NECソフトウェアグループの7社統合で生まれたNECソリューションイノベータは、その原点となる日本電気ソフトウェア株式会社の創立から50周年、統合から10年という節目に「何を残すか」ではなく、「どの歴史を語るか」を問い直した。選んだのは、創業からの50年の出来事を網羅する従来型の社史ではない。統合後10年を起点に、社員の記憶と当事者の声を束ねて歴史を“再構成”する記念誌だった。年表を中心に据えるのではなく、経営と現場の視点を重ね、社員たちの10年が見える構成を目指した。完成した記念誌は社員の自宅に届き、家族の目にも触れることで会社への誇りを育んだ。さらに、編集を担った担当者自身も「歴史は編集によって立ち上がる」ことを実感し、次の周年に生きる知見を得たプロジェクトである。
「50年をまとめる」より、「歴史を再構成する」
この記念誌づくりの起点にあったのは、出来事を網羅する発想ではない。
プロジェクトを主導した山口利津子氏が重視したのは、統合後の会社をどう位置づけ、どの時間軸を「自分たちの歴史」として語り直すかという視点だった。
「50年を年表のように並べるのではなく、どこに焦点を当てて語るかを決める必要があると思っていました」(山口氏)
同社はNECグループ内の複数企業の統合で誕生したIT企業で、法的な歴史は50年に及ぶ。一方で、2014年に統合された7社及びその後に統合された2社、計9社の設立年や歩みは様々であり、旧各社を同じレベルで網羅するのは困難な状況でもあった。
社員に実感してほしいのはこの会社の実像、輪郭であり、それを誇りに感じてもらいたい。そこで今回は、統合後10年を物語の核に据え、会社の歴史を再構成し、さらに未来を展望する方針を採った。
記念誌は、節目を記録する媒体ではない。会社を自己定義し直す「装置」として位置づけられた。
NECソリューションイノベータ株式会社 コミュニケーション統括部 ディレクター
山口 利津子 氏
年表ではなく、「意味のある10年」を浮かび上がらせる
一般的な周年誌では、創業から現在までを年表で整理する構成が多い。今回の記念誌は、その形式を採用していない。
山口氏が重視したのは、どの出来事を取り上げ、どんな意味を持つ流れとして描くかという視点だ。
統合という転換点を起点に、経営判断と現場の動きがどのようにつながり、現在の事業や文化に至ったのかを1本のストーリーとして描いた。
50年の総括ではなく、「NECソリューションイノベータとしての10年」を浮かび上がらせる。
そこに編集の主眼が置かれた。
「会社の正史」ではなく、「社員の記憶」を束ねる
歴史の再構成を支えたのが、インタビューを軸にした編集だ。
プロジェクト推進の中核を担った寺田佳代氏が意識したのは、経営の視点だけに寄らない構成である。
「経営の言葉だけでは、社員の実感に届かないと思っていました」(寺田氏)
経営層やレジェンド社員、現場の中核を担う社員。それぞれの視点を並べ、同じ出来事でも異なる受け止め方がある点を誌面に反映した。経営判断として語られる統合の裏側で、現場では不安や戸惑いもあった。その事実を排除せずに描いた点が、記念誌に奥行きを与えている。完成したのは、会社の公式見解を示す資料ではない。社員の記憶を束ねて編み直した歴史だった。
NECソリューションイノベータ株式会社 コミュニケーション統括部 プロフェッショナル
寺田 佳代 氏
「自分がいた10年」が見つかるから、読まれる
記念誌が読まれるかどうかは、編集上の重要な指標だった。
永見佳子氏は、社員が自分の関わった時間や仕事を誌面の中に見つけられるかどうかを編集の要点に据えた。
「社員が“自分の10年”として実感できる誌面にしたいと思っていました」(永見氏)
各事業部門の主要プロジェクトや現場の取り組みを幅広く掲載し、「この10年で誰が何を担ったか」が分かる設計とした。
制作過程では、原稿の修正要望や追加提案が多く寄せられた。調整は容易ではなかったが、それは社員が自分たちの仕事を歴史として残す意味を強く感じていた現れでもある。
自分の仕事が会社の歴史として記録される。その実感が、社員の誇りにつながっていった。
NECソリューションイノベータ株式会社 コミュニケーション統括部 主任
永見 佳子 氏
家族に届いて完成する「再構成された歴史」
記念誌は全社員の自宅へ郵送された。社内配布で完結させなかった点も、このプロジェクトの特徴だ。
社内だけで共有すれば、記念誌は業務資料に近い存在になる。
家族の目に触れることで、社員自身の仕事や会社の歩みが、生活の文脈と重なっていく。
完成後に、プロジェクトメンバーが「つくってよかった」と実感したページもある。
それは、統合後10年の歩みを時代の変化とともにまとめたページで、複数の領域の事業を流れとして見せる構成だった。
個別の実績を事細かに紹介するのではなく、この会社として、どんな道筋を歩んできたかが視覚的に伝わるページだ。
「このページを見て、ようやく自分たちの物語になったと感じました」(寺田氏)
事業の説明をしなくても、会社の歩みが伝わる。その状態をつくれた点に、このページの意味があった。
記念誌は、次の「歴史の再構成」への起点
このプロジェクトを通じて、担当者自身にも確かな手応えが残った。
「完成したとき、未来へのスタートラインに立てた気がしました」(山口氏)
山口氏は、歴史は出来事の集積ではなく、編集によって立ち上がるものだと実感した。寺田氏は、記念誌が社員、経営、家族の関係性をつなぎ直す力を持つ点に手応えを得た。
永見氏は、読まれる前提で設計する重要性が確信に変わった。
統合後10年の歩みを一度再構成したことで、次の10年をどう語るかの土台が整った。この記念誌は、単なる周年施策ではない。会社がこれから自らの歴史をどう語っていくかを見定め直すプロジェクトとなった。
NECソリューションイノベータ株式会社
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/NECグループの社会価値創造をICTで実現する中核会社として、10,000人を超えるエンジニアを擁し、システムの実装に強みを持つ。AIをはじめとする先進技術の活用にも注力し、社会基盤をICTで支えるとともに、お客様の企業価値向上や社会課題解決に貢献するSI・サービスを提供している。
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