西光エンジニアリング(株)

独自の乾燥技術と企業連携・共創でイノベーションを生み出し続ける

企業紹介

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1987年(昭和62年)創業の西光エンジニアリング株式会社は、製造工場を持たないファブレス経営を特徴とした研究開発型企業だ。ニッチな用途向けの専用機の設計・開発が事業の柱で、中でも食品加工機械を多く手掛け、とくに大手飲料メーカーにおいて大きなシェアを有する穀類焙煎設備など、独自技術が盛り込まれた乾燥設備の開発が主軸となっている。

同社は創業時からファブレス経営を続けている。それは、代表取締役の岡村邦康氏が前職の製茶機械メーカー勤務時代に設計・開発者として抱いた「心ゆくまで開発をしたい」という志を実現するためだという。

当時、岡村氏は茶葉の乾燥に携わっていたこともあり、同社では乾燥技術の追求が一つの大きなテーマとなっている。

食品乾燥の多くは温風を使うが、温かい風を当てて乾かすとフルーツなどは品質が変化してしまう。一方、その対極にあるフリーズドライ(真空凍結乾燥法)は冷却・加熱に大きなエネルギーを消費し、長時間乾燥が必須であるうえ、設備のイニシャルコスト・ランニングコストも高価になる。

長年の試行錯誤の末、食品を変質させず、コストを抑え、かつエネルギー消費も減らす画期的な方法としてたどり着いたのが、マイクロ波を活用し常温下で乾燥する「マイクロ波減圧乾燥技術」だ。

マイクロ波減圧乾燥技術により、成分・風味を損なわずに乾燥させることができる

マイクロ波減圧乾燥技術により、成分・風味を損なわずに乾燥させることができる

乾燥室内を減圧していくと沸点が下がり、水分が自然に蒸発する。同技術では沸点を40〜60度とし、減圧を維持して水分蒸発に必要なカロリーのみを供給することで、速やかに蒸発させる。これにより、低温かつ高速で消費エネルギーを抑えた乾燥が可能になるわけだ。

「マイクロ波を使ったこの方法なら、温風乾燥と異なり、ビタミンなど有用な栄養分はほぼ失われず、酵素・酵母・乳酸菌なども活性した状態で乾燥できる。また、フリーズドライと比べてはるかに高速に、しかも低コストの設備で乾燥できる点が大きなメリット」と岡村氏は語る。

この技術を実現する工夫の一つとしては、乾燥室(減圧容器)の形状が挙げられる。「真空に耐える強度を維持するには円筒形が理想で、フリーズドライや真空乾燥機では一般的に円筒形を用いるが、これがコストを高くする要因の一つ。その点、当社の技術で使う乾燥室は完全な真空状態にならないので、四角い形状でも十分な強度を得られるのではないかと考えた。最初の挑戦は、この長方形の乾燥室を作ることだった」(岡村氏)

マイクロ波減圧乾燥機1段型

マイクロ波減圧乾燥機1段型

四角い形状であれば内部のスペースを有効活用できるため、使用上のメリットが大きい。長方形の容器で強度を維持するのは難しかったが、同社では強度を維持しつつ、ワンタッチで開閉できる扉を設けることで作業性も両立させた。「私たちはフリーズドライではなく、一般的な乾燥が出発点なので、そうした柔軟なアイデアも出たのだと思う」と岡村氏は振り返る。

一方、乾燥を高速に行うことで、乾燥ムラも起こりやすくなる。これについては、乾燥室内の電磁波解析と温度分布シミュレーションのソフトを制作し、乾燥面のすべてで均質な温度上昇を起こす方法を考案した。

西光エンジニアリング株式会社 代表取締役 岡村邦康氏

西光エンジニアリング株式会社
代表取締役 岡村 邦康氏

「マイクロ波は目に見えないため、大学の先生に聞いても『やってみなければわからない』と言われた。しかし中小企業の機動力を活かし、北海道・旭川の連携企業と協力して量産化や大型化に成功できた」(岡村氏)

“画期的”“独自”という点に着目すると、同社は近年、セルロースナノファイバー(CNF)の濃縮においても、乾燥技術を応用した技術開発に取り組んでいる。

CNFは環境負荷の低い夢の素材。樹脂などとの混合により、強くて軽い材料を作ることができ、今後は幅広い分野での応用が期待されている。

パルプ等の原料からCNFを製造する工程では薬品処理(化学的処理)もしくは機械的処理を行うが、製造工程の制約もあって、一般的に2%程度の濃度で製造、販売されている。実質的なCNFの容量に対し数十倍の水を含んでいるわけで、これが包装や保管、輸送等においてコストが高くなる原因となっている。脱水剤等の薬剤により水を取り除いた濃縮物も市販されているが、輸送コストは下がるものの製造コストが高くなり、かつ用途も限られてしまう。

