日中ブランド想起調査レポート
中国調査(電機・IT編)では、「聯想(Lenovo/レノボ)」が企業名想起率トップ
「企業名」と「主力製品カテゴリ」をつなげて表記し、知名度アップを狙う
-「日中ブランド想起調査2010」調査結果報告書より-
日経BPコンサルティングは、2010年8月、9月に実施した「日中ブランド想起調査2010」の結果をまとめ、10月15日に報告書を発行・発売する。この報告書は、弊社が毎年実施している日本最大のブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン 2011」の予備調査の結果と共に、これまで弊社が培ったブランド調査ノウハウを活かし、今年初めて実施した「ブランド・チャイナ2010」の予備調査の結果をまとめたものである。
日本と中国、それぞれの消費者が現在“記憶”しているブランドの顕在化を目的に、中国ではこの8月に北京、上海の2地域で、日本では9月に全国規模で調査を行った。
「ブランド想起調査」では、“評価する”、または“好感を持っている”ブランド名を思いついたままに記入する形式をとっている。ある条件や場面が示された時に、過去の経験などから、そのブランドの記憶を呼び覚ますことができるかどうかや、好意を抱かれているかを明らかにする、ブランドの“再生”調査である。「衣」、「食」、「住」、「電機・IT」、「流通・運輸」など11分野について、日本の調査では5ブランドまで、また中国の調査(北京と上海で実施)では、中国内資系企業3ブランド、外資系企業(日系、韓国系、欧米系など)3ブランド、合計6ブランドまで挙げてもらった。本報告書では、ブランド想起率をランキング化している。
ここでは、中国での調査結果の中から「電機・IT編」の結果を取り上げる。
■「聯想(Lenovo/レノボ)」が想起率1位
電機・IT編の想起率トップは、42.6%を獲得した中国のパソコンメーカー「聯想(Lenovo/レノボ)」であった(表1)。「聯想(Lenovo)」は、1984年に設立され、本社を北京市に構える中国の民営企業である。1994年、設立してわずか10年後に香港株式市場での上場を果たした。さらに2005年、IBMのPC事業を買収し、世界有数のPCメーカーに成長した。2010年9月末時点での時価総額は5000億円に達している。中国国内では、ノートPCとデスクトップPC以外に、「楽フォン」という製品名の携帯電話も製造・販売している。若者や都市部のホワイトカラーを中心に、高い人気を博している。続く第2位は日本を代表する総合電機メーカー「索尼(Sony/ソニー)」で想起率37.8%、第3位はグローバルで活躍する家電メーカーの「海尓(Haier/ハイアール)」で35.7%となった。
■通信会社では、「中国移動(ChinaMobile)」が6位に
通信会社の結果をみると、中国の巨大通信グループ3社がいずれも高い想起率を獲得した。順位の上から「中国移動(ChinaMobile)」が6位、「中国電信(ChinaTelecom)」が10位、「中国聯通(ChinaUnicom)」が19位となった。中国では、以前から「中国電信」という国営企業が国の通信事業を独占していた。2000年になって、携帯電話の普及に伴い、移動体通信事業と固定通信事業が分離され、移動体通信は「中国移動」となった。さらに2002年、北部10の省・市の固定通信事業が「中国網通」に吸収された。中国網通はのちほど「中国聯通」に併合し、2008年から、中国の通信事業は「中国移動」「中国電信」「中国聯通」の3つのメガ通信グループに集約された。
現在、採用している通信規格こそ異なるが、3社とも第三世代携帯電話(3G)の事業免許を取得しており、中国全土に事業展開をしている。想起調査の結果では、携帯電話のユーザ数を一番多く有している「中国移動」の順位が一番高く、ユーザのモバイルへの注目が窺える。また、「中国電信」に関しては、中国北部にある北京での想起率が、南部にある上海でのそれに対して、約半分となっており、通信事業の集約と再編成の経緯がそのまま結果に反映されたようだ。
