界的に注目される年に、自社の100周年とからめてどんな手を打ってくるか、興味深い。

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