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企業研究持続可能な社会に対する企業の姿勢(2)

SDGsネイティブに判断材料を届ける企業の取り組み

  • 文=内野侑美
  • 2019年08月27日
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SDGsネイティブに判断材料を届ける企業の取り組み

地球温暖化や格差社会の進行は留まるところを知らない。6月に開かれたG20でも主要な議題の一つに廃プラスチック問題・温暖化対策が挙げられた。世界的に足並みをそろえ、課題に対応していかなければならない時代に求められる企業姿勢とは――。『日経ESG』編集長を務める田中太郎氏に聞いた。

日経ESG 編集長 田中太郎氏
日経ESG 編集長 田中太郎氏

リクルーティングにもESG、SDGsは必須

―SDGsに敏感な世代が増えてきましたか。

田中:1980年から2000年代初頭に生まれたミレニアル世代はいま国内の人口の約2割を占めています。これから20~40歳代を迎える人たちなので、消費の現場や職場の主役になる人たちです。モノがあふれ、サービスも充実した社会で育ってきた世代なので、モノよりも「コト」を重視する傾向が強いといわれています。世界経済フォーラム(グローバルかつ地域的な課題の解決をリーダーたちの連携で図る非営利団体)の調査によると、ミレニアル世代の半数が「気候変動」に関心を寄せています。幼い頃から地球温暖化の問題に触れ、「自分たちの未来はどうなるのだろうか」と自分ごとになっている、いわゆる「SDGsネイティブ」なのです。SDGsに対して感度の高い人たちが増えてきています。

―人手不足対策にもSDGsへの対応は一役買うとか。

田中:企業が人手不足に直面するなかで、人事としては優秀な人材を確保したいところです。SDGs感度の高いミレニアル世代は職場を選ぶ際、「この会社は世の中に役立つ会社なのか」という基準を持っている人が少なくありません。SDGsに対応できる企業は広い視野を持ち、変化の激しい社会で柔軟に対応していける企業だと判断する材料になっているのでしょう。

―実際にリクルートで成功している企業は?

田中:化石燃料を使わず、ミドリムシの屋外大量培養を基に、バイオ燃料の生産や健康食品、化粧品の開発を行うユーグレナは、良い事例でしょう。事業を通して世界の環境問題や食糧問題に多角的に取り組んでいます。出雲充社長は、「リクルートにはお金を使ったことがないくらい、お金をかけなくても優秀な若い人材が集まってくる」と話していました。起業から10年ちょっとの若い会社ですが、斬新なビジネスモデルと社会課題に対する姿勢がSDGsネイティブ世代に届いているのでしょう。

―中小企業でも自社の事業をSDGsと関連づけて説明し、採用活動に効果を上げている企業の例を多く聞きます。例えば、南米やアフリカで自動車リサイクルに取り組み廃棄物問題の解決に貢献しているリサイクル会社では、語学に堪能な若者が入社して即戦力として活躍しているそうです。

SDGsの取り組み姿勢を発信する方法

SDGsの取り組み姿勢を発信する方法

―発信方法の選択は、どのようにすべきでしょう。

田中:財務情報に加え経営戦略などの非財務情報を掲載する統合報告書や、環境問題や社会課題に対する取り組みをまとめたサスティナビリティレポートを発信する企業が多いです。投資家には統合報告書、消費者や取引先、NPO、地域住民、リクルートの学生にはサスティナビリティレポートと分けて制作する例もあります。多様なステークホルダー(利害関係者)に向けて、20年後、50年後といった将来の会社の姿を経営者が伝えることが重要です。日経ESGでは、必要な情報を的確に伝えるためには両方制作したほうがよいと推奨しています。

―経営者が自ら統合報告書の制作に関わるケースもあるそうです。

田中:丸井グループが2015年から発行している「共創経営レポート」の制作者には、青井浩社長の名前が記載されています。社長自身がメッセージを執筆するのはもちろん、編集・制作全般にわたって議論に参加しているそうです。顧客、取引先、社員、地域社会、株主などのステークホルダーと共に、新しい価値をつくり出そうとする「共創サステナビリティ経営」の考え方をていねいに紹介しています。情報開示に努める姿勢は、外部からの評価を高めます。例えば丸井グループは、世界最大規模の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する日本株のESG指数「FTSE Blossom Japan Index」「MSCI ジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」「MSCI 日本株女性活躍指数(WIN)」「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」の4つすべてに選定されています。

―今後のSDGsの取り組みの広がりは。

田中:全国各地の商工会議所や青年会議所でSDGs担当職を設けたり、プロジェクトチームを発足させたりするところが増えています。今までは大企業が主だっていましたが、中小企業もSDGsを無視できません。これから先、ESGやSDGsを語らない企業は、ステークホルダーから信頼が得られない時代。まずは自社の事業と経営ビジョンがSDGsに結び付くかを考える。周年はそういった気付きを得る機会としてもよいのではないでしょうか。

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