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サバイバル分析周年事業で会社を強くする

パーパスとエンゲージメントと周年

  • 文=菅野和利
  • 2021年11月22日
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パーパスとエンゲージメントと周年

なぜ周年事業を行うのか。長年の感謝の表明に加えて、会社を強くできるからだ。「周年」という言葉とビジネスワードを組み合わせると周年事業の意義がより明らかになる。本記事のタイトルは「パーパスとエンゲージメントと周年」。パーパスは今、トレンド感のある言葉だが、パーパス、エンゲージメント、周年のどれも単体ではそれほど特別な言葉ではない。これら3つの言葉を組み合わせると、会社を強くするためにやるべきフローが見えてくる。

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パーパス策定・浸透と周年を組み合わせたフローでエンゲージメントを向上させ続ける

パーパスが従業員エンゲージメントを高める

パーパスという言葉を読んだり聞いたりするシーンが増えている。パーパスの重要性に広く注目が集まったのは2018年。世界有数の資産運用会社ブラックロックが年頭書簡でパーパスを取り上げ、世界中の経営者がパーパスに取り組まざるを得なくなった。パーパスを重視しなければ、投資対象から外れる可能性があるからだ。

パーパスとは何か。永続する会社の要件を追究し続けている『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの最新刊、『ビジョナリー・カンパニー ZERO』(2021 日経BP)からパーパスの定義を引用する。「パーパスはあなたの会社が存在する根本的理由、会社がそこにある究極の意義」。間違えてはいけないポイントがある。パーパスは売り上げ・利益ではない。社会的な存在意義が込められていなければならない。

ブラックロックの年頭書簡にはこう記載されている。「企業が継続的に発展していくためには、すべての企業は、優れた業績のみならず、社会にいかに貢献していくかを示さなければなりません」。売り上げ・利益の数字目標だけでは長期的に存続する企業だと投資家から見られない。

パーパスは投資家向けのメッセージにとどまらない。パーパスは会社を導く星であり、どんな時代でも従業員を前へ進める「案内星」(『ビジョナリー・カンパニー ZERO』でのたとえ)だ。社会的な存在意義が簡潔に表現されたパーパスが日々の仕事のよりどころとなれば、仕事のやりがいにつながる。従業員一人ひとりが社会的意義のある仕事だと“腹落ち”していれば、モチベーションも上がり積極的に仕事に取り組むようになる。当然、仕事への態度と活動水準の掛け合わせである従業員エンゲージメントも向上する可能性が高い。(※)

例えば、2019年にソニーが策定したパーパスは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」だ。従業員が「感動」を意識して日々の仕事をすれば、やりがいを持てるだけなく、質の高い仕事につながる。結果、業績も上向くという良いスパイラルが生まれる。

パーパス策定・浸透のきっかけとなる周年事業

パーパスがあれば投資も呼び込めて従業員エンゲージメントも高まる。だが、そう簡単にはいかない。先ほど“腹落ち”という言葉を使った。素晴らしいパーパスをつくっても、従業員が心から納得していなければ、上っ面だけとなるだろう。絵空事となり、かえって従業員エンゲージメントは下がるかもしれない。

どうすればよいか。ここで「パーパスとエンゲージメントと周年」の3つ目のキーワード「周年」に言及したい。周年の特徴は巻き込み力だ。周年事業とうたえば、トップも役員も従業員も特別なプロジェクトとして認識する。普段は取り組めないプロジェクトも、周年事業プロジェクトにすれば予算も取りやすい。

パーパス策定と周年事業は相性がよい。パーパスと聞いて思い描くイメージは人それぞれだ。単にパーパス策定プロジェクトを立ち上げたとしても、そもそもの定義がバラバラでまとまらず、そのうち通常業務が忙しくなってプロジェクトが頓挫するケースもある。ところが「周年事業でパーパスを策定します」と決めると、一定の目標ができる。トップも役員も従業員もプロジェクトに巻き込みやすくなる。

周年事業では自社の過去を振り返る。振り返りは自社の存在意義を見いだすチャンスだ。往々にして創業時のエピソードや理念に存在意義がある場合も多い。例えばソニーの創業者の一人、井深大氏が起草した設立趣意書には「技術者たちが技術することに深い喜びを感じ、その社会的使命を自覚して思いきり働ける安定した職場をこしらえる」という記載がある。「日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動」とも書いてある。創業精神が現在のパーパス「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」につながっている。

周年事業は年単位の時間がかかる。時間がかかる分、“腹落ち”という面ではメリットになる。トップ、役員、従業員が周年事業の長いプロセスで自社の存在意義を見いだし、パーパスへと表現する経験を経れば、“腹落ち”まではもうすぐだ。あとは地道に浸透への取り組みを進めればよい。気付いたときには従業員エンゲージメントが大きく向上しているはずだ。

すでにパーパスがある会社は、周年事業でパーパス浸透プロジェクトを改めて立ち上げてもよいだろう。現在の従業員だけでなく、新人にもパーパスを意識させる。毎年毎年パーパスへの理解を深めていく。いずれパーパスを書き換えてもよい。浸透に取り組み続ければ、パーパスは100年後でも会社の案内星として輝き続けているに違いない。

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パーパス策定・浸透と周年を組み合わせたフローでエンゲージメントを向上させ続ける

※ 参考:いま求められるワーク・エンゲイジメント――ブランド研究の第一人者に聞く
https://consult.nikkeibp.co.jp/ccl/atcl/20210115_1/

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