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企業研究デジタルトランスフォーメーションは長寿企業のチャンスか(2)

自らが変革者にならなくては生き残れない

  • 聞き手=内野侑美/文=河村裕介
  • 2018年08月20日
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自らが変革者にならなくては生き残れない

指数関数的なデジタル技術の進化は、老舗企業にビジネスモデル変革の機会をもたらしている。これは同時に新たなプレイヤーの登場によって、業界が簡単に塗り替えられてしまう可能性を示唆している。自らが変革者となり、新たなプレイヤーの侵攻を許さないためには何が必要なのか、前回に引き続き日経BP総研 フェローの桔梗原富夫氏に聞いた。

自らが変革者にならなくては生き残れない

保険会社からの脱却にデジタル技術を活用するSOMPOホールディングス

――製造業以外の業界で老舗企業がデジタルトランスフォーメーションに取り組んで成果を上げている例はありますか。

桔梗原:金融業界は今、FinTechの波が押し寄せています。そうした中、SOMPOホールディングスは、前回紹介したブリヂストンと同様、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)を置いて、ビジネスモデルの変革に取り組んでいます。損害保険のビジネスモデルは長い間変化していませんでした。しかし、主力である自動車保険について見ると、自動車業界はCASEという変化の真っただ中にあります。CASEとは、コネクティビティ(つながる)の「C」、オートノマス(自動運転)の「A」、シェアード(共有)の「S」、そしてエレクトリック(電動)の「E」です。自動運転が普及すれば、今の自動車保険はなくなってしまうかもしれません。また、最新のデジタルテ技術を駆使した新サービスとともに保険業界に参入してくる新勢力の脅威もあります。そこで、SOMPOホールディングスでは、こういった新勢力の台頭をリスクとして捉える一方、デジタル技術の指数関数的進化はゲームチェンジの機会であると捉え、デジタル技術の進化を予測したうえで中期経営戦略を描いています。グループCEOの櫻田謙悟氏は「SOMPOって昔は保険会社だったらしいね、と言われるようになるのが理想」と話していますし、そのためにCDOとして外部から楢崎浩一氏を招聘しました。楢崎氏は、「グループ全体のデジタルトランスフォーメーションを成功させ、安心・安全・健康を提供する真のサービス産業の実現を目指す」と語っています。

日経ビジネスでSpecial Talkのインタビュアーとして参加していた桔梗原さん。
日経ビジネスでSpecial Talkのインタビュアーとして参加していた桔梗原さん。

――デジタル技術によって、どんなサービスが可能になるのでしょうか。

桔梗原:例えばSOMPOホールディングス傘下のセゾン自動車火災が提供する「おとなの自動車保険」では、万一の事故の際、「つながるボタン」を押せば「つながるアプリ」が起動して、すぐに事故受付担当者に相談できたり、事故現場にALSOK隊員の駆けつけを要請したりできるサービスをすでに展開しています。また、「つながるボタン」に内蔵されたセンサーが、急発進や急停止、急ハンドルなどを検知して「つながるアプリ」に表示することで、安全運転やエコドライブを促進するサービスも提供しています。人生100年時代に向けて、促進血圧や運動量などをチェックするウェアラブル・デバイスの普及が進んでいますが、これはウェアラブル・デバイスを車に搭載したというイメージです。今後は、安全な運転をする人の保険料を安くするといったサービスを展開するようになるかもしれません。SOMPOホールディングスではシリコンバレー、東京、テルアビブにラボを持っていますが、今後の自動運転を視野に入れ、スタートアップ企業になって新たなサービスを生み出すための取り組みも進めています。

参考:https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/18/aws_innovation_p3/

データが新たな価値を生み出す源泉に

――デジタル技術の進化によって、データの重要性も変化してきています。

桔梗原:デジタル技術の進化とともに、データをインフォメーション(情報)に、さらにインテリジェンス(知見)に変えていくことが可能になってきました。これにより、新たな価値を生み出す源泉としてのデータの重要性が高まってきたのです。プラットフォーマーと呼ばれているGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)は、膨大な個人データを持っていることがアドバンテージだと考えられています。また、年代や地域などによって異なりますが、個人の意識も変わり始めています。私たちが行った調査では、特に新興国においては「もし自分にとってそのサービスが良くなるのであれば、自分のデータを提出することに抵抗がない」と考える若者が増えているのです。その一方で、GDPR(EU一般データ保護規則)などによる個人情報保護に関する規制の強化も進んでいます。

――デジタル社会の脆弱性も課題となっています。

桔梗原:2015年にフイアット・クライスラーのJEEPがリコールされたことが、その一例としてあげられます。車載インフォテインメントシステムから侵入して、乗っ取ることができる可能性が指摘されたことから、ソフトウェアを更新するためにリコールが行われました。電気自動車のテスラなどは先を行っており、iPhoneなどと同じように自動的にソフトウェアがアップデータとされる仕組みになっています。このように脆弱性のフォローに向けた技術も進化していきます。いずれにせよ、覚悟を持って自らの変革をせず、ただ手をこまねいているとディスラプター(破壊者)の侵攻を許してしまい、プレイヤーが変わってしまう可能性は大きいのです。

2回に渡って、デジタル社会の変革について桔梗原さんに伺いました。プレイヤーチェンジの危機はすぐそこまで迫っているかもしれません。

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  • 2018年08月20日
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  1. (1)IoTでビジネスモデルを変える長寿企業
  2. (2)自らが変革者にならなくては生き残れない

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