周年事業周年事業レポート(4)
“ロールモデル”を見つけよう!「社史フェア2018」レポート
- 文=平野優介
- 2018年08月20日
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社史の聖地・神奈川県立川崎図書館で、今年も「社史フェア2018」が開催された。2017年に寄贈された約200点の社史が司書の手作りの解説パネルとともに展示され、多くの人々でにぎわった。来場者の中には複数の社史を見比べながらメモを取る姿や熱心に議論する様子も見られた。「社史制作のヒントを見つけたい」と思う方にはぜひお勧めしたい図書館だ。
2018年は225点の社史を展示
「社史フェア」は、2014年から毎年開催され今回で5回目の開催となる。今年も「読ませる工夫」「見せる工夫」を凝らした社史・周年史が多かった。
例えば、千葉県市原市を拠点とする小湊鐵道グループの100周年史『100th THANKS』は、A4サイズ横で制作され、表紙と裏表紙がうまく使われている。本を広げると、鉄道事業とバス事業の創設期メンバーたちの写真が向かい合わせに並ぶ仕掛けだ。キャッチフレーズは、「100年の夢を見た。そして100年の夢を見る」。“郷土を拓く”、そんな意志が宿った1人ひとりの表情もよく分かり、見る人の胸を熱くさせる。
また、河合楽器製作所『響け、世界へ。河合楽器製作所90年の歩み』は、ストーリーを重視して、読みやすくまとめられていた。第1部では、社長の代ごとに歴史をまとめ、第2部ではブランド別の系譜や技術者の座談会、演奏者のコラムなどを収録。装丁なども読みやすさを高める工夫がなされている。例えば、本を開くと創業者、二代目、三代目がほぼ同じ構図で表れ、時代を超えて引き継がれる音楽への情熱を感じ取ることができ、自然に本編の内容に触れられる。
この他にも、歴史と遊び心を丁寧にまとめた『集英社 90年の歴史』や東日本大震災とその後を詳細に記録した『河北新報の百二十年』(宮城県を中心とした新聞社)、自動車部品製造大手アイシン精機の『アイシン50年史』など多種多様な周年史が展示されていた。
自社の“らしさ”を表現するアイデアの源泉に
周年事業の担当者は、社史・周年史制作において社内外を問わず、様々なステークホルダーと関わる。その際には、周年事業のコンセプトや企画に関する上層部への説明、誌面構成への合意など多くの承認を取りつける必要がある。
だが、人の数だけ意見はあるもの。なかなか形として固まっていかないことが、多くの担当者の悩みの種となる。
解決策の1つは、他社事例を心得てトレンドを理解し、自社の“らしさ”を表現するためのアイデアや誌面構成ためのロジックを蓄えておくことが大切だ。例えば、「同業他社の社史に参考になるものがあった」「業種は違うがこういう見せ方をしている企業がある」「こんな仕掛けが社史でできる」という前例を示せば、説得力も高まるはずだ。担当者自身としても、「こんな社史・周年史をつくりたい」という明確なイメージも固まるだろう。
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神奈川県立川崎図書館
1958年開館。当初から社史の収集を開始。現在では社史(経済団体史等を含む)、約1万8000冊を所蔵し、日本屈指の社史コレクションとして知られる。同館へのアクセスは、溝の口駅北口ターミナル9番乗り場から「KSP(かながわサイエンスパーク)行き」約5分が便利。
・バーチャル「社史室」
(参考URL)https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/vshashi/index.htm
・アクセス
(参考URL)https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/common/directions.htm
- 2018年08月20日
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