サービス起点で考える顧客創造とPoC
脱テンプレ 今日からはじめる新規事業「“独自性”を設計する5つのステップ」
STEP1「新規事業はなぜ必要か」を再確認する
なぜ、新規事業が必要なのでしょうか?企業によって、理由は様々です。
新規事業に取り組む理由(例)
・ 見えている長期的市場縮小に対応が必要 #人口減少
・ 既存事業コモディティ化 #GAFA#コストパフォーマンスの高いクラウドサービス
・ 多角化によるリスク回避
・ 社会変化に伴い、これから伸びてくる需要を捉えたい
「新規事業がなぜ必要か」を再確認する意味は2つあります。
1つは「アプローチを特定」することです。
必要な理由によって、強みの活かし方、どこで違いをつくるのか、といった考え方が変わります。
図1<必要な理由→アプローチ>
2つ目は「事業存続可能性を高める」ことです。
新規事業を短い期間でビジネスとして成立させるのは至難の業です。
そのなかで、短期的な売上・利益だけではない「経営戦略上取り組む必然性」を定義できていれば、中長期的な視点で事業の価値を示すことができ、存続可能性が高まります。
STEP2「武器」を確認する
「新規事業=0→1(ゼロ→イチ)」と捉えてしまいがちですが、範囲を限定せず、ゼロからイチを生み出そうとすると、ありがちなアイデアを量産してしまうこともしばしばです。
おすすめは、今ある1(アセット)を捉え直し、別の1に変えてみるという発想です。
図2<今ある1(アセット)を捉え直す>
自社にある武器(アセット)は、社内にいると風景化してしまいますが、改めて捉え直すと、思わぬ武器をすでに手にしていることに気がつくかもしれません。
アセットアセットの例
・ 知見/技術:自社アセットを転用し、未接触の新しい顧客に事業を展開
・ 関係性:既存顧客に別の角度から価値を提供
・ 人員/体制:全国拠点を生かしたチャンネルを活用
・ ブランドイメージ:事業領域との親和性・ストーリー
STEP3「差の出し方」を決める
武器を確認したら、どこで変化を起こし、独自性を出していくか考えましょう。変化を起こす領域は大きく3つあります。「ビジネスモデル」「顧客体験」「テクノロジー」です。 「どの領域で差を出し、どうやってその効果を波及させるのか」を意識するだけで、アイデアの質は大きく変わります。
図3<イノベーションの領域>
ただし、いきなり領域を考えるのは困難です。
有効なアプローチを探す際に、よく活用されるのがビジネステンプレートです。
ビジネステンプレート例
・ 3C:自社、顧客、競合の3つの視点から整理
・ PEST(社会変化を捉える):市場変化を政治(規制)、経済、社会、テクノロジーの4つで整理
・ SWOT:強み/弱みと機会/脅威を整理、掛け合わせることで事業領域を特定
・ ビジネスモデル・キャンバス:提供価値を中心に、マーケティング・オペレーション・収益構造を整理
目的に応じて様々なテンプレートがありますが、独自性のあるアイデアを生むことは容易ではありません。
テンプレートは、わかっていることを整理することに主眼が置かれており、差を出すことを保証するものではないからです。テンプレートを使う前に、いかに差を生み出すかの仮説を定義することが必要です。
STEP4「差をつけるアイデア」を生むための“Why not yet”の発見
ではどこから始めればよいのでしょうか?
「アイデア=問題解決」であると、よく言われます。「問題をどう解決するか=アイデアの良し悪し」と捉えられがちですが何を「問題」として設定するか、のほうが重要です。
多くの人が問題であると考えていることは、基本的に誰かが解決しています。
解決されていないとすれば、なぜまだ解決されていないのか(=Why not yet)に本質的なアイデアの鍵があります。
ダイエットを例に考えてみましょう。
「間食多いから、食べるのを我慢しよう」というアイデアを考えたとします。これでうまくいくならば、ダイエットはあまりにも簡単です。そもそもなぜ間食をしてしまうのか(Why not yet)を問うことが、本質的な解決への第一歩です。
図4<”Why not yet” の発見 例)ダイエット>
このように、問の設定を深くすることで、新しいアプローチが見えてくるかもしれません。
STEP5 アイデアを「ずらして」考える
問を深くすることは重要ですが、それだけでは十分ではありません。
独自性のあるアイデアをつくるためには、一般的な考え方(問い)から、何かをずらすことが必要です。
ここでは3つのずらし方をご紹介します。
① 時間軸をずらす : 半歩先のKPIは?
② 相手をずらす : 「誰に?」を捉え直してみる
③ 発想元をずらす : 異業種から学べることは?
① 時間軸をずらす : 半歩先のKPIは?
今現在必要とされていることは、大抵の場合すでに解決するサービスが多数存在します。
今すぐではなく、数年後に必要とされるかもしれない“半歩先のKPI”を発見し、
② 相手をずらす : 「誰に?」を捉え直してみる
個人向けに提供しているものを、法人向けに提供する
幅広いユーザーに提供しているサービスを、特定層に特化させてみる
③ 発想元をずらす : 異業種から学べることは?
競合になる企業、サービスの動向は、多くの場合チェックしており、どこで独自性を出すかを設計するためには役立ちますが、そのまま真似するだけでは独自性には繋がりません。
そんなときは、似たような問題を抱える、別業態に目を向けてみましょう
例えば防災に関するサービスを企画する際、ネックになるのは、予防には個人がお金を払わないということです。
同様の課題を抱えていると思われるヘルスケア関連のサービスが、どのような形でビジネスを成立させているかを見れば、ヒントが得られるかもしれません。
図5<異業種から学ぶ>
このように、発想を少しずらしてみることで、独自性を確かなものにしましょう。
以上新規事業の独自性を設計するための5つのステップについて書いてきました。 煮詰まったときや、独自性のあるアイデアが浮かばないとき、思い出していただければ幸いです。
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・ 5つのステップ詳細版+PoC(概念実証)のポイント
・ 新規事業企画に役立つ、おすすめのオープンデータ
・ 課題ごと、参考になる事業例
・ 定番ビジネステンプレートの活用方法と注意点
・ “半歩先のKPI”になりそうなキーワード10選
・ 差を設計するための競合ベンチマーク調査の方法
マーケティング本部コンサルティング部
豊田康裕(とよだ・やすひろ)
コンビニエンスストア大手オペレーション部門を経て現職。
飲料/食品メーカー、機器メーカー、インフラ、大学などのビジネス支援を行う。