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コロナ禍で周年イベントをオンラインに変更。成功の3つのカギ

  • 文=佐藤恵司郎
  • 2021年03月26日
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コロナ禍で周年イベントをオンラインに変更。成功の3つのカギ

2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、周年イベントのリアル開催が困難になりました。そんな中、2020年に創業10周年を迎えたあいおいニッセイ同和損保は、オンライン配信方式での周年イベント開催に成功しました。その成功のポイントを、経営企画部担当役員付の花岡信明さんに伺いました。

本記事で紹介する「オンラインイベントを成功させる3つのポイント」1. コンテンツのテーマ、構成をしっかりと考え、誰に何を伝えるかを明確にした→視聴者の満足度アップ2. 配信方法は誰でも見られるような簡単なものに。配信期間を長めに取った→視聴者数のアップ3. 海外の視聴者へ向けて、多言語に対応させた→リアルでは不可能だった海外視聴者の獲得

コロナ禍におけるイベント開催の新たな選択肢「オンライン」

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あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
経営企画部担当役員付
花岡 信明さん

あいおい損保とニッセイ同和損保が合併して誕生したあいおいニッセイ同和損保は、コロナ禍の中、創業10周年を迎えました。同社は創業10周年記念として、外交官の杉原千畝をテーマにしたリアルイベントの準備を2019年から進めていました。第二次世界大戦中に迫害から逃れようとするユダヤ系難民に「命のビザ」を発給し続け、6000万人を救済した人道主義の功績を広く伝えたいと、以前から温めていた企画でした。

しかし、新型コロナウイルスの感染症拡大防止のため、日本では2020年春に緊急事態宣言が出されました。世の中の“人が集まる”イベントのほとんどが、感染リスクを考慮して延期や中止の選択を余儀なくされました。

「残念ながら当社も、創業10周年イベントはリアル開催を中止せざるを得ないと考えていました。そんな中、イベント運営のパートナーだったJTBからの提案でリアル開催以外にも選択肢があると知りました。イベント開催の選択肢は、感染拡大防止対策を行いながら会場に参加者を集める『リアル』、アバターと呼ばれる分身になり仮想空間の中で参加する『バーチャル』、あらかじめ用意したコンテンツをインターネット上で配信する『オンライン』の3つ。『リアル』以外の2つは、あまりなじみのない選択肢でしたが、『特色ある個性豊かな会社』の実現を目指す当社にとって、挑戦することが個性創りにつながります。2020年6月末、人道主義者である杉原千畝さんの偉業を伝えるというテーマにふさわしい『オンライン』での開催に挑戦することにしました」と花岡さんは話します。

五里霧中の状態で進めた番組制作

オンライン開催に決めたものの、初めは何から手をつけてよいのか分からない状況でした。中でも大変だったのは、実現に向けて課題を洗い出し、番組を組み立てていくことでした。2020年12月の公開を目指し、まずはオンラインで公開する番組の収録を目標に設定。そのためにどんな準備が必要か、ブレークダウンして時系列に整理していきました。

「リアルイベントであれば、当社は年間優秀代理店を表彰するような1000人規模のイベントを毎年開催しているので経験があります。それでも大変なのに、今回のオンライン開催は未経験です。リアルでやろうとしていた運営のどこを変更し、何を追加する必要があるのか。果たして、今からで間に合うのか。JTBにもサポートしてもらいながら課題を抽出し、どういう段取りで進めるか、どんな準備をしたらいいのかを模索しながら進めました」(花岡さん)

6月の終わり頃からプランを組み立て始め、これならなんとかできる、よし行こう!と実現のめどが立ったのが、オンラインへ方向転換してから約2カ月後の8月末。その後も軌道修正をしながら改善を加え、ようやく10月の番組収録を実現できたといいます。

「番組の内容は、リアルで開催しようとしていたものを、オンライン配信用に収録したものでしたが、リアルと違って観客がおらず、話し手は状況が分からない中で話をまとめます。リアルならその場で反応が返ってきますが、収録なので全く手応えがありません。難しさを感じながらも、探りながらやっていきました」(花岡さん)

番組は3部で構成されました。1部はドキュメンタリー映像で、ユダヤ人の生の声やインパクトのあるアウシュビッツの映像が収められています。2部は外交ジャーナリスト・作家の手嶋龍一氏による詳しい解説で、インテリジェンスオフィサーとして辣腕を振るった新しい杉原像を引き出しました。3部は手嶋龍一氏、ジャーナリスト・作家の松富かおり氏、金杉恭三社長による鼎談で、今を生きる人たちへメッセージを伝えています。伝えるべきテーマを明確にし、それを踏まえて緻密に計算して構成を考え、各パートに「役割」を持たせることで、杉原千畝を知る人、知らない人、どんな人にも見てもらえる番組となりました。