その他、デジタルカメラを製造・販売している「愛国者(aigo)」が12位、オーディオプレイヤーを製造・販売している「歩歩高(backgammon)」が27位、中国のシマンテックと呼ばれるセキュリティソフトの「瑞星(rising)」が35位など、 数多くの中国ブランドがランキングに名を連ねた。
■トップ10に日系企業が3社ランクイン
日系企業では、「ソニー」が2位、「キヤノン」が7位、「パナソニック」が8位と上位に入った。ソニーはデジタルカメラのテレビCMで、手ぶれ補正機能を全面に出すことによって、他メーカーの製品との違いを強調し、中国人ユーザに強い印象を残すことに成功している。キヤノンは競合相手の少ないプリンタの製造販売分野で、他メーカーを大きく引き離し、高いシェアを獲得していることが背景にあると考えられる。パナソニックは斬新なデザインと高い品質を武器に、昔から「松下」というブランド名で浸透しており、中国での人気が高い。
上記以外の日系企業も、例えばニコン、シャープ、東芝、日立なども上位40以内にランクインし、高い想起率を獲得している。高い技術力と信頼度を誇る日本製品は多くの中国人ファンを魅了しているようだ。
■「企業と製品をリンクさせる」家電メーカーのコミュニケーション戦略
さて、企業のブランド戦略として代表的なものに「企業メッセージの策定と発信」がある。自社のあるべき姿をひと言で表現した企業メッセージの発信は、企業のコンセプトや理念を社内外に伝え、企業名を浸透させる上で大きな効果が期待できるものであり、今やブランドコミュニケーションの1つとして定着している。日本では、キヤノンの「make it possible with Canon」やパナソニックの「Panasonic ideas for life」などがあり、認知度や、企業イメージの向上を図っている。
中国でも事情は同じで、企業メッセージを活用している企業が少なくない。企業名を主力製品のカテゴリとセットにした形のメッセージを発信している広告をよく見かける。今回、中国の家電メーカー8社が揃って上位40位に入ったが、そのうち、突出した主力製品を持つ家電メーカーは、その主力製品カテゴリと企業名を合わせて露出している。
例えば、28位の「創維(Skyworth)」はテレビ専門メーカーで、31位の「格力(Gree)」はエアコン専門メーカーである。創維の場合は、「創維彩電」(彩電はカラーテレビ)を企業メッセージとして発信(表2)。会社名を聞けば製品を想起させ、製品を見れば会社名を想起させる狙いがある。そのコミュニケーション戦略が功を奏してか、中国におけるテレビの市場占有率は、他の家電大手を抑えて、「創維(Skyworth)」が2009年まで7年連続で1位となった。「格力(Gree)」は「格力空調」(空調はエアコン)を企業メッセージとして発信している。
他にも、3位に入った「海尓(Haier)」の「海尓氷箱」(氷箱は冷蔵庫)や、22位の「海信(Hisense)」が使用している「海信手機」(手機は携帯電話)も、企業名と製品カテゴリをあわせてアピールするという手法をブランド戦略に取り入れている。
中国での想起調査は、今回初めて実施したものだが、今後も定点調査として続けていきたい。経年で結果を見ることで、そのブランドが、単なる流行に終わったものなのか、人々に愛されながら長期的に記憶されているものなのかを判断することができる。今回の想起調査結果をもとに、日中におけるブランド評価調査「ブランド・ジャパン 2011」と「ブランド・チャイナ 2010」を実施する。
(銭 愛麗=調査・開発部 次長 ブランド・チャイナ担当)
表1●ブランド想起率ランキングTOP20 (日中ブランド想起調査 2010 <電機・IT編(中国)>結果より)
▼「あなたが評価している、または好感を持っている企業名、製品・サービス名をご記入ください」という設問に対し、中国内資系企業3ブランド、外資系企業(日系、韓国系、欧米系など)3ブランド、合計6ブランドを非助成で記入いただいたものを集計し、「想起率ランキング」としてまとめたもの
【電機・IT】(家電、AV機器、カメラ、PCハード、PCソフト、セキュリティ対策ソフト、電話、携帯電話、通信、プロバイダなど)

表2●中国における主な家電メーカーと企業メッセージ

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