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サバイバル分析社会の破壊的変化を成長のチャンスに(3)

破壊的変化の中で、事業承継のために何をすべきか

  • 聞き手=内野侑美/文=河村裕介
  • 2018年06月04日
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破壊的変化の中で、事業承継のために何をすべきか

これまでに見てきた「3つの破壊的変化」は、事業承継にも大きなインパクトを与えようとしている。今、事業承継のために既成概念を捨てて変革することが求められおり、周年事業は変革を始めるためのいい機会だと考えられている。その機会を活かすために何をすべきか、今回も引き続き、日経BP総合研究所副所長、社会インフラ ラボ所長の安達功に聞いた。

日経BP総研では、プロジェクトを進める旗振り役を担っていますと、安達所長。
日経BP総研では、プロジェクトを進める旗振り役を担っていますと、安達所長。

既成概念を捨て、自社の強みとビジネス環境を客観的に見極める

―自社の強みに立ち戻って変身に成功した例として、富士フイルムがよく例にあげられます。

安達:富士フイルムは、自社のコア技術を活かして、フイルムから医療品や高機能材料のメーカーへと変身を遂げました。富士フイルム副社長兼CTOの戸田雄三さんは2016年のインタビューで、重要なことは2つあると仰っていました。1つ目は、自社のコア技術の見極め。2つ目は、ビジネス環境の冷徹な把握。これらは既成概念を捨てるための前提となるものであり、なるほどと納得しました。

―コア技術の見極めやビジネス環境の把握は、社内にいては難しい面もあると思いますが。

安達:私たち日経BP総研は、強みや環境を客観的に見極めるための支援を行っています。私たちは、企業や行政への取材をもとに雑誌を出版していますから、常に取材内容などをもとに、技術のポテンシャルと競争力、業界内や他業界との競争力、あるいは世界に進出した場合の競争力を分析しています。また、ビジネス環境の冷徹な把握という面では、領域外の市場、例えば建設会社ならば、建設以外のマーケットにコア技術を提供した場合の新市場におけるポテンシャルや、そこでビジネススキームが作れるのかといった調査を行っています。こういったコア技術の棚卸しやビジネス環境の調査をもとに、企業や行政の新たな挑戦を支援すべく、情報提供や共創の場づくりを行っています。

新たなパートナーと変革を起こす

―自身の強みや置かれた環境を客観的に認識した後、何をすることで変革につなげられるのでしょうか。

安達:現在、新しいビジネスや産業はクロス領域からしか生まれていないことから考えると、パートナーとの出合いが必要になります。私たちは、共創パートナーとのマッチングや、新たに進出したい分野のキーマンとのリレーション作りも支援しています。例えば共創の場づくりとしては、「人と自然が共生し健やかに暮らせるまち」を取り組みの柱の一つにしている新潟県見附市から、「外部の知恵を活用したい」という依頼を受け、メディア人脈を活用して異業種のオピニオンリーダーが参加する「ディスカッション in 見附」を開催しました。また、CLT(杉板を互い違いに貼り合わせた軽くて丈夫な合板)の利用拡大を図っていた林野庁からの依頼で「木材活用研究会」を立ち上げ、不動産業界の方々と引き合わせてマーケットを創出するという取り組みも行っています。現在は、A産業とB産業をマッチングして、クロスインダストリー研究会を立ち上げ、どのような価値が生み出せるかを議論し、メディアプロモーションによって取り組みを加速させるプロジェクトが増えています。

周年はオープンイノベーションを始めるチャンス

―オープンイノベーションは、自然発生的には起こりにくいのでしょうか。

安達:実は、オープンイノベーションがうまくいかないという相談が多いのです。周年事業として研究所をつくった企業が多いのですが、オープンイノベーションを促進するには、ゴールを設定し、スケジュールを引き、コーチングをする外部のスタッフが必要なのです。そういった外圧として私たちを利用いただくケースも増えています。スケジュールの進捗管理を行い、必要に応じて外部から人を連れてくることで、うまくいくとは限らないですが、少なくともプロジェクトが進行するようになります。ヨーゼフ・シュンペーターによれば、イノベーションの定義とは「新結合」です。新しい結びつきは、違うものがなければ生まれません。また、オープンイノベーションは「宝探し」のようなもので、10に1つ当たれば成功といえますが、やらないぶんには当たりません。これからのオープンイノベーションは、いかに時間を短縮して、小さな実験を繰り返せるかが鍵になります。

オープンイノベーションはやらなければ、はじまらない。
オープンイノベーションはやらなければ、はじまらない。

―周年はオープンイノベーションを始めるいい機会なのでしょうか。

安達:外に向かってアピールするにも、内に向かってアピールするにも、周年はいい機会だと思います。外部環境が変化し、今までのやり方を続けていてビジネスがうまくいく可能性は著しく低下していますから、新しい取り組みを始めないと事業や企業を継続できる可能性も下がります。まず、自分たちの強みを外に向かって発信するだけでもいいのです。「うちは100年間こういうことをやっていて、こういう強みがある。しかし自分たちだけでは新しいことはできないし、今の延長線上に未来があるとも思っていません」という思いを発信すれば、「それならば、うちにはこういう技術があります」という提案があるかもしれません。周年事業は、既存の産業が殻を破って新たな挑戦を始めるためのとてもよいチャンスだと思います。

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  • 2018年06月04日
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