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社史・周年史の担当者は川崎へ!1万8000点もの社史を手に取れる図書館

  • 文=原田かおり(日経BP社カスタム事業本部)
  • 2017年07月28日
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社史・周年史の担当者は川崎へ!1万8000点もの社史を手に取れる図書館

「いきなり、社史制作の担当になるなんて……。何から手をつければいいんだ?」。
周年事業の一環で社史や周年史を制作する企業では、こんな悩みを持つビジネスパーソンがいるかもしれない。

神奈川県立川崎図書館
川崎駅から徒歩15分の神奈川県立川崎図書館。約1万8000点の社史を収蔵する。ただし、2017年12月~2018年5月中旬は、図書館移転作業のため休館となる(川崎市高津区のかながわサイエンスパークへ移転)

こうした担当者にまず行ってほしい“聖地”が、神奈川県立川崎図書館だ。川崎駅から徒歩15分。4階にある「社史室」には、ありとあらゆる業種の社史が並んでいる。自社と同業種の社史も必ずあるはずだ。その数はなんと約1万8000点、日本有数の社史コレクションを誇る図書館といえる。

「1950年以前の社史など、書庫に保管しているものもありますが、それ以降の社史は、書架から直接手に取って見られます。複写も可能ですよ」と話すのは、同図書館司書の高田高史さんだ。

高田高史さん

高田高史さん
1969年生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。司書として神奈川県庁に入庁し、現在は神奈川県立川崎図書館に勤務。同図書館の社史コレクション広報・普及のため、企業の社史担当者が講演する「社史ができるまで講演会」や、直近1年に刊行された社史が一堂に見られる「社史フェア」を企画している。著書に『図書館で調べる』(ちくまプリマー新書)、『社史の図書館と司書の物語』(柏書房)など

新聞社の社史
例えば新聞社の社史だけでも何棚もある。これらの社史を読み込めば、レポートはもちろん、論文が書けるかもしれない

「社史は日本の文化といえます」と高田さんは語る。日本には長く存続している老舗企業や100年企業が多いため、欧米に比べて、社史の刊行数が多いそうだ。
神奈川県立川崎図書館が社史を収集し始めたのは1958年。近年、この圧倒的な社史コレクションが知られるようになった。社史編さんの担当になったビジネスパーソンや、就職活動中の学生が企業研究のために来館することが多いそうだ。

企業が社史を制作する第一の目的は、自社が歩んできた歴史を分かりやすく詳細に記し、後世の社員などに残すこと。書架に並ぶほとんどの社史がA4判の上製本(いわゆる書籍の形)、数十~数百ページに及ぶものだ。「社史を読むと、企業の経営や社風、企業がある地域の風土について知ることもできます。読んでいても楽しいですよね」と高田さん。

そして、読者に読んでもらえる社史、さらに読み応えがある社史には、ある共通のポイントがある。

「誰のため」「何のため」に作るかを明確に

例えば数ある社史の中で、筆者の目にとまったのが『雪印乳業史』。雪印乳業そのものの解体と再編がなされた今、すでに刊行が終わったと思いきや、昨年の2016年には、第7巻が刊行されている。

雪印乳業史
第6巻までは書架に並んでいる。2017年6月取材時、第7巻は2階で行われている「社史フェア」(次回で詳述)に出展中だった

2000年、近畿地方で発生した戦後最大の集団食中毒事件、そして雪印牛肉偽装事件(BSE問題)などの経緯も詳細に記される。自社の功績だけではなく、「負の遺産」も明らかにする。この社史は、後世のビジネスパーソンにとって、難局をどう乗り越えるかを学ぶ最適な資料といえるだろう。

一方で、「ユニークな装丁で面白い社史なのですが、書架には並べにくいので書庫に置いています」と高田さんが見せてくれたのが、『日清食品50年史』(2008年刊)。チキンラーメンを模した、思わず目を引く巨大な外袋入り。

日清食品50年史
外袋の裏側には「調味料:日清食品を支えた人々の汗と涙と努力の結晶 賞味期限:半永久的にお楽しみいただけます。使用方法:職場だけでなくご家庭へお持ち帰りになって、小さなお子様と一緒にお楽しみ下さい。」とある

中身は、麺のデコボコした質感を再現した箱入りの3分冊。『日清食品50年史 創造と革新の譜』『日清食品創業者 安藤百福伝』の2冊とDVD『映像でつづる日清食品の50年』だ。写真を多用し、見て楽しめる作りとなっている。

日清食品50年史DVDケース
DVDケースには仕掛け絵本のようなページも。社員が家へ持ち帰れば「お父さんの会社って面白いね!」と喜ぶ子どもの顔が目に見えるようだ

この『日清食品50年史』は、創業者・安藤百福の創業者精神と、チャレンジングな社風を自社社員や取引先に伝えるという目的を見事に果たした好例といえるだろう。

この社史編さんを中心になって進めた筒井之隆氏(日清食品ホールディングス株式会社 常勤顧問)は、2011年、横浜・みなとみらいのカップヌードルミュージアム(安藤百福発明記念館)の館長に就任した。体験型博物館として、来館者500万人を突破(2016年7月時点)する人気ぶりだ。

自社社員やOB・OG、取引先などへ配布する社史・周年史。その制作は、企業の「リブランディング」を果たす絶好のチャンスともなる。

次回は、近年のトレンドが分かる「社史フェア」の見どころをリポートする。

プロフィール

原田かおり

日経BP社 カスタム事業本部 カスタム企画部
技術者向け転職情報誌編集に携わり、旧日経ホーム出版社へ入社。日経BP企画、日経BPコンサルティングを経て、2017年4月より現職。カスタム出版を数多く手掛ける。機内誌「RAPORA」(AIRDO)、ゴールドクレジットカード会員誌「クオリテ」(東急カード)、Webマガジン「大人の心得帳」(NTT東日本フレッツ光)、大手不動産会社会員誌など、企業機関誌のリニューアル創刊および編集長を多数経験。2017年、日経BP総研未来研究所の知見を活用した周年史「Aktio 50年史」(アクティオ)を企画制作。

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  • 2017年07月28日
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