静岡県は、実はCNFの先進県だ。同社は、県から「乾燥技術でこのコスト高を解決できるのでは」という提案を受け、開発に取り組むことを決めた。CNFは水分を保持する性質が強いため、凝集を防ぎつつ、均一に水分を取り除くためには、従来の熱風による乾燥方法だと難しかった。同社では、独自の乾燥技術の特長である加熱の偏りが少ないことを活かして、濃縮過程でCNFが持つ特性の劣化を抑える加工方法を実現し、薬剤無添加で低コストな濃縮技術を完成させた。

また、実際にCNF濃縮物を自社製品に使用するメーカーの多くは、自社の材料として最適な濃度になるように、購入した濃縮物に水を加えて濃度を調整していることがわかった。同社の乾燥機はリアルタイムで乾燥室内の重量を計ることができるため、濃縮物を指定の濃度に作り上げることができる。そこで同社はCNFを使用するメーカーが使い易いように、濃度が2%の液体を5、10、15、20%とさまざまな指定に応じて濃縮し、それぞれの液体を薄めずそのまま使う用途があるのではないか、というアプローチを取った。

コア技術:マイクロ波減圧乾燥機の原理

「2020年には大手から委託加工をしてほしいとの依頼が増えた。中小企業で手を出すのは無理だといわれたが、狙ったところは間違いではなかった」と岡村氏は手応えを感じている。

こうした技術により開発された同社の製品は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも寄与するものだといえる。いずれの製品も最新技術によるイノベーションであるのはもちろんのこと、マイクロ波減圧乾燥技術は温風乾燥のように熱い空気を大気中に出さず、フリーズドライと比べてエネルギー消費もはるかに少ない。

同社は設立当時からマイクロビジネス型の地域企業として、“連携”を企業活動のベースに置いている。地域経済の活性化、技術革新、地球環境への負荷低減などに寄与するため、企業組合型小規模小企業集団の中心企業として数々の企業と連携し、共創活動を進めてきた。その例としては、沖縄県宮古島市の海ブドウ生産者や静岡県水産技術研究所などと新たな商品の海洋深層水を活用した流通方法の創出、北海道恵庭市で凍結保存した調理用トマトのドライトマト加工による新たな価値創出、地元・静岡県藤枝市で茶農家・茶問屋・製茶機械製造企業・飲料会社と連携した藤枝茶の商品開発などが挙げられる。

こうした流れの中、2020年4月には「地域の企業や農林水産業者と連携・共創し、地域の持続的発展に貢献する」とSDGs宣言を行った。「当社は創業当時からWIN-WINの関係を大切にし、なおかつ企業が長続きすることを重視して積極的に連携を進め、現在は沖縄から北海道まで全国にネットワークができている」と岡村氏は話す。

持続可能性を目指すという部分では、BCP(事業継続計画)に力を入れている点も同社の大きな特徴だ。藤枝市に本社を置く同社だが、2003年、沖縄県那覇市に営業所を構えた。

「沖縄に営業所を開設したきっかけは1995年の阪神淡路大震災だった」と岡村氏。地震といえば静岡県も他人事ではない。「当社の製品はすべて特許を取得しており、ブラックボックスの部分が多い。阪神淡路後も各地で大きな地震が頻発したため、“万一”の際に保守保全・メンテナンスサービスをストップせず提供できるように、地震の影響を受けにくい場所として沖縄に拠点を求めた。顧客からBCPへの要望が多く出たのも理由だった」(岡村氏)

こうした経緯を受け、同社は2013年にBCPを策定し、沖縄営業所が西日本を担当することとした。一方、東日本については前出とは別の旭川の企業と緊急時のメンテナンス実施に関する契約を結んでいる。

代替場所を那覇市と旭川市に求めた戦略的BCP

同社では今後、海外との連携も視野に入れている。すでにミャンマーの企業と連携するため、動きを始めたところだ。夢の素材であるCNFに加え、排ガスの無害化や水素ガスを電気に変える触媒の製造装置で自動車部品メーカーとの連携が進むなど、未来に向けて描く夢も一つひとつ着実に実現している。

「開発を続けるモチベーションは、夢、ロマン。それがすべて。世界の明るい未来に向けて、これからも研究開発のペースを緩めずにいきたい」と岡村氏は語った。

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