第3部の鼎談では、金杉社長から現代を生きる人たちへのメッセージが伝えられた

番組の成功、予想を超える拡散

「2020年は、あいおいニッセイ同和損保の創業10周年、杉原千畝さんの生誕120年、ビザ発給から80年の節目の年です。10周年の感謝を伝えるとともに、命懸けでユダヤ系難民を救済した杉原さんの偉業を伝え、コロナ禍で大変な世の中を勇気づけたかったのです」。花岡さんには強い思いがありました。杉原千畝とゆかりのある地方公共団体や在日の外国大使館が、イベントの趣旨に賛同し、「後援」として支援してくれたことにも勇気づけられたそうです。

これまでのようなリアルイベントの場合、会場のキャパシティーを埋められれば成功という雰囲気がありましたが、オンライン配信には原則、人数の制限がありません。プロモーションの予算も限られる中で、どれだけ視聴者を広げられるか不安もありました。

ところが、いざ配信を始めてみると、イベントの趣旨に賛同した人がSNSで発信したり、在日の外国商工会議所がニュースにしたり、外国の大使館が本国に案内してくれたりと、あいおいニッセイ同和損保の関係者以外へもSNSや口コミで拡散されました。外国語版を用意した効果もあり、日本国内だけでなく海外でも多く視聴されました。視聴するためのIDやパスワードを設定せずに、URLが分かれば誰でも見られる方式にしたことで、視聴するハードルが下がったのも大きな要因でした。配信期間延長の要望も多く寄せられたといいます。配信が終わる頃には、予想を大きく超える約3万3000ものアクセスとなりました。

人道的な偉業を残した杉原千畝をテーマにしたイベントは、あいおいニッセイ同和損保がそれを見習い、顧客をサポートしていく思いと重なり、同社のブランディングにも寄与しました。

イベント参加者の幅も広がりました。リアルイベントでは難しかった、海外在住者や一般の契約者といった多様なステークホルダーの参加が可能になりました。

視聴者からは、「オンラインシンポジウムの可能性の広がりを感じた」(在リトアニア日本大使館 一等書記官)、「一企業がメッセージ性の高い内容のイベントを実施したことが画期的だと思う」(一般 男性 60代)、といったコメントが届いています。

視聴者のコメント●「オンラインシンポジウムの可能性の広がりを感じた」在リトアニア日本大使館 一等書記官●「一企業がメッセージ性の高い内容のイベントを実施したことが画期的だと思う」一般 男性 60代●「リアルイベントは興味があっても、申し込みや会場へ行く労力が必要。オンライン配信だと手軽に見られるのでハードルが低い」契約者 女性 20代●「社長や出演者の議論や観点が面白かった。10周年企画としてとてもよいトピックであったと思う」あいおいニッセイ同和損保 豪州子会社社員(現地法人会長)●「スマートフォンから見ることができたので、場所も時間も自分の都合に合わせることができた」あいおいニッセイ同和損保 社員 男性 30代

「コロナ禍の収束はいまだ見えません。私たちはイベント開催を考える上で、オンライン開催という選択肢を得ることができました。扱うテーマやイベントの種類に応じて、今後はリアルとオンラインを使い分けていくことができます」と花岡さん。

あいおいニッセイ同和損保は、急激な変化に柔軟に対応し、新たな形に挑戦することで初のオンラインイベントを成功させました。これからのイベントはリアルとオンラインのハイブリッド型が主流になると考えられます。その知見をいち早く得るには、あいおいニッセイ同和損保のように挑戦して経験を積むプロセスが欠かせません。

本記事で紹介する「オンラインイベントを成功させる3つのポイント」1. コンテンツのテーマ、構成をしっかりと考え、誰に何を伝えるかを明確にした→視聴者の満足度アップ2. 配信方法は誰でも見られるような簡単なものに。配信期間を長めに取った→視聴者数のアップ3. 海外の視聴者へ向けて、多言語に対応させた→リアルでは不可能だった海外視聴者の獲得

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

2010年にあいおい損保とニッセイ同和損保が合併して創業した損害保険会社。
2020年に10周年を迎えた。グローバルな保険・金融サービス事業を通じて、安心と安全を提供している。MS&ADインシュアランス グループとして、世界トップ水準の保険金融グループの創造を目指している。

https://www.aioinissaydowa.co.jp/

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