周年事業の進化形―共感度測定&未来ワークショップ
周年を未来の新規事業開発につなげたダイワコーポレーション70周年
周年事業をやらなければいけないが、何から取り掛かればよいか。イベントはどうする? 周年史は作る? などとアウトプットから話が進みがちだ。物流サービス提供企業のダイワコーポレーションも、2019年の70周年事業の立ち上げにおいて同じ悩みを抱えていた。担当者同士でミーティングを開くも、何をしようかという議論に終始し、そこから先に進めなかった。同社は2021年、社長メッセージに対する従業員の共感度・浸透度調査を行い、従業員自らが未来を考えるワークショップを開催した。コロナ禍が落ち着いたらリアルのイベントも予定している。ダイワコーポレーションはどのように周年事業の最適解にたどり着いたのか。同社経営本部人事総務課の川原夏樹氏に話を聞いた。文=菅野和利
100年企業を目指し「未来」「挑戦」をコンセプトに
ダイワコーポレーションは2021年10月に70周年を迎えられます。周年事業が立ち上がったのは2019年とお聞きしました。当初はどのような悩みを抱えていたのでしょうか。
周年事業に関するミーティングを2カ月に1回ほど開催していましたが、何をしようかという議論に終始し、イベントや周年ビデオなどの具体的なアウトプットの相談で止まっていました。そのうち繁忙期になり、ミーティング自体がフェードアウトしていきました。
日経BPコンサルティング周年事業ラボ主催の周年事業セミナーを受講されたのはその頃ですね。
2020年に入り、周年事業をどう進めればよいか悩んでいた時にオンラインセミナーを受講しました。周年事業を何のために行うのか。コンセプトを明確にすべきという内容でした。すぐに日経BPコンサルティングに問い合わせをして、スポットでのコンサルティングをお願いしました。
周年事業ラボでは、社長ヒアリングとスポットコンサルティングを組み合わせたメニューでコンセプト設計を支援させていただきました。結果はいかがでしたか。
株式会社ダイワコーポレーション
経営本部 人事総務課
川原夏樹氏
「感謝」をテーマにすることは決まっていたのですが、加えて「未来」「挑戦」という明確なコンセプトを見いだせました。私が特に印象的だったのは、周年事業ラボのコンサルタントがインタビュアーとなった社長ヒアリングでした。社長の思いをうまく引き出していただき、とても深い話が聞けました。100年企業になるんだという社長の思いや、当社の強み、らしさを第三者として聞くという貴重な体験ができました。
また、スポットコンサルティングを受ける前は、周年事業メンバーのいろんな意見をどうまとめていけばいいのか、本当に悩んでいました。コンサルティングによって私たちメンバーの意見が集約されていったのも、お願いしてよかった点でした。
社長メッセージへのポジティブ、ネガティブ感情を計測
スポットコンサルティングの後、社長メッセージ共感度・浸透度調査での現状把握メニューと、未来を考えるワークショップでの未来づくりメニューを実施されました。これらの周年事業支援メニューを選ばれたのはなぜでしょうか。
社長メッセージ共感度・浸透度調査については、もともと従業員が社長のメッセージに対してどう感じているのか分からないという課題意識がありました。当社社長は普段からメッセージを頻繁に発しています。これはいい機会だと考え、調査をお願いしました。
社長メッセージのどの文章、どの単語にどんな感情を抱いたのかを測れる仕組みも面白く、デモをしていただいた時に、周年事業メンバーの反応がとてもよかったのも選択の決め手でした。
社長メッセージ共感度・浸透度調査では、一橋ICSと日立製作所が開発し日経BPコンサルティングがコンサルティング協力している「共感モニタリングサービス」を活用した
調査前はどういう結果が出るのか想像できませんでした。ふたを開けてみたら、皆さん忙しいはずなのに、思った以上に真剣に記入していただけました(回答率96%)。無記名かつ回答は個人にひもづけないと明言したので、社長への忖度なく、正直に答えていただけた印象です。ネガティブな感情を記入したケースでも、「できていないことに責任を感じる」というように、社長が常に言っている「圧倒的当事者意識」が表れていました。この結果には社長もとても喜んでいました。
社長メッセージの要素に対して、ポジティブ、ネガティブの傾向を一目で把握できた
社長や事務局がここに注目してほしいと考えた箇所と、実際の回答のギャップを抽出。今後取り組むべき施策のヒントにできた
ワクワクする未来施策をつくる
未来を考えるワークショップのほうはどのような点を評価したのでしょうか。
周年事業のコンセプトに「未来」「挑戦」が入りましたので、未来を考えるワークショップの実施はすっと決まりました。実は、私自身が中途入社で他の従業員と話をする機会がまだまだ少ない状況でした。従業員同士で話したり聞いたりする機会が重要だと普段から思っていたので、個人的にも楽しみなメニューでした。
効果的だと感じたのは、従業員から「ぐっときたエピソード」を募集し、そこから自社の強みを把握するワークショップの構成でした。従業員の皆さんが投稿してくれたエピソードは本当に素晴らしいものばかりで、アットホームな会社だと再認識しました。
ワークショップ当日は、自社の強みを認識した上で、SDGsの流れも踏まえて未来のダイワコーポレーションを考えていきました。皆さん今の業務で精いっぱいなイメージがありましたが、突拍子もないアイデアも出てきて、やはりコミュニケーションの中からアイデアが生まれるのが分かったのも成果の一つでした。ワークショップに参加した新入社員から「貴重な機会ですごくよかった」と言ってもらえたり、中途入社の方が他の営業所の方とコミュニケーションを取ったりしているのを見て、とてもうれしく思いました。
未来を考えるワークショップで出たアイデアを継続的にブラッシュアップさせて、未来思考につなげているそうですね。
未来を考えるワークショップのチームでそのままアイデアを膨らませてもらい、その後、追加のワークショップを2回実施しました。2021年6月に社長への発表会を実施したのですが、チームごとに特色が出てとても面白い発表でした。その中の2チームが記念式典で「30年後ダイワコーポレーションが勝ち残る施策」を発表する予定です。コンセプトは「未来」「100年企業」です。従業員がワクワクする施策をつくってもらっています。
周年事業を通じて、従業員エンゲージメントがとても高い状況が見えてきました。より一層エンゲージメントを向上させるために、今後、何を心掛けていきますか。
やはりコミュニケーションが大事だと考えています。コミュニケーションが取れるようになった営業所もある一方、コロナ禍でコミュニケーション不足も生じています。10月に予定していた記念式典は延期しましたが、リアルで集まる機会は新たなアイデアが浮かぶチャンスなので、今後も大切にしたいと考えています。
周年事業を実施してみて分かったのは、会社を大事にしている従業員が多いからこそ70年も当社が続いているということです。このダイワコーポレーションの良さを従業員に伝えつつ、継承してくれる新たな社員も採用して、会社を盛り上げていきたいと思います。
株式会社ダイワコーポレーション
東京湾岸エリアを中心に27拠点倉庫を構える物流・倉庫会社。顧客商品を倉庫にて保管・管理する「倉庫管理業」と倉庫を空間的スペースで捉える「物流不動産業」、ビル賃貸業が主な事業。近年は物流不動産業に注力しており、2014年以降毎年1棟以上のペースで拠点を開設している。
設立: 1951年10月
本社: 東京都品川区南大井六丁目17番14号
事業内容: 普通倉庫業、倉庫施設等の賃貸業、ビル賃貸業など
従業員数: 229人(契約社員、パート含む)