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周年事業周年コンサルタントが自社の周年をコンサルしてみた(5)

経営理念への従業員共感度を測る

  • 文=菅野和利
  • 2021年07月13日
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経営理念への従業員共感度を測る

日経BPコンサルティングの3社統合10周年記念プロジェクトも大詰めを迎えました。連載最終回は、出来上がった経営理念(スローガン。ビジョン、ミッション)に対し、従業員がどう感じているかを測る共感モニタリングを紹介します。

経営層ヒアリング、従業員・顧客意識調査、未来を語るワークショップ、スローガン公募・オンラインブレストと進めてきた周年事業施策によって、当社のスローガン、ミッション、ビジョンが完成しました。やれやれとほっとして終わってはいけません。

ここで経営層ヒアリングの社長・副社長の発言内容に戻ります。「10年20年後どうなっていくべきかの指針を。会社の憲法やDNAをつくってほしい」「迷ったときに立ち返れるような指針を」。ここまで労力をかけて周年事業を手掛けてきたのは何のためか。作成した経営理念を従業員に共感してもらい、日々の行動の拠り所としてもらうためでした。

一橋ICS×日立の共感モニタリングサービスを試行

周年事業を通じて作成したスローガン、ミッション、ビジョンを従業員の皆さんはどう感じているのか。従業員参加型で作成したとはいえ、本当のところどう思っているかは分かりません。なかば強制的に「共感してください」「行動の拠り所としてください」と伝えたとしても、従業員一人ひとりの心には響かないでしょう。

タイミングよく、一橋大学大学院阿久津研究室と日立製作所が開発中の共感モニタリングサービスの先行検証に参加し、連携パートナーとして協力させていただくことになりました。このサービスを利用すれば、スローガン、ミッション、ビジョンなどの実際のテキストに対し、従業員がどの単語や文章にどんな感情を抱いているかを判定できます。

回答者は自分の感情が動いた単語や文章をマークする(1)。その箇所について「共感する/理解できない/自社らしい/らしくない」などの感情を選択(2)

当社はスローガン、ミッション、ビジョンに加えて、ワークショップで考えたぐっときたエピソード、新経営理念の意図を解説した社長メッセージも測定に加えました。経営トップは自分が話したり書いたりしている内容がきちんと従業員に伝わっているかを気にかけるものです。当社の社長も従業員共感度を測れる仕組みにとても興味を持ち、喜んで社長メッセージの原稿を書いていました。

新経営理念の意図を解説した社長メッセージに対する共感度や感情も計測。従業員がトップのどの言葉にどんな感情を抱いたかを分析できた

期待値とのギャップから今後の施策が見えてくる

共感モニタリングの回答は2~3分では終わりません。当社の回答用文章は文字数が多かったので、20~30分はかかります。回答率は非常に心配でしたが、ここまできたら絶対に成功させたい気持ちを持って様々なルートで回答の催促をしました。全社メール、リマインドメール、業務ラインを通じた連絡依頼、社長からの全社向けメッセージ、オフィスで誰かにすれ違うたびの声掛け――。回答率100%とはいかなかったものの、8割以上の従業員の回答を得て、感謝の気持ちでいっぱいでした。

この共感モニタリングサービスの面白い特徴は、期待値とのギャップ計測です。10周年記念プロジェクトメンバーの数人が「従業員にこう感じてほしい」という理想回答(期待値)を入力します。その期待値回答と、従業員の実際の回答を比べて理想と現実のギャップを測ります。ギャップが大きい箇所は、今後埋めていくべき課題として検討事項に挙げます。当社の場合は「デジタル」に関する部分でギャップが見られ、喫緊の課題を見いだせました。

周年事業施策への参加が共感度にどう影響したかも測れました。「従業員意識調査」「スローガン公募・オンラインブレスト」「未来を語るワークショップ」へ参加した従業員と、参加しなかった従業員の共感度を比較。特に、「すべて参加」と「すべて不参加」を比較すると、経営理念への関心度合いが約3倍違うという結果が出ました。逆にいえば、これまでの周年事業施策は効果があったといえます。

これまで経営理念の浸透度は、従業員アンケートなどで「経営理念を知っている/理解している/共感している」といった項目で測ってきました。ただ、どの単語、文章にどのような感情を抱いているかまでは測れませんでした。共感モニタリングサービスを活用すれば、従業員の経営理念に対する共感度が見える化します。結果をグラフの数値で表せれば、次の具体的な施策を立てやすくなりますし、経営層の説得にも有効です。

結局得をするのは周年事業担当者

ここまで、日経BPコンサルティング3社統合10周年記念プロジェクトの経緯を紹介してきました。周年事業のコンサルタントが自社の周年事業を手掛けたらどうなったのか。人間くさい部分も含めてお伝えしました。本連載では1人の視点でプロジェクトを記してきましたが、もちろん周年事業にはプロジェクトメンバーをはじめ、自発的に参加してくれた拡大メンバー、すべての従業員、経営層、当社関連会社が関わっています。社外も、お客様、一橋ICS様、日立製作所様、ステークホルダーの皆様に多大なるご協力をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

周年事業を担当してみて思ったのは、得をするのは周年事業の担当者ではないかということです。あらゆる部署の従業員と関わりが増え、経営層とも深く話し合えました。不安から喜びへという仕事の醍醐味も味わえました。もし「もう一度やりますか?」と問われたら、「さあもう一度!」と心から言えます。皆様もぜひ周年事業を運営するこちら側へお越しください。きっと楽しく成長できるはずです。

10周年記念プロジェクトの全体像はこちら

共感モニタリングサービスについてのお問い合わせはこちら

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  • 2021年07月13日
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