サバイバル分析社会の破壊的変化を成長のチャンスに(2)
破壊的変化の中で、暮らしやビジネスに何が起きるのか
- 聞き手=内野侑美/文=河村裕介
- 2018年05月07日
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人口動態のインパクト、デジタル革命、そしてエネルギー革命という「3つの破壊的変化」が現在の社会に大きな変化をもたらしていることが、前回では明らかになった。では、これらの破壊的変化は、私たちの暮らしやビジネスに、どのような影響を与えようとしているのか。今回も引き続き、日経BP総合研究所副所長、社会インフラ ラボ所長の安達功に聞いた。
人口減少、AI、働き方改革、キーワードから時代の変化を読み解く
―人口減少に伴い、地方都市が消滅の危機にさらされる一方、大都市に人口が集中するという予測があります。
安達:より便利な暮らしを求め、大都市に移住する高齢者が増えています。特に東京圏への人口の集中が進んでいます。2016年の日本の年間死亡人数は約130万人ですが、2030年頃には160万人が亡くなるようになります。一方、新生児の数は80万人に減りますから、生まれてくる人の約2倍の人が亡くなる時代がやってくることになります。いまでも首都圏では火葬の順番待ちが起きていますが、火葬場の新設は周辺住民による反対運動が起きることが多く、今後さらに火葬渋滞が加速するでしょう。こういった状況を受けて、「遺体ホテル」なども必要になります。今後は、生きている人よりも亡くなった人を相手にするサービスなど、今まで考えられなかった価値観からビジネスが生まれるかもしれません。
―AIなどのデジタル革命が社会に与える影響にはどのようなものがありますか。
安達:AIはデジタル革命を牽引していくでしょう。これまでは商業施設の運営には駐車場は必要不可欠なものでした。しかし、AIで自動運転が可能になれば、多くの駐車場を設ける必要はなくなります。自動運転の車は、人が乗っていない時には家に帰ってしまったり、カーシェアリングなどでは、Aさんが降りたらBさんのところへ行ったりするので、停車している時間が短くなります。そうすると、駐車場として使っていた場所をどうするか、そして自動運転に対応する駐車場とはどのようなものかについて考えなくてはならなくなります。自動運転が実現するのは、ものすごく先のことのように思われるかもしれませんが、前回お話ししたようにデジタル革命は予想をはるかに超える速度で進行しますから、東京オリンピックが開催される2020年には現実のものになる可能性もあるのです。
―エネルギー革命や働き方改革は、どのような変化をもたらしていますか。
安達:エネルギー革命は、持続可能な社会の実現に向けた大きなトレンドですが、自然エネルギーへの転換と同時に、オフィスビルや住宅などの不動産では省エネへのシフトも起きています。日本で普及しているCASBEE、米国のLEED、英国のEPC、これらは全て、建物の省エネ性能や健康性能を評価・格付けするためのシステムです。高い評価が得られれば、賃料や入居する人の意思決定に好ましい影響があるだけでなく、税制優遇も受けられるようになります。一方、低い評価しか得られない場合は、賃料も資産価値も下がり、課税対象となる場合もあります。前者を「グリーンプレミアム」、後者を「ブラウンディスカウント」と呼んでいます。
また、オフィスビルの良し悪しだけでなく、働き方改革によってオフィスビルそのものが余ってしまうことも考えられます。テレワークなどが拡大すれば、丸の内に巨艦オフィスがある必要はなくなるかもしれません。
座して待てばピンチ、攻めれば好機
―破壊的変化は、いろいろなものをなくしていくのですね。
安達:AI住宅やIoTオフィスなどでは、スマートフォンで照明を調節したり、センサーで人間のバイタルデータを収集してエアコンを調節したりといったことが可能になってきました。これによってスイッチがなくなり、スイッチを作っている人の仕事がなくなるという「スイッチレスショック」が起きます。AIによって、銀行員などホワイトカラーの仕事がなくなるという指摘もあります。駐車場レスショック、オフィスレスショック、スイッチレスショック、至るところで「××レスショック」が起きるでしょう。
私たちは、今までに経験してきたことの延長線で物事を考えがちですが、これからは冷静に事実を積み重ねて想像力を働かせ、スピード感を持って意思決定することが重要になります。破壊的変化のなかでは、座して待てばピンチ、攻めれば好機なのです。
第3回は、破壊的変化の中で、事業継承のために何をすべきかについて聞きます。
- 2018年05月07日
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連載「社会の破壊的変化を成長のチャンスに」
- (1)あなたの会社は大丈夫? 「3つの破壊的変化」
- (2)破壊的変化の中で、暮らしやビジネスに何が起きるのか
- (3)破壊的変化の中で、事業承継のために何をすべきか
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