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NBPC マーケティング通信バックナンバー 2007年12月号
今月のコラム

来場者55万人を擁する “コミックマーケット” 研究 サブカルチャーの聖地はマーケティング情報の宝庫だった 「ガンダム」は今や女性のモノ? シニア・コンサルタント三田政志

世界でも類を見ないほどの巨大な同人誌即売会「コミックマーケット」(※1)は通称コミケまたはコミケットという。その歴史は古く、1975年の第一回開催から数えて30余年を迎えた。コミケに集う年齢層も、第1世代であるシニア予備軍から“アキバ系”に代表される10代、20代の若年ファンまで、男女を問わず幅広い。その先駆的な位置づけと圧倒されんばかりの高揚感からファンに“聖地”と称されるコミケだが、来場者の多くは、アニメや漫画、ゲームなどエンタテインメントやサブカルチャーに造詣の深いプロシューマ(※2)としての顔を持ち、マーケティングの観点からも軽視できない。

日経BPコンサルティングでは、こうしたコミケの特徴に注目。コミケの現状とエンタテインメント界の明日の姿をWebで問い、調査報告書「“コミックマーケット”研究」(12月7日発行※3)にまとめた。

卒業しない永遠の学園祭

コミケに魅了されたファンは30年間で増えに増え、2007年8月17日〜19日に開催された「コミックマーケット72(コミケ72、数えて72回目の開催となる)」は3万5000の同人誌サークルや同好会が参加、開催期間の3日間で延べ55万人のファンが来場した。動く金額も大きく、日経BPコンサルティングの推定では、主催者が発行する参加サークルのカタログだけで約2億6400万円 (※4)を売り上げ、さらに各サークルの出展料、個人や同好会が発行する1冊1000円前後の同人誌の合計販売額も加えると、夏開催と冬開催の年間2回、それぞれ億円単位の金額が動く巨大イベントに成長したと言い換えることができる。このコミケの一挙一動が、同人誌の制作を請け負う印刷会社などの国内サブカルチャー産業に与える影響は少なくない。

日経BPコンサルティングではコミケ72の来場状況を開催終了後にWebで調査、コミケの魅力を自由意見として募った。「商業誌にない自由な発想」、「自己表現」といった同人誌文化を象徴するキーワードと並び、「祭り」、「同窓会」、「交流の場」といった、単なるイベントの枠を超えたコミュニティとしての魅力を語るファンが多い。アンケート調査に先だって実施した、複数の有識者による会場の観察調査において、観察者全員が共有したのは、まさに“永遠の学園祭”という一大コミュニティの印象だった。

こうした老若男女を巻き込んだ(図1)コミケの歴史が、多種多様な趣味嗜好が混然となる独特の文化を作り出した。今やコミケで販売されるのは、“オタク”の代名詞であり流行語にもなった「萌え」に関連する創作物ばかりでなく、ビーズ細工や彫金などの手作りアクセサリーから自分のペットを撮影した写真集、果てはミリタリー・ルックやゴシック・ファッションのドレスまで、漫画・アニメ・ゲームの枠を超えた国産サブカルチャーが、会場を埋め尽くしていることに改めて驚かされる。この混沌とした多様性こそが、国内のエンタテインメントやサブカルチャーにおいて、コミケがマーケティング情報の宝庫となる原動力である。

意外にも30代女性が「恋愛ゲーム」にハマる

こうしたコミケの多様性を把握するために、来場者の行動パターンを調査した。コミケでは参加サークルのジャンル別に出展スペースが指定されており、しかもそのジャンルが日々入れ替わるため、来場者に直接いつ・どこに立ち寄ったかを聞くことが、コミケ市場のアウトラインを描く上での第一歩である。

図2は回答者が足を運んだホールにおいて最も好きなジャンルを示した図表だが、男性・女性、年齢の違いによって様々な嗜好が入り乱れていることが分かる。一例を挙げると、「企業ブース」に反応しているのは主に10代、20代の男性で、女性は全くと言ってよいほど関心を示していない。

こうしたデータの中には、エンタテインメントに関する世間一般の常識を覆す結果も得られている。一つは、機動戦士ガンダム・シリーズを愛する女性の台頭。好きなジャンルとして真っ先に「ガンダム」選んだ女性は5.2%と男性の回答を上回り、「ファンクラブ(青年)」(青年向け週刊コミック誌に掲載されている作品に関する同好会)と並び、女性が選ぶ好きなジャンルの1位に選ばれた。ガンダム・シリーズの最新作「機動戦士ガンダム00」では女性に人気のコミック作家「高河ゆん」をキャラクター原案に配するなど女性を意識したコンテンツ制作に着手しており、“SFメカ作品=男性”といった単純な発想は過去の構図になりつつある。

ただし「ガンダム」が幅広い年代の女性に支持されるのに対し、30代女性には「ゲーム(恋愛)」の支持層が多いなど、年齢や世代の違いにより、女性の好みも広がりを見せている。恋愛ゲームに関しては、1994年にコナミ(現在のコナミデジタルエンタテインメント)が発売した男性向けの恋愛ゲーム「ときめきメモリアル(ときメモ)」のヒットから市場の拡大が始まったが、2002年に女性向けの「ときめきメモリアルGirl's Side」が発売されるなど、市場構造が大きく変化したことをコミケ調査の結果は裏付けている。

