周年事業周年事業レポート(2)
いま人気の社史はこれだ!「社史フェア2017」レポート
- 文=原田かおり(日経BP社カスタム事業本部)
- 2017年11月06日
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社史の“聖地”・神奈川県立川崎図書館で、2014年から毎年開催されているのが「社史フェア」だ。通常は4階の社史室に業種別で並べられているが、この「社史フェア」では、直近1年間で収蔵された社史がテーブルにずらりと展示される。業種に関係なく、「最近は、どんな社史が作られているのだろう?」という疑問を持つ、社史編さん担当のビジネスパーソンにはうってつけの機会だ。
2017年6月、4回目となる今回は約250点を展示。口コミやインターネットで評判を呼び、期間中の4日間で226人もの来場者があった。
単なる「年表・資料」でない、社史・周年史が増える
様々な業種の社史を見て筆者が感心したのは、オリジナルの企画や変わった体裁によって、読ませる工夫や見せる工夫を凝らしたものが多いということ。
例えば、トランスコスモスの「トランスコスモス50年のあゆみ」では、社史を文章で綴りながら、参照資料となる縦長の図版入り年表を挟み込む体裁に。パッと目をひき、かつ理解を深めるための仕掛けがされている。
対象読者を限定した社史もある。ほとんどの企業では、制作した社史を自社社員のほか、取引先やお客様に配布する。しかし、日本フイルコンの「日本フイルコン100周年記念誌」(日本語版・英語版)は、自社社員とその家族だけを読者に想定している。
そのため、表紙や裏表紙、背表紙のどこにも会社名の記載がない。誌面には社員の写真を多数掲載。さらに家族の子どもたちにも親しんでほしいと、社史専用のキャラクターまでつくるなど、とことん「社員が見て、読んで楽しめること」にこだわった(その後、同社では、年表をベースにした「正史」を編さんしている)。
一方で、当時の世相もうかがい知れる多数の資料を発掘して編さんした社史が、日本ホテルの「東京ステーションホテルのあゆみ 東京駅とともに100年」だ。
「本のカタチ」にするメリットとは
こうして制作される社史は紙媒体だけではなく、電子媒体のものもゼロではない。「電子媒体だけで刊行されている社史は、当館にはほとんどありません。規格や機器が変わると、中を見られなくなるというデメリットがあります。その点、誰でも手に取ってすぐ見られる“本”は、社史に最も適しているのではないでしょうか」と、司書の高田高史さんは言う。
近年、DVDなどの電子媒体が付録になっている社史もあるが、「その数は、社史全体の1割程度にとどまっています」(高田さん)。あらゆる雑誌や書籍が電子化しつつある。その中にあって、「モノ」としての存在感と「いつでもどこでも見られる」手軽さがあり、「判型やカタチの工夫ができる」紙媒体の特性――。これこそが、社史にふさわしい形態なのかもしれない。
この「社史フェア」では、来場者による「気に入った社史」の投票を行っている。
(社史フェア2017コメントはこちら)
2017年度、約250冊中の1位は、前回の記事で紹介した「雪印乳業史 第7巻」。3位には、日経BPコンサルティングが企画制作を手がけた「エーデルワイス50周年記念誌」がエントリーした。
エーデルワイスの社史について、来場者からは、「表紙デザインがダントツでかっこいい」「社員さんの笑顔の写真が多かったのがポイントだと感じました」というコメントが寄せられた。
※ 神奈川県立川崎図書館は、2017年12月~2018年5月中旬まで、図書館移転作業のため休館となる(川崎市高津区のかながわサイエンスパークへ移転)。
プロフィール
原田かおり
日経BP社 カスタム事業本部 カスタム企画部
技術者向け転職情報誌編集に携わり、旧日経ホーム出版社へ入社。日経BP企画、日経BPコンサルティングを経て、2017年4月より現職。カスタム出版を数多く手掛ける。機内誌「RAPORA」(AIRDO)、ゴールドクレジットカード会員誌「クオリテ」(東急カード)、Webマガジン「大人の心得帳」(NTT東日本フレッツ光)、大手不動産会社会員誌など、企業機関誌のリニューアル創刊および編集長を多数経験。2017年、日経BP総研未来研究所の知見を活用した周年史「Aktio 50年史」(アクティオ)を企画制作。
- 2017年11月06日
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