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創業年数70年で線引きされるコロナ禍への対応
- 文=池田梨子
- 2020年07月03日
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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、企業活動は大きく変化している。日経BPコンサルティングでは、ビジネスパーソンを対象に、業務への影響と課題、対応を尋ねる調査を実施した(※)。調査結果からは、この非常事態に対して、創業年数の長い企業がいち早く取り組みを進めている様子が見えてきた。
※「新型コロナウイルスによる業務への影響と、その対応に関する調査」
実施日:2020年4月21日~27日
対象:国内の企業・組織に所属するビジネスパーソン
母数:有効回答数1556件
創業年数70年以上の企業の8割が「テレワークの推奨、指示」
新型コロナウイルスの影響が拡大する状況への対策として、勤務先が実施していることを尋ねたところ、実施率が高い上位3項目は、「出張の自粛・禁止」「テレワークの推奨、指示」「消毒用アルコールの設置」となり、それぞれ70%を超えた(図1)。
これを勤務先の創業年数別に見ると、70年以上の企業は、70年未満の企業よりも、各対策の実施率が高かった。「出張の自粛・禁止」「テレワークの推奨・指示」の実施率はそれぞれ8割を超える。その他の多くの項目でも、70年以上の企業の方が、対策の実施率が高い傾向が見られた。
「紙文化」の100年企業。IT環境の整備が進む
新型コロナウイルスへの対策を行う中で、どのような課題が浮かび上がっているのだろうか。「テレワークの実施」における課題に絞って見ると、「社内コミュニケーションがとりづらい」が61.6%と最も高い(図2)。創業年数による顕著な差はなく、共通して課題を感じている状況がうかがえる。
一方、100年以上の企業では、社内コミュニケーションのとりづらさと並んで、「必要な書類のプリントアウトやスキャンができない」が60%を超えた。創業年数の長い企業は紙文化が根強く、テレワークでの業務遂行に支障が出ている面があるといえる。
しかし、調査結果からは、このような課題への対応が進み始めていることも見て取れる。新型コロナウイルスの感染拡大で生じた問題への対応として実施したことを尋ねたところ、全体では「ノートPCの貸与」「遠隔会議システムの導入」「安全な通信環境の導入」がトップスリーの項目となり、これら項目において70年以上の企業の実施率が高い(図3)。その他の項目を見ても、100年以上の企業では「eラーニングの導入」が5割を超えるなど、コロナ禍を契機にIT環境の整備、ITツールの導入が進んでいる可能性がある。
100年企業はコロナ収束後に向けた新サービス提供、サービス拡充の実施率が高い
では、新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後に向けて、今後企業はどのような取り組みを強化していくのだろうか。勤務先で現在行う取り組みとして、全体で最も高かったのは、「業務内容やフローの見直し」だった(図4)。創業年数にかかわらず、新たな働き方に対応した業務の見直しが求められているのが分かる。
また、社会情勢の変化をきっかけとした「新商品・サービスの提供や、既存商品・サービスの拡充・増産」を実施、または計画しているかについて、関連する業務を行う担当者に尋ねたところ、「既に実施している」が9.6%、「計画はある」が11.8%と、全体の2割が何らかの取り組みを行っていると回答した(図5)。創業年数別に見ると、100年以上では15.2%が既に実施していると回答し、年数の短い企業と比べて、いち早く取り組む傾向が見られた。
調査の結果、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け企業活動が変化するなかで、創業年数の長い企業の取り組みには、いくつかの特徴が見られた。
●テレワーク制度導入など70年以上の企業のほうが感染拡大の予防対策の実施率が高い。
●100年以上の企業は書類のプリントアウトやスキャンができないなど「紙文化」が業務の支障に。
●「紙文化」による支障を取り除くための、新しい働き方に対応したIT環境の整備も進みつつある。
●創業年数にかかわらず、業務内容やフローの見直しなどコロナ禍の収束後を見据えた対応が始まっている。
●100年以上の企業では、「新たな商品・サービスの提供や既存商品・サービスの拡充を実施または計画」されている割合が高い傾向が見られる。
創業年数が70年を超える企業は、第二次世界大戦前か直後に創業し、その後災害や経済情勢の変化など、さまざまな危機を乗り越えてきた企業といえるだろう。それらの企業が、今回の新型コロナウイルス感染拡大という状況において、積極的に対策を進めている様子がうかがえる。非常事態に対して柔軟に対応できる企業DNAが、企業が長く続くのに必要な要素の一つではないだろうか。
- 2020年07月03日
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