“コミックマーケット”研究」には、こうした多重クロス分析に加えて、ヒットを予感させるエンタテインメント作品、エンタテインメント界への提言など具体的な作品名や作家名を交えた数千に及ぶ自由記述を収録した。前出の恋愛ゲームに関する魅力を語って貰った設問でも、30代女性から「『遙かなる時空の中で』(コーエー)や『金色のコルダ』(同)シリーズが盛り上がっていた。他にはQuinRoseの『ハートの国のアリス』の人気が急上昇」、「『ときメモ』。なんていうか、青春がよみがえる」といったコメントが寄せられた。

コミケの問題点に関する自由意見も募っており、過激な性描写や一部来場者のマナーの悪さ、さらには日本エンタテインメントの衰退論などコミケやエンタテインメント界が抱える負の側面を嘆くファンの姿が浮かび上がった。

もう一つの顔は、Web2.0のヘビー・ユーザー

今回の“コミケ”調査で得られたもう一つの傾向として、コミケ・ファンには余暇をブログ運営やSNSに熱中することで過ごす人が多く(図3)、自ら参加するコミュニティの情報共有に、Web2.0の考え方を実行している可能性が強いことが分かった。創作したデジタルコミックやFlashアニメなどデジタル・コンテンツを送受信するインフラとしてブロードバンドが普及した影響も大きそうだ。

コミケ参加者には元来、「出展者も一般来場者も対等であり、『お客様』は存在しない」とする基本理念がある。情報の発信者と受け手がネットを通じてコミュニティに参加する、Web2.0の発想を受け入れ易いプロシューマとしての素養が備わっている。近年のコミケでは、ここに参加者のプロフェッショナル化といった要素が加わる。今では漫画家やゲーム・クリエイターなど商用作家のコミケ参加は当たり前であり、ゲーム会社や出版社がコミケで新人を発掘するケースも増加している。コミケ出身の新人は再びコミケに凱旋することが多く、生産者(プロデューサ)と消費者(コンシューマ)との距離はさらに接近する。Web2.0という情報共有ツールとコミケ参加者のプロフェッショナル化の動きを受けて、コミケ参加者のプロシューマ度は一層増したと言えるだろう。

(三田政志=ビジネス・コンサルティング部 シニア・コンサルタント)


※お詫びと訂正(12月19日)
12月4日に掲載した本コラムに間違いがあり、お詫びして訂正します。 (現在は訂正済みの記事を公開しています)。
誤<コミックマーケット白書>
正<“コミックマーケット”研究>
誤<日経BPコンサルティングの推定では、主催者が発行する参加サークルのカタログだけで約8億円 (※2)を売り上げ>
正<日経BPコンサルティングの推定では、主催者が発行する参加サークルのカタログだけで2億6400万円 (※4)を売り上げ>
誤<コミックマーケット主催である「コミックマーケット準備委員会」>
正<コミックマーケット主催である「コミックマーケット準備会」>


※1 「コミックマーケット」「コミケット」「コミケ」は、「有限会社コミケット」の登録商標です。
※2 プロシューマ:生産者(プロデューサ)と消費者(コンシューマ)を合成した造語であり、商品知識が専門家並みに豊富な消費者の意味を表す。
※3 「“コミックマーケット”研究」は日経BPコンサルティングが独自に企画・編集した調査報告書であり、「コミックマーケット」の運営母体である「コミックマーケット準備会」及び「有限会社コミケット」は当報告書の発行には関与しておりません。
※4 「有限会社コミケット」の公表によると、公式カタログの価格は当日・直販価格1部2000円、書店価格2400円 発行部数は11万部である。
(注意書きも一部訂正し、追加しました)


写真1●コミケ72において購入した同人誌を会場通路で読みふける来場者と、コミケ72で販売された記念アイテム「聖地の珈琲」

写真1●コミケ72において購入した同人誌を会場通路で読みふける来場者とコミケ72で販売された記念アイテム「聖地の珈琲」


図1●コミケ来場者の内訳

図1●コミケ来場者の内訳

図2●足を運んだホールで見たうち、最も好きなジャンル(表中の黄色い網掛け部分)

※表中のジャンルはいずれも、コミックマーケット主催である「コミックマーケット準備会」の公表に基づく。
図2●足を運んだホールで見たうち、最も好きなジャンル(表中の黄色い網掛け部分)

図2●足を運んだホールで見たうち、最も好きなジャンル(表中の黄色い網掛け部分)

図3●「コミックマーケット調査」回答者における余暇の過ごし方(Web2.0関連)

図3●「コミックマーケット調査」回答者における余暇の過ごし方(Web2.0関連)
図3●「コミックマーケット調査」回答者における余暇の過ごし方(Web2.0関連)

*「“コミックマーケット”調査」の調査概要

http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/comike2007/index.html

●調査目的

「コミックマーケット」とエンタテインメント/サブカルチャーに対する一般消費者の意識を調査し、国内市場の可能性を探る。

●調査方法

WEBアンケート調査

●調査期間

2007年10月

●調査対象

関東の1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に在住する18歳〜49歳の男女

●回収数

10532人(コミケ来場者353人、コミケ過去来場者1000人、コミケ非来場者9179人)

●報告書の形態

CO-ROM(以下のコンテンツを収録) pdf版の分析レポート A4(約1000ページ) コミケ来場経験者 1353人のクロス分析 コミケ来場経験者 1353人の自由記述
※「特別版」ではコミケ非来場者9179を含む 10532人のローデータ(自由記述込み)を提供

●発行日

2007年12月7日

●価格

【通常版】  価格52,500円(税込)  【1万人ローデータ付特別版】 価格262,500円(税込